「峰定寺」(京都 花背大悲山)


 美山荘の敷地の奥に「峰定寺」(ぶじょうじ)の入口となる鉄でできた門があります。宿の敷地を通らないと行けない寺なんて不思議なロケーションだなあと思っていたところ、帰京してから知ったのですが、そもそも美山荘は「峰定寺」参拝者の宿坊として始まったようです。それを3代目が昭和12年に現在のような料理旅館にしたんだそうです。それで納得しました。

 美山荘周辺は散歩に適しているとはいえないので、2日目の朝は散歩も兼ねてこのお寺をお参りしました。美山荘のスタッフから参拝するのであれば奥の家に奥さんがいるので必ず声をかけて参拝料を払ってからお願いしますと少し怖い顔で念を押されました。

 門から入ると、渓流が流れる敷地内に黄色い花が咲いていて本当にのどかです。昔の田舎はどこもこんな感じだったよなあと実際はそんなところに住んだこともないのに何か懐かしいような感じがしました。

 しばらくすると大きな白木の参拝門(というのでしょうか/写真)が現れます。昔の黒澤明の映画にでも出てきそうな雰囲気です。京都市内で手の込んだ装いを施された壮麗な門をいくつも見た後では、このむき出しの木のままの門は新鮮に感じます。ここから400段か500段、山道を登ったところに本殿があるんだそうです。
 脇の民家に管理する住職の奥さん(?)がいて、寺の歴史と登り方について説明を受けます。もともとは修行のために開かれたお寺なんだそうです。「六根清浄」(ろっこんしょうじょう)と唱えながら、登って心身を清める。六根とは、眼・耳・鼻・舌・身・意の働きのことで、身も心も無垢清浄になろうという祈りの言葉が「六根清浄」なんだそうです。首から掛ける鈴付きの袋と杖を借り、500円払ってから出発です。

 とても雰囲気のある山道です。我々が歩く音、山の音、チリンチリンと鳴る鈴の音しか聞こえません。以前、松尾芭蕉の「閑さや岩にしみ入蝉の声」で有名な東北の天童市近郊にある「山寺」を登ったことがありますがとても山や山道の雰囲気が似ています。

 そして、本殿が現れます。山の傾斜に作られた清水寺のような構造なのですが、これまた白木だけで作られており、全く装飾がなされていません。カメラを持ち込めないので写真はお見せできませんがストイックで神秘的な雰囲気のある本殿です。境内の周りの回廊を歩くことが出来るのですが、眺めも絶景です。

 存在を知らなくて行く予定のなかった峰定寺ですが、とても印象に残るお寺でした。今回の京都旅行のなかで最もよかった寺と言っても過言ではありません。厳格な修行場としての雰囲気を期待していた比叡山延暦寺が普通の観光寺(実態は違うかもしれませんが)で期待外れだったので尚更です。本当に心が洗われるようでした。
 美山荘に行く機会がなければ訪問しにくいロケーションですが、是非行っていただきたいお寺です。

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