かