佐野元春「VISITORS」


 佐野元春の「VISITORS」を最近よく聴いています。無性に「TONIGHT」が聴きたくなり探していたのですがようやくネットで手に入れました。

 佐野元春ファンには申し訳ないのですが、ロック・ポップを洋楽で覚えた私には佐野元春の音楽はブルース・スプリングスティーンやスタイルカウンシルなどのパクリ、日本人の歌なのにサビは英語かよ、その声でボーカルやるのと嘲笑の対象でした(すいません)。サザンオールスターズと並んでレベルの低い日本ポップの象徴くらいに思っていました。

 ただ、この「VISITORS」に収録されていた曲は同時代でよく耳にしました。当時人気のあったラジオ番組である「ミスDJリクエストパレード」で頻繁にかけられていたからです。「ミスDJ」とは、素人から選ばれた女子大生DJ5人が月曜日から金曜日の夕方にDJをやっていた番組で、女子大生の素人っぽい新鮮さと会話が少なく音楽中心という構成が人気の理由だったのだと思います。今も出ている日本女子大の向井亜紀の他、可愛い声をした成蹊大学の千倉真理、立教大学の加藤何某などがいたと思います。高校生には華やかな女子大生のDJは刺激的でワクワクしたものでした。

 私が「ミスDJ」をよく聴いていた時にちょうど佐野元春がニューヨークに行き、新譜を制作する過程が同時進行で報道されていました。先行シングルである「TONIGHT」を始めアルバム完成後も多くの楽曲を流していました。当時も佐野元春の印象は同じで二流、アマチュアという印象でしたが、プロデューサーがアメリカ人だけあって詩はともかくアレンジはまとも、意外といい音楽じゃないかという感想でした。

 改めてアルバムを聴き直しましたがこれは大傑作です。シングルカットされた曲など5曲は以前ラジオで聴いて知っていて、3曲は初めて耳にしましたが、どの楽曲も刺激的でレベルが高い。当時は英語の歌詞を軽蔑していた“他人に厳しい高校生”も歳月が流れ寛容になれたのか素直に聴き入ることができます。偏見(拘り)がないとニューヨークを舞台にした歌詞はニューヨーク大好きな私にはとても刺激的かつ美しく聴こえます。佐野元春風のヒップホップミュージックも楽しい。
 ブックレットには日本詩と英語詩が併記されていて実際の歌唱はどちらかから選ばれているのですが、正直、もう少し日本語を使ったほうが逆に刺激的なんじゃないかと思える箇所もあります。それでも全体的にはリズム、アレンジがよくビートに合せてノリノリ、乗れます。

 「コンプリケーション・シェイクダウン」、「トゥナイト」、「シェイム」、「ニュー・エイジ」など佳曲のオンパレードですが全体としてもまとまりがあるあっという間の40分。
 25年振りに自分の中で甦ったラジオから聴こえていた音楽。佐野元春を再評価です。


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