小澤征爾/ウィーンフィル「バッハ G線上のアリア」

 昨年末にNHKで観た「クラシック・ハイライト2011」の最後の曲は大震災後に松本で追悼演奏された小澤征爾とサイトウ・キネン・オーケストラのG線上のアリアでした。

 思い出したのですが、私がこれまでの人生の中で聴いた最も美しい音楽・演奏は、入社後に赴任した新潟の独身寮で観た小澤征爾とウィーンフィルの演奏です。1989年からの3~4年のどこか、周りの微かな記憶では1991年前後じゃないかと思います。
 独身寮の食堂のテレビはWOWWOWに加入していて、珍しくクラシック音楽の演奏会を生放送していました。そこで意識してか、たまたまか観たものです。小澤征爾指揮のウィーンフィル、カラヤンの追悼演奏会で会場は教会のようなところでした。バッハのG線上のアリア、ジェシー・ノーマンが登場してのトリスタンの前奏曲と愛の死、そしてブルックナーの第9交響曲でした。確かそうだったと思うのですが、検索してもヒットしないので自信がありません。

 そこで冒頭に演奏されたG線上のアリアの絹のような柔らかさを忘れられません。ピチカートと旋律というよりレガートで抑制された音がボンボン響き合い溶け合うような演奏でした。痺れました。会場での生演奏の体験でなくて、テレビの前で観ているだけなのにこんなに美しさを感じられることに驚いたのを覚えています。

 YouTubeで検索すると、同じ小澤征爾、ウィーンフィル、カラヤンの追悼演奏会(広いホールなのでザルツブルク?)でのG線上のアリアを聴けます("Air" aus der Orchester-Suite D-Dur BWV 1068)。カラヤン全盛期のウィーンフィルの顔触れが懐かしく、これもよいのですが、記憶にある教会での演奏はもっとマイルドなものでした。昔のこととはいえ観て聴いた記憶があるので聴き違いではないと思うのですが・・・あの時の演奏会の映像をもう一度観られないかと希望しています。

 いずれにしても小澤征爾のG線上のアリアは、ウィーンフィルとのもの、サイトウ・キネンとのものと複数ありますが、どれも美しく感動的で素晴らしいです。


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ルカ「バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」

              

 タワーレコードのオリジナル企画で復刻させたセルジウ・ルカの無伴奏、1977年の録音です。横浜タワーレコードで強力プッシュされていたので手に取りました。古楽器による無伴奏の録音としては世界初だったそうです。

 ヴィブラートを抑えて飾りの少ない音楽を奏でていきます。古楽器ですが現代的な演奏様式も取り入れてあり中庸の美しさがあります。囁くようなバッハです。枯れた古楽器の響きも耳に心地いい。この曲の良さがしみじみと心に染み入ります。気に入りました。

 バッハの無伴奏といえば何といっても1967年のシェリングの絶対盤があります。改めて聴いてみると、きりりと引き締まって純粋で豊かな演奏です。地平線の先の先まで広がっていく透明感。やはり素晴らしい。
 2005年のクレーメル盤。個性的な歌い回しのスケールの大きい怪演の印象がありましたが、シェリングの後では少し違和感を感じてしまいました。ただ、バッハやベートーヴェンなどのヴァイオリンはその時の体調、精神状態で好みが変化するので今はという意味です。
 2011年の庄司紗矢香盤。若々しく新鮮な印象がありましたが、改めて聴いてみると楽想を掘り下げた深みのある練られた演奏です。しかも大きく呼吸していて美しい。若々しさもあり、これも素晴らしい演奏だと思いました。

 名曲の名演奏、音楽を聴く喜びです。


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