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映画・演劇のレビュー

コトバクリ『メエメと鳴くのは動物だからそうさ』

2011-06-07 22:25:19 | 演劇
台本(山本正典)と演出(泉寛介)の間にある齟齬が、この作品への違和感となる。2時間という上演時間は、コトリ会議としては、長い。だが、baghdad cafe'としては、短い。山本さんが自分で、演出したなら、ちゃんといつも通りの1時間45分の芝居になるのだろう。それを、泉さんがいつものように丁寧に作ったから、この時間になった。予想通りの展開である。

感覚的に、あっさりとしたタッチで作る山本さんの世界を、理詰めで、しっかりと作ろうとする泉さんによる演出が迎え撃ち、両劇団の役者たちが、演じる。お互いの個性は相殺され、しっくりこない居心地の悪さだけが露呈する。とは言いながら、これが失敗作だ、なんて言うつもりはない。今、関西の演劇シーンで一番注目される彼らのコラボがつまらないものなるはずがないではないか。

別々の個性がぶつかりあい、今まで見たことがないような世界を作り上げる。こんなにもドキドキさせられることはない。しかも、2人は妥協することなく、自分たちのやりかたを最後まで貫く。まぁ、彼らには歩み寄りはない。それは頑固だから、ではない。だって、彼らは不器用なんだから。合同公演の弊害は今まで山盛り見てきた。優秀な劇団同士でも必ずといっていいくらいに失敗する。しかし、彼らは少なくとも失敗はしていない。上手くいっていないだけのことなのだ。でも、この微妙な差は大きい。彼らは折り合いをつけて、無難にまとめたりはしない。しっかり、自分を貫く。その結果、戸惑っている。それはそれでいいことだと思う。自分たちに何が出来るのかをきちんと見極める生真面目さが素晴らしい。

この作品はありきたりの恋愛劇ではない。でも、この会話劇は、分類すると、恋愛ものとなるのだろう。へんな話である。料理を盛る食器についてのモニターとして雇われた7人の男女。簡単で報酬もいいバイトなのでここにやってきた。何日か泊まり込んで、1日3食の食事を摂る、ただそれだけである。残りの時間は何をしていてもいい。ただ、この空間から、勝手に出ることは出来ない。一応監禁状態である。下の階にあるコンビニには行ってもいい。だが、食べ物は購入できない。ビルの18階にあるこの施設の中で、何をするでもなく、ぼんやりしている。いくつかの制約はあるが、基本的には自由である。こんな楽なバイトはないだろう。だが、なんだか、息苦しい。

このなんともよくわからない状況、そこから何かを描くのではない。ここには特別なドラマはない。ただ、そこで生じる彼らのやりとりが描かれるだけだ。こんなご大層な設定はいらない、と思うくらいにさりげない話である。要は設定より、人間関係の方にポイントが置かれていて、テーマを突き詰めることはない。それが一応恋愛劇なのだ。

これは何かの象徴か、とも思う。彼らはブロイラーで、ここで飼育されている、とか。でも、必ずしもそうではない。ただ、この数日間が過ぎたなら、解放される。相互の関係性のドラマはそれ以上の大きなドラマを生まない。ただのスケッチに見える。答えを求める芝居ではない。状況の中で、生じる淡い関係性だけだ。そこに生まれる恋愛感情のようなものさえ、軽く流してしまう勢いである。


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