クアトロの壁には、フランスを代表するワインである“シャトー・ムートン・ロートシルト”のエチケットが年度ごとに並んだポスターが飾られている。
このワインは、20年ほど寝かせると美味しく飲める。
長い年月を楽しめるように、毎年有名な画家の絵がエチケットに使われている。
その中の80年のムートンは、クアトロの父の思い出のワイン。
クアトロのシェフが3歳だっただろうか、クアトロの父はフランス・ボルドーで開催されたワイン見本市へと出かけた。
ボルドーを訪れた記念に市内のワインショップで息子2人の生まれた年のボルドーワインを購入した。
2人の息子の成人式に飲みたかったので、20年後に飲み頃を迎える偉大なワインを探した。
次男のクアトロ・シェフには1980年のシャトー・ムートン・ロートシルトを購入。
そして17年後、クアトロのシェフ20歳の成人式にそのワインを開けた。
「お前のためにボルドーで買って今日まで大事に保存してきたワインだぞ」と、偉そうな顔をする父である。
「でも、まだ成人したばっかりだし、ワインの味はわからないだろうから、一口飲んだら後は父が飲んであげるから」
一口味わった主役の息子はとっとと友達と遊びに出かける。
しめしめとばかりにムートンをじっくりと味わうクアトロの父。
何のことはない、自分が飲みたかっただけなのである。
1980はムートンとしてはオフビンテージではあるが、思い入れが詰まったこのワインは実に美味しかった。
子供の成長を祝うよりも、早くこのワインを飲みたいと涎をたらしそうになっていた父である。
クアトロのポスターを見ると味わいと共に思い出す成人式の光景である。
※当面の間、クアトロは夜の営業を9時半までとします。
(8時半最終入店とさせていただきます)