大好きなクラシック音楽、本、美味しいお店、旅行などの記録です。
休日はソファの上でリラックス!
ミシュラン東京2008
2007年11月22日 / 本
・「ミシュランガイド東京 2008」
この話題本の優秀店の選抜については私は論評するグルメ体験を持ち合わせていないのですが、日本人向けというよりフランス人旅行者のための優秀店の印象です。日本ではあまり評価されない指揮者の小澤征爾がヨーロッパ、特にフランスでは大人気であることを思い出しました。
個人的には、少ない経験の中では最も好きなフレンチ/イタリアンである広尾の「アッカ」が記載なしでホッとしたのと、下馬評は高かったものの三ツ星ではないだろうと思っていた「レ・クレアシオン・ド・ナリサワ」が一つ星だったことが興味深かったです。
記念に購入しようかと手に取ったのですが、読んで楽しむにしてもソソラれない店名が多かったので止めておきました。以前から、グルメ評価本は、個人名義の本が個人の好みの違いこそあれ評価のモノサシがはっきりしていて信頼が置け、団体(集団)名義は中庸な評価が多く、結果、以前から名店とされている店が持て囃される傾向が強いと思っていましたが、ミシュラン東京も同じような印象です。
・谷川浩司「構想力」
最近は新書などの実用書を読むことが多いです。新書については出版社が面白い
テーマを競っていて新書戦争の様相ですが、充実した内容の本も増えてきたように思います。以前は新書のポイント・エッセンスは始めの2~3章だけで残りは規定の200~250ページにするための穴埋め、全て読み通す必要はないと思っていましたが、諸作乱発の割には読み通す価値のある本が増えてきたように思います。
特に面白かったのが将棋の谷川浩司氏の「構想力」です。同じ角川書店の新書で羽生善治氏の「決断力」が話題になった時に購入して読み始めたのですが乗れずに中断したのですが、この本は違いました。構想力というのは一テーマ、仮の名称で、要するに将棋で勝つためにどういう準備をし、どういう心構えで勝っていくのかについて書かれた戦略、戦術、勝負本です。
徹底した事前の対戦相手の調査、定跡の研究、そしてたった一手のリードを得るための息詰まる心理戦、読みの深さ。プロの将棋の奥深さが実感として分かりました。谷川さんは天才であるのですが努力、苦労の様子が我々凡人にもよく理解できました。
併せて以前読みかけた「決断力」を読んでみたのですがやはり肝心なところがベールに包まれていてどうして羽生さんが将棋に強いのかが(天才といえばそれまでですが)本からはよく分からないところがあります。事前の研究の重要性、前例にとらわれないこと、決断する際の集中力、頭を一時空っぽにすることなどなど、両氏共に書いている勝負師に必要なことは似通っているのですが、「決断力」は金言集のように言葉が浮くのに対して、「構想力」は実感として納得できます。
これは永世名人の権利を獲得した一世代上の谷川氏の余裕なのかもしれません。一方の羽生氏は熾烈な競争真っ只中にいてまだ手の内は明かせないということでしょうか。有名シェフの家庭料理本で一番重要なポイントを書かないのに似ています。将棋界トップ10人のA級で谷川さんは45歳にして最年長なんだそうです。中高年層の代表としてこれからも奮闘していただきたいものです。
以前、山形県の天童に行った際、記念に買った将棋の駒を引っ張り出してきて、竜王戦の棋譜を並べてみたりしています。
・桐野夏生「アイムソーリー、ママ」
小説では桐野女史の「アイムソーリー、ママ」と「残虐記」を楽しく読みました。桐野夏生の作品に登場する女性は本当にエグくて怖いです。それだけ魅力的で小説としてはインパクトが大きいのですが、先日の新聞記事によると集団において女性の比率が高まれば高まるほど、イジメが起こる割合は高まるんだそうです。女性は怖いですね。周りの目など気にしない怖い女性が実際に身近にいると生きた心地がしません。これは怖い男も同じですが。
文学界での注目は、作家の池澤夏樹氏(作品は読んだことないのですが)が選定した河出書房の新しい世界文学全集(全24巻)です。20世紀後半の作品を中心にピックアップしたとのことですが、「アフリカの日々」や「存在の耐えられない軽さ」など強く印象に残っている美しい美しい作品が選定されていてかつ新訳、読んだことのない本も多く選ばれています。まとめて読んでみたい気がしますが・・・果たして読む時間があるか・・・海外文学への関心が持続するか・・・第1回配本の新訳「オン・ザ・ロード」は購入しました。
・NHKハイビジョン特集「白夜の大岩壁に挑む~クライマー山野井夫妻~」
以前メモを書いた沢木耕太郎のノンフィクション「凍」で取り上げられた登山家・山野井泰史・妙子夫妻が、ギャチュンカンからの生還後、5年ぶりの大掛かりな挑戦となるグリーンランドにある未踏峰の大岩壁に挑み登頂した様子を記録したNHK特集です。
危うく見逃すところでしたが、この日曜日にたまたま眺めていたBSのテレビ紹介欄で目に止めることができました。「どうせすぐ寝るんでしょう、寝たらチャンネル変えるからね」と言っていた妻も一緒に映像に釘付けになりました。
凍傷のダメージから夫婦共にもう山歩きだけで壁に取り付くことはないと思っていたらしいのですが「楽しいから」という理由でリハビリ、道具に様々な工夫を凝らすなどして現場に復帰しています。ただ、泰史氏は両手で指はまだ6本ありますが、妙子氏は10本ギャチュンカンで失っていて、ヒマラヤなどの雪面は今は困難ということで、白夜の時期の夏山への挑戦です。
それでも、ルートのない未踏のほぼ垂直の絶壁です。先頭を変わりながらのルート開拓、確保、前進の繰り返し。手足の自由が制限されているので多くの時間を要する挑戦です。
困難は大きいけれども、ただ好きで楽しいからという夫婦の登攀への前向きな思いが爽やかに伝わってきました。泰史氏のキラキラ輝く目、よく笑う歯の白さが印象的なあっという間の2時間でした。
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