萬翠荘(ばんすいそう)は、国重要文化財。建造は大正11年、旧松山藩主の子孫に
あたる久松定謨伯爵の別邸として建設された。
萬翠荘は、「坂の上の雲ミュージアム」から緩やかな坂を5分ほど登った場所にある。周囲
は城山の麓、鬱蒼と茂る深い緑に包まれた静かな場所に佇む。
一方、建物の近くには、県庁や市役所、裁判所などの公官庁が立ち並ぶ。併せて、交通量
の多い幹線道路の両側には、大型商業施設などが林立する松山を代表する繁華街に隣接
する場所です。
萬翠荘は、20世紀初頭のヨーロッパ・アールヌーボーの建築様式。急勾配の屋根は
天然スレート葺き、フランスの歴史的な建造物に見られる「うろこの屋根」。
屋根の頂部や窓の上の飾りは銅板です。歳月を重ねた青緑色の緑青の色が屋根だけで
はなく建物全体にアクセントを付けています。屋根の天然スレートは宮城県石巻市を産地と
する「雄勝石」が使われているとの事です。
各部屋ごとに、色彩の異なる大理石で造られてマントルピース(暖炉)。壁には大鏡が
設置され、豪華で華やかな大正ロマンの雰囲気が伝わってきます。
玄関の扉には、鳳凰と久松家の家紋の「梅鉢」をデザイン化した金属製の装飾金具。
さらに、玄関ホールの右側には古代ギリシャ建築様式の見事な石柱が立っています。石柱
は岡山産の万成石(通称紅桜)が使用されています。
玄関を入ると、階段の踊り場の大きなステンドグラスが目に飛び込む。さらに、各部屋
のドアの天窓には、それぞれデザインを凝らしたステンドグラスがはめ込まれています。
「愚陀佛庵」
愚陀佛庵は、夏目漱石が英語教師として松山中学校に赴任した際の下宿家屋です。
愚陀佛庵は萬翠荘の敷地内の一角にあり、当時の雰囲気そのままに復元された建造物
です。
この愚陀佛庵では一定期間、正岡子規が居候し俳句づくりい没頭した場所でもあります。
一方、漱石の小説「坊ちゃん」は、ここで過ごした松山での教師体験を元に書き起こされ
ています。