大好きなクラシック音楽、本、美味しいお店、旅行などの記録です。
休日はソファの上でリラックス!
「美山荘」(京都 花背大悲山)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/6d/0f364092ecc6de9c66c225e96eb241c9.jpg)
京都の「美山荘」のことは随分前から有名なグルメサイトである「さとなおcom」で数少ない10点満点中10点の料理の宿ということで知っていていつか行きたいと思っていました。最近では、弟さんの店である銀閣寺参道にある和食処「草喰なかひがし」(残念ながらいつも予約が取れず未体験)共々、京料理の真髄をアラン・デュカスなどのフランス料理界の大物に紹介する様子を雑誌、テレビなどで見ていました。
今回、妻が万博に行きたいと言い出したとき、すぐに「美山荘」と組み合わせた旅行にしようと決めました。「美山荘」はとても高いですが、妻の出産を控えているこの時期しかもう行く機会はないと思ったからです。
念願かなった「美山荘」は想像以上に素晴らしい宿、食事でした。盛りだくさんなので宿全般、夕食編、朝食編と3回に分けてご紹介します。
今回の旅行は仕事の合間を縫って金曜日から月曜日までの3泊4日と決めてから予約を始めました。美山荘には1ヵ月半前頃に電話をしたと思うのですが、金曜日と土曜日は満杯でしたが、幸いにも日曜日は離れの部屋が空いているというので予約しました。後で知ったのですが宿泊は1日4組までなんだそうです。週末は混んでいます。料金は、夕食の量(?)の違いだと思うのですが4万円、4万5千円、5万円とあり、迷いましたが中をとって4万5千円でお願いしました。
大原の寂光院に着くと「6月2日まで休観」の看板が立っていたので本日の寺院巡りは終わりにして宿に向かうことにしました。美山荘にこれから向かう旨電話すると、近道の山道はとても険しいのでそちらは避けて、鞍馬を経由されたほうがよいとのアドバイスをいただきました。
鞍馬寺近辺はとても混雑していますが、その先は山道に入ります。「美山荘まで21km」という青い看板があり、その後は分岐にこの看板が出てくるのでナビがないとしても辿り着くことはできると思います。道は結構狭いですが、京都バスが通っているくらいですから、譲り合えばなんとか通り抜けることは出来ます。それでも4~5回はバックしたでしょうか。冷や冷やしながらの運転です。ようやく最後の登りに入る道を右折してあと2km。山奥深くへ入り込んでいく感じです。
鞍馬から40分間くらいでしょうか。ようやく到着し、宿の敷地内の駐車スペースに駐車するとスタッフの若い女性が走り寄って出迎えてくれます。駐車していただいて有難うございますと言うので何のことかと思いましたが、宿の入口前まで(といっても10メートル先ですが)運転して、後はスタッフに任せてキーも預けるシステムのようです。
美山荘は門から入って、左が母屋(宿泊1室)と厨房・食事処の棟、右が渓流沿いの離れ(宿泊3室)とお風呂になっています。
我々は離れでしたので、直接、部屋に通されます。もともと少ないですが他のお客さんに会うこともほとんどありません。
テレビもスリッパもない宿です。離れの中は綺麗に掃除されていて気持ちがいいです。そして、部屋の外に何と言うのでしょうか木でできた広い「ベランダ」のスペースがあり、その先に渓流と山の景色が広がります。窓を開けると渓流の音に部屋は包まれます。かなり大きな音で聞こえますが勿論うるさい音ではありません。癒されます。テレビの音もないので部屋にいる間は渓流の音しか聞こえません。この宿は料理のことばかり書かれているので、こういう部屋だとは全く知りませんでした。携帯電話は山奥で圏外となり繋がりませんが、トイレはウォシュレットで快適です。とてもいい部屋です。
離れに入ってから、車から荷物を運んでくれた若いスタッフに代わって部屋付きの女性スタッフになります。20代後半でしょうか、とても感じがよくキビキビ動く女性です。ここのスタッフは女将から全員、モンペ・はかまを着用していて純和風の雰囲気です。
