当然普通なら見ないタイプの芝居だけど、制作の鉾木さんから案内をいただいたので、見に行くことにした。たくさんの若い女の子たちが舞台上で弾ける。元気でいい。シアターOMの狭い舞台に17人の女の子たち(校長先生を演じた、たむらめぐみさんも含む)が立ちエネルギッシュに駆け回る。客席は40ほどだからとんでもない密度だ。コロナ禍には不可能だった公演だろう。ほとんどが初舞台になる彼女たちが全力で頑張る。その姿を . . . 本文を読む
なんとなく以前読んだ気がするけど、あまり記憶はない。瀧羽麻子だし、文庫で出版されたけど、新刊として単行本で出た時にたぶん読んでいるはず。まぁいいかぁ、と思って読み進める。三分の一くらいまで来て確信した。だから調べたらやはり読んでいた。少しショック。最近こんなことが多いから、基本新刊本しか読まないのだけど、文庫化した場合知らない本の気がして、ついつい手にしてしまう。タイトルが変わったり、再編集したり . . . 本文を読む
こんな中国映画があるのだ。ほとんどが町の風景を描いた静止画。もちろんお話は、ある。だけどお話を見せたいわけではない。荒涼とした町の風景がストーリーよりも際立つ。ある男が犯罪組織のボスから奪い取った100万元を巡る一夜の物語だ。さまざまな人たちが入れ代わり立ち代わり現れてそのお金を奪い合う姿を描くアクションなのに、こんなにも静か。うらぶれた中国南部のどこかの町の建物の光景ばかりが捉えられる。海を延々 . . . 本文を読む
『105度』では椅子作り、今回は靴作り。いずれも職人を目指す中学生を主人公にしている。
そして謎のこのタイトルは『靴ノ往来堂』のことで、昔からあるお店の看板が右から左に書かれてあるから、左から読むとこうなる。しかも1段ではなく3段に分かれているからややこしい。これはとても落ち着いたタッチの小説で特別なお話の展開はない。普通にあり得そうな話をさらりとしたタッチで綴っていく。中学2年生の女の子が主人 . . . 本文を読む
水丸さんが亡くなってもうすぐ10年になるのか、と感慨に耽る。(まだ9年だけど)この新刊は晩年に書かれたエッセイにイラスト、俳句をセットにしたもの。睦月から始まり師走まで。12章からなる。東京のさまざまな場所を歩いて描いた(書いた)。思い出を共にして。特別な場所ではなく、なんでもない街角散歩。
娘が東京で暮らしてから、毎年何度か行くようになって、結構さまざまな場所を歩いているから、 . . . 本文を読む
前田哲監督も怒濤の快進撃中。『すべては海に流れる』(あんなに素敵な映画なのに、興行的には失敗したし、それだけでなく、わけのわからない輩が酷評しているし)に続く新作が公開された。今度はコメディ時代劇だ。浅田次郎原作で、今話題の『らんまん』神木隆之介が主演している。実はあまり期待してなかったのだが、これがまさかの傑作で、途中から何度も涙が出てしまった。笑って泣けて感動する、そんな凄い映画なのだ。主人公 . . . 本文を読む
11の短編からなる。最初の作品『海』がその全体像を伝える。一艘の小舟でこの世界が終わった後の世界をたったひとり旅する者(本の表紙の絵には熊がそこには描かれている)は生命が絶えた静かな海を渡り、やがて陸に出る。廃墟の街。生き物の姿はない。彼は図書館に行き着く。たった1冊の母国語で書かれた本を手にする。読み終えた後、再び海に戻り、持ち帰ったある限りの本を海に流す、沈める。不思議だけど納得する行為だ。も . . . 本文を読む
421ページに及ぶ長編だ。しかも重松清なのに、ちょっとしたSF的な設定になっている。人の心が見えるふたりの高校生の話。相手の背中に手を置くと見える。走馬灯に残る人生で一番大事だった記憶。祖父母を亡くしてたったひとりになった16歳。3歳の時、母に捨てられて祖父母に育てられた遥香と、同級生の幼馴染ナンユウ。人生の最期を看取る旅をコーディネートするなんだか怪しいブレーメンツァーズの誘いを受け入れて、ある . . . 本文を読む
2018年の山田尚子監督作品。最新作『平家物語』には圧倒されたが、『けいおん』も『聲の形』も実は彼女の仕事だ。微妙な心の綾を描かせたらピカイチの、今一番信頼出来るアニメ監督のひとりである。そんな彼女の現在一番最新の映画であるこの作品を公開から5年にしてようやく見た。京都アニメーション制作のテレビアニメ『響け!ユーフォニアム』のスピンオフ劇場版だが、これはそんな枠に収まるような小さな作品ではない。
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中島京子のエッセイ集だ。コロナ禍を背景にしている。なんだか懐かしい気分。つい最近までは大騒ぎしていたことが、もう思い出になっている。しかも、今またまたコロナが増えてきているにも関わらず、である。ここに描かれるコロナ禍の様子は近過去で、笑い話もあるが、あの頃毎日が恐怖だったのは忘れもしない事実だ。当時リアルタイムで書かれた彼女のエッセイは、その恐怖ではなく、臨場感を伴ってそんな日々の日常がしっかり描 . . . 本文を読む
こういう地味な映画がちゃんと劇場公開されるのは凄いことだ。ただあまりにそういう映画の公開本数が多すぎて、見る映画を選ぶのは大変だ。さすがに配信は諦めるけど、劇場はできたら見れるものは見たい。これはマリヤム・トゥザニ監督作品。モロッコ映画。モロッコ首都ラバトの対岸、古都サレ旧市街。伝統衣装カフタンの仕立て屋夫婦のところに若い職人がやってくるところから始まる。彼ら3人の愛の物語。この静かな映画は最初か . . . 本文を読む
今回も暗い。2023年本屋大賞受賞作。ようやく読むことが出来た。愛媛県の小さな島。17歳の高校生の男女が出会う。キラキラ青春映画のような設定で始まる。都会(京都だけど)からやってきた少年と島で生まれた少女。お互いに誰にも言えない孤独を抱えて生きてきた。家族が崩壊しているから、居場所はない。こんなところから出ていきたい。だけど、無理。少年は夢を実現するために東京に行く。少女は現実を受け止めるしかない . . . 本文を読む
今読んでいる小説が島を舞台にした恋愛小説だから、というわけじゃないけど呼応するようにこれも島を舞台にした映画だ。まぁ、たまたまだけど。ここに至って清水崇監督のホラー映画がまた量産されている。この先も新作ラッシュだ。ただそこに内容は伴っているのか、不安はある。これは「村シリーズ」に続く「島シリーズ」の第1作ということらしい。(ヒットしたら今回もシリーズ化するはずだが、大丈夫かな?)見る前からあまり期 . . . 本文を読む
太宰治が戦時中に執筆した短編『待つ』へのオマージュ。(昔、授業でしたことがある。高校の教科書にも取り上げられた作品)久保田浩書き下ろし新作だ。そして、五十音シリーズのなんと第9作である。(凄い! ここまでくると本気で50音する気が伝わる)10年前に亡くなった祖母(魔瑠)の家にやってきた孫たち。今では住む人もなく荒れ果てた家。生前の祖母は最期までダムの下に沈んでしまった村でたったひとり暮らしていた。 . . . 本文を読む
高校の図書館を舞台にして、司書と出入りの書店員が、高校生たちと繰り広げる物語と知り、これは絶対読みたいと思った。しかも作者は大崎梢だ。大丈夫。と、思った。なのに、読み始めて躓く。ミステリー仕立ては仕方ないけど、(『小説推理』に連載された)あまりにお話がチャチでリアリティがない。ガッカリした。途中で辞めようと思ったが、我慢して最後まで読んだ。
それは正解だった。やめなくてよかった。3話目からようや . . . 本文を読む