マンションの一室をシェアして、2家族が暮らす団結アパート(だったっけ?)が舞台だ。2LDKの部屋に老婦人と、若いカップルが同居生活する。彼らはもちろん他人同士である。夫婦はなんとかして、老婦人をここから追い出したい。
中国の現代女流作家、沈虹光による台本を劇団息吹が舞台化する。作品自体は94年のものなのだが、今の中国の現実がとてもよく出ている。高齢化と住宅難。都心部の大きな弊害だ。設定自体は . . . 本文を読む
台本(山本正典)と演出(泉寛介)の間にある齟齬が、この作品への違和感となる。2時間という上演時間は、コトリ会議としては、長い。だが、baghdad cafe'としては、短い。山本さんが自分で、演出したなら、ちゃんといつも通りの1時間45分の芝居になるのだろう。それを、泉さんがいつものように丁寧に作ったから、この時間になった。予想通りの展開である。
感覚的に、あっさりとしたタッチで作る山本さん . . . 本文を読む
『めぞん一刻』を思わせるオンボロアパートに集う人たちの人間模様を描く。管理人さんとオーナーの青年を中心にして、ここで生活する男女はみんな同じ大学の卒業生だ。ここはもともとは大学の寮だった。でも、入居者が減ってしまって、いつのまにか、卒業生がそのまま居座ることになった。彼らにとってここは実に居心地がいい。ずっと学生のままのノリでここで生活する。彼らはまるで家族のように共同生活を送る。
いつまで . . . 本文を読む
事件発生から数時間での対応であり、臨機応変にベストを尽くし、誠実な対応をすることで、みんなの不安を取り除き、現状のなかでの最善を可能とする。そういう判断力って、ものすごく大事なのではないか。この小説は学校現場での出来事を描いているが、そこにとどまらない。あらゆる局面で、人が人であるために何が必要なのかを教えてくれる。
読みながら何度も涙ぐんでしまった。もともと涙もろいのだが、この小説は格別だ . . . 本文を読む
こういうTVドラマレベルの安上がりの映画(当然フイルム撮りもしていない)なのに、こんなにも素敵な作品に仕上がっている。これは思わぬ拾いものだ。パッケージングも安直で、どこをどうとったってただの安っぽい映画である。だが、作り手はこのB級感覚をとても大事にしている。この映画は、プログラム・ピクチャーであることで初めて可能となるスケールの「いい話」を、ちゃんと提示するのだ。そこには、ある種の志の高ささ . . . 本文を読む
けっこう大騒ぎされた映画だ。すごくおもしろいとか、あっと驚く展開だ、とか、なんだか凄い映画のように煽る人がたくさんいたから、眉唾とは思いつつも、ドキドキしながら見た。
これはそんなふうに世界のかたすみで大評判になったゾンビ映画である。
まぁ、それって、こういうB級映画の思わぬ拾いものにはよくあるパターンのリアクションなのだ。過剰反応である。だから、あまり気にもせずに見た。だいたいゾンビ映 . . . 本文を読む
ようやくこの3年前の芥川賞受賞作を読めた。先日彼女の新作『発光地帯』を読みながら、そう言えば、彼女の『乳と卵』を読んでないよな、と再確認し、ブームも去った今なら、すぐに貸し出し可能だろうと思い、借りてきた。相変わらずの川上節で、これはこれで読みやすいし、おもしろかった。
東京で一人暮らしをする女のところに姉とその娘がやってくる。姉は豊胸手術をするために東京までやってきたのだ。彼女がなぜそこま . . . 本文を読む
オリジナルの方もとてもいい映画だったが(そりゃそうだろう、それでなくてはリメイクしない)これは完全にあの作品を超えている。本作は、原作となったスザンネ・ビア監督によるデンマーク映画『ある愛の風景』のようなミステリ仕立てにはせず、この家族に起きた出来事を順を追って真正面からしっかりと見せていく。
この映画は、人間がどんなふうにして壊れていくか、それを丁寧に、掬い取っていくのだ。とてつもない衝撃 . . . 本文を読む
2月の『大阪マクベス』、4月の『新世界BALLAD』と、気合いの入った大作を連打した太陽族の岩崎正裕さんによる今年3本目となるこの新作は、なんとも気の抜けた小品だ。でも、悪くはない。全2作とは全くタッチが変わって、少人数によるコメディー作品である。普段の岩崎さんなら、とても手掛けないようなタイプの芝居なのだが、当然彼は器用にこういう作品もこなしてくれる。
主人公は、とある女子プロレス団体で、 . . . 本文を読む
つまらない芝居ではない。だけど、なんだかひとりよがりで、見終えた瞬間に忘れてしまいそうな芝居だ。現に3日前に見たところなのに、もうどんな話だったのか、うまく思い出せない。
なんだか不思議な感触の残る芝居で、悪くはないのは確かなのだ。お話自体にもインパクトがないわけではない。ここに描かれる人間関係も興味深い。まずこれは、兄と弟の話だ。そこに兄の家族(妻と息子)が絡んでくる。彼らが醸し出すドラマ . . . 本文を読む