クリフォード・ブラウン「Live at Music City 1955 & More」

             

 クリフォード・ブラウンといえば「ウィズ・ストリングス」が大好きでジャズのあらゆるディスクの中で最も愛聴しているディスクの一枚です。痺れるホーン、酔いしれる音楽です。

 しかし、しかし、その他の正統派のジャズアルバムがどうしてもノレない、酔えない。有名な「スタディ・イン・ブラウン」やドラムのマックス・ローチと組んだアルバムやライブがそこそこ残っているのですが、繰り返し聴きたいと思えるディスクがほとんどありませんでした。真面目すぎるのか、天才と称されますが実力がマイクに収まらない。

 もう諦めて長い年月が経過しますが、先日、タワーレコード横浜で推薦してあったレア・レコーディングのアルバムに何かピンときました。

 1955年5月31日のライブとおそらく1956年とされる2夜のライブテイクを編集したディスクです。これは興奮しました。ライブならではの勢いと熱があります。必ずしも録音はよくなくてクリフォード・ブラウンのトランペットが聴き取りにくい箇所もあるのですが、全般的にこれぞジャズという即興性があります(素人の私の感覚です)。

 1~3はまあ普通の録音、4~7がかなり悪い録音、8~10は劣悪といえる状態です。ケースの裏面にもRARE LIVE RECORDINGS - ONLY FOR COLLECTORSとあります。ファンでない方が聴く水準ではないかもしれません。それでも1~7はジャズファンにはOKの水準でしょう。

 このディスクで驚いたというか聴き入ったのは4の後半と7の始めから6分近いドラムのソロです。ジャズドラムを詳しく知らないのでこれが普通にあるドラムの叩き方なのか分かりませんが私は初めて聴きました。低音が強調され連打され忘我の域に達するようなドラミング。ドアーズや地獄の黙示録を思い出しました。
 こんなジャズがあるんだ。クリフォード・ブラウンがどうしてマックス・ローチというドラムと長らく共演したのかはじめて分かりました。

 漸くウィズ・ストリングス以外に愛聴盤になりそうなディスクを知れた喜びです。

1 Walkin’
2 A Night In Tunisia
3 Donna Lee
4 I’ll Remember April
5 More Than You Know
6 Embraceable You
7 Wee Dot
8 52nd Street Theme
9 I’ll See You In My Dreams
10 These Foolish Things
11 Brownie Interviewed By Leonard Feather


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宮崎克/吉本浩二 「ブラック・ジャック創作秘話」

              

 これまた「このマンガがすごい!2012」からオトコ編1位のマンガ、実話に基づいた作品です。

 作品名から想像するブラック・ジャックという稀有の主人公やこのマンガがどのようなきっかけで誕生したのかの話しではなく、手塚治虫がスランプに陥り、一旦、プロダクションが倒産した後、再生のきっかけとなった「ブラック・ジャック」の誕生とその後の手塚、スタッフ、担当編集者など関係者が時間に追われながらかなりの数の人気連載を綱渡りでなんとか創作していく奮闘記です。

 様々なエピソードが紹介される手塚治虫の天才、大らかで真面目なキャラクターにも魅かれますが、休みもなく睡眠時間も削って高水準の作品を作り上げていく凄まじいまでの渾身の努力、それに後の人気作家たちがまだ無名のスタッフとして必死に支えている姿にワクワクします。

 このマンガを読んで、自分ももっと努力しなければと発奮したとは何とも単純ですが、それが正直な感想です。
 学生の時、スコット・タローの「ハーヴァード・ロー・スクール~わが試練の1年~」という本を読んでぶったまげたことを思い出しました。クラスでそれなりの地位を占めるため、気の遠くなるような膨大な量の勉強に持てる時間の全てを注ぎ込む闘争心に圧倒されました。そこまで勉強するのか、そこまで努力するのであれば成功も当然だ、これは自分には出来ない・・・。オマケとして、約10年後、このタローがベストセラーとなった「推定無罪」の著者スコット・トゥローとして再び登場したときも本当に驚きました。

 将来の大物が無名のスタッフで働いている件では、リクルートの江副浩正の自伝的内容の新書でリクルート草創期に立花隆がアルバイトとして働いていたのを読み、凄いなと思ったのを覚えています。カリスマに触発されて、次世代のスターが成長していく風景は素敵です(リクルートの例はちょっと違いますが)。

 脱線しましたが、私のような自分で漫画本を買ったことはないけれども、散髪屋や食堂に置いてあった「ブラック・ジャック」を読んでいたファンでも大いに楽しめます。ナンバー1も納得の刺激的な良書です。「うどんの女」もそうでしたが、コンパクトに内容を凝縮した1冊完結のマンガもいいです。


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