まず、お茶と蓬の和菓子が出され、その後にお抹茶が出されます。そして、館内の案内と食事の説明などがあります。17:00頃でしたが、折角なのでまず周りを散歩してから、お風呂、18:30からの夕食にしてもらいました。散歩に出ましたが、周りは大自然ですが、歩き回れる範囲はそんなに広くなく、暫くして宿に戻りました。部屋からの渓流の眺めのほうがよいかなという感じです。ここはお風呂が共有なので、順番に入っているようです。これがこの宿の数少ない欠点でしょうか。我々がまず散歩をしたいというと女性スタッフは承知しましたと言っていましたが、本音は先にお風呂に入ってほしそうでした。京都には温泉はない(?)のでお湯は天然の温泉ではありません。源泉を持ってきて沸かしているとのことでした。お風呂からも窓の外に渓流と山の緑が眺められます。我々が入った大きなお風呂の方は蛇口が5ヵ所ありますが、隣の小さなお風呂は蛇口が1ヵ所です。それでも夕食前の時間に到着が重なるとこちらも使っているようです。外泊するときくらい広いお風呂に入りたいか、部屋付きのお風呂でゆっくりと入りたいかの好みは人それぞれだと思いますが、ここのお風呂は、他のお客さんが入浴していると入れないので若干問題ありかなと思います。風呂上りに氷で冷やされた杏酒が出されます。サービスは至れり尽くせりです。
その後の摘草料理の夕食はとても素晴らしいものでしたが、食事については次回以降にご紹介します。テレビがないので食事の後は、雑誌でも読みながらウトウトして眠るだけです。
翌朝、近くを散歩していると若い男性スタッフがお客さんの車をタオルを使って丁寧に洗車していました。残念ながら我々の車はレンタカーだったので関係なかったのですがそれでもとても気分のいいサービスです。
因みに、朝のお風呂は小さいほうにお湯が張ってありますが、大きいほうのお風呂のお湯は抜いてありました。
朝食後、美山荘奥の峰定寺に参拝しました。この峰定寺もとても素晴らしかったので別途ご紹介します。宿に戻るとコーヒーが出されます。精算を済ませてから宿を後にしました。
基本料金4万5千円にお酒代、サービス料15%に税金でトータル11万1千円でした。まあ高いですが、満足度も高いです。
なお、今回は部屋付きの女性に心付けを3千円渡しました。これについてはご意見あると思いますが、値段も高いしまあいいかという感じでした。以前、広島の宮島にある有名な料理宿Sで、心付けを渡さなかった(用意していたが仲居さんが複数いてどの人に渡せばいいか分からなかった)ために、とても嫌な思いをしたことがあります。それも気になっていたので必要経費だと割り切りました(それでも高級旅館評論家(?)の柏木壽氏の本によると3万円以上の宿なら5千円が相場らしいですが…)。
ところが、出発間際に、若女将から昨日は係のものが過分なお心付けをいただき申し訳ありませんと、そのお返しにお土産で売っている自家製の「蕗のとうみそ」の小瓶を一ついただきました。こちらとしては、女性スタッフに個人的に渡したつもりだったのですが、報告しているようです。心付けを貰うことを当然と思わない、貰うから丁寧なサービスをしているのではないという宿の心意気を示しているのだと思います。こういう対応がファンを多くしていくんでしょうね。
スタッフの感じのよさ、部屋の居心地のよさは最高水準ですが、宿だけではお風呂の問題、値段が高いこともあり、もう一度訪れたいという気持ちにはならないかもしれません。しかし、ここは何と言っても料理がメインです。これまで宿泊した宿の中で最も満足度の高い宿となりました。安くてもとてもいい宿はいくつかあり、それは自分にとっての宝物のようなものです。それでも「美山荘」の食事の魅力は値段の高さはあっても他の宿からずば抜けています。機会があれば是非再訪したいです。因みに、年内の土曜日は予約で満杯なんだそうです。
最後のお見送りで初めて、写真でよく見ていた女将の中東和子さんを見ました。母屋のお客さんに付いているのか、最近は若女将に運営の大半を任せているのでしょうか。
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千ひろ(京都 祇園)
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話題のグルメ本「美食の王様」でオールジャンル総合6位とされている京都の祇園にある割烹「千ひろ」。同じく祇園にある「千花」という有名割烹の先代主人の次男が2001年に開いた店だそうです。
コースは1万2千円、1万5千円、1万8千円の3種類。予約時に電話で聞くと量ではなく質の違いだということだったので奮発して一番高い1万8千円のコースをお願いしました。
祇園の花見小路から脇道に入り、さらにそこから細い路地に入ったところに店はあります。我々は一周してやっと場所が分かりました。清潔感があり凛とした佇まいです。
少し緊張して入口を開けると、すぐ前のカウンターの中にご主人が立っており、にこやかに歯切れのいい声で迎えてくれます。カウンターは8席。左隣に座っていた女性2人組は雑誌社か何か芸能関係に近い仕事をしているようで、ご主人と「この前、カンクロウが・・・」というような話しをしていました。一方で右隣は結構崩した服装の若い3人組で、そんなに畏まる雰囲気ではありません。
頂いた料理は、記憶が定かでないので順番・内容違い、和食に関する語彙不足から曖昧な表現ですが次のとおりです。
・「キウイ風味のタレがかかったそら豆、ホタテ」
和食でもフルーツを合わせるのが流行りなのでしょうか。口始めとしての爽やかな風味とそら豆とホタテの食感が楽しいです。
・「山菜が中に入ったジュレ状の食べ物の上にウニを載せたもの」
長崎の五島列島で取れたウニ。もう少しすると熊本の天草産のものが入ってくるがそちらのほうがもっとコクがあるんだそうです。
・「お造り(トロ、鯛、鯛の皮など) 細切りの塩昆布添え」
目の前でかなり質のいいマグロの塊から中トロにあたる部分でしょうか、端を切り捨て、吟味して切り分けてくれます。こういうのは視覚付だと楽しいし食欲が刺激されます。それに鯛に、鯛の皮を湯引きしたものでしょうか。くるっと丸まっています。これを極細切した塩昆布を添えて食べます。「千花」の伝統的な名物(食べ方)なんだそうです。とても上品な味です。わさび醤油との食べ比べも楽しいです。刺身は身が締まっていて勿論美味しいですが、皮がいいアクセントになっています。
・「お椀(白身魚、しいたけ、餅のような練り物など)」
カウンター内でご主人が何度も味見をしながらお汁を作ります。香りは私の故郷でのお雑煮のものに近いです。おそらく椎茸、鰹節などオーソドックスな出汁なんだと思いますが秘訣は分かりません。具はお椀に入って厨房から現れ、それにお汁を注いで出来上がりです。繊細でコクがあってとても美味しいです。お椀は和食ではメイン料理になるのでしょうか。とても満足度の高いお椀です。食べる前に、写真を撮っていいですかとご主人に聞くと、写真ならこっち向きがいいですとお椀の方向を変えてくれました。
・「筍を焼いた物」
・「湯葉の冷たいスープ」
・「琵琶湖の稚鮎、白子、外子」
ここまでの料理はご主人がカウンター内で作り、カウンター越しに供されますが、ここからは厨房で作ったものがスタッフから運ばれます。カウンターで作っているところを見せること自体、新しい試みなんだそうですが、前半がご主人の手作りで、中盤以降は弟子が作っているような印象を受けます。誰が作ろうと店として水準は同じに違いないのですが、これだと見た目の楽しさが半減することになります。最後の盛り付けだけでもよいので、もう少しカウンター内での作業を見せてから仕上げる工夫があれば楽しいのになと思いました。また、ここから料理の説明をご主人がするのか、スタッフがするのか明確に区分けされていないようで、聞かないと説明がない料理もありました。
・「鮭 時知らず」
・「富山産の白エビのかき揚げ」
・「茄子の焼き物 胡麻ダレ」
この3品がメインにあたるのでしょうかとても美味しかったのですが、満腹感が出てくる頃なので、もう少し捻りがほしいような気もしました。具体的には、「職人で選ぶ45歳からのレストラン」というグルメ本に写真付で紹介されている「タイのお頭の酒蒸し」のようなものが出されることを期待したのですが…。
・「鮎ご飯、冷たい味噌汁、漬物」
最後はご飯。量は普通でよろしいですかと聞かれます。かなりお腹一杯になっていたので普通でお願いしました。変わっているのは味噌汁が冷たいことでしょうか。鮎ご飯と合わせておいしくいただけました。
・「フルーツジュース」
デザートがフルーツジュースというのも「千花」の名物なんだそうです。聞き逃しましたが、マンゴーとオレンジのような爽やかなジュースでした。
以上、評判どおりとても美味しいです。美味しいことは間違いないのですが、もう少し驚きが欲しいかなあという気もしました。高級割烹のカウンターでゆっくり食事するというのは考えてみるとほとんど経験がなく、和食が何なのかを知りませんが、洋食のようなメインでの最大の盛り上がりというピークがないような気がしました。もちろん平坦ではありませんが、なだらかな山の稜線のような起伏です。この後行った「美山荘」の食事でも感じたのですが、空腹感も手伝って初めの4~5品がとくにおいしく感じる。後半の盛り上がりが弱い。
どれも美味しいです。本で紹介されているように、五感を澄ませて真剣に向き合わないとこの凄さは分からないのかもしれません。ただ、後半に、これまで食べたことのない驚きのある料理を一品食べたかったというのが本音です。この飽食の時代に1万8千円でそれを求めるのは無理があるのでしょうか。
私がビールとお酒をいただいてトータル41,500円でした。出来れば現金でと言われ慌てましたが持ち合わせがありほっとしました。
ご主人がお見送りをしてくれます。気持ちよく食事を終えることができました。
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