ドアの向こう

日々のメモ書き 

末摘花

2005-08-04 | イーゼルのうた


 油彩画を習い始めたのは30年も前のこと。
 月に2回、木炭や鉛筆でのデッサンに始まり、水彩スケッチをかさね、いよいよoil painting。憧れの「あぶらえ」である。最初は4号(24×33.5㎝)ばかり何枚も描いた。そのうち6号、やがて8号とだんだん大きいのに挑戦する。

 これは初めて描いた10号(45.5×53㎝)夏休みの宿題だった。モチーフは自由。イーゼルにセットして途方に暮れる。白いキャンバスはさらに広く感じられた。こんな大きいのが描けるの? 埋められるだろうか?   

 こわごわ描いた。今見れば初々しく淡く、ルノワール調だ。枯れた紅花は好きな色だった。画面が広い分、余白が気になりドアを開け、空想の景色を描きこむ。入れ物はブリキ、質感はまだまだ。
そのころピアノ教師だった弟のお嫁さんにプレゼントした。
 彼女は紅花色のドレスがよく似合う。 オレンジ色がすき。

(季節の花300より)
 ・花から得られる紅は口紅になり、平安王朝人の紅や桜色の衣を染め、古代エジプトのミイラの布の防腐にも使われた。
・光源氏は葵上を弔う喪服に使用した。
 紅花の別名は 末摘花(すえつむはな) 茎の末の方から咲き始める花を摘み取ることに由来する。 

 源氏物語第六帖、末摘花(常陸宮姫)のことも思い出される。 
 万葉集では 紅(くれない)とか 末摘花(すえつむはな)で詠まれている。
  外のみに見つつ恋ひなむ紅の末摘花の色に出でずとも 巻10・1993
  紅の花にしあらば衣手に染め付け持ちて行くべく思ほゆ 巻11・2827

 紅花の歌を知るのは、この絵を描いてから20年以上も後のこと。
時はすばらしい贈り物をくれる。
10号がこわくなくなり50号や60号も描き、万葉歌にも出会った。 サインもないが、始めて2年目くらいの絵だと思う。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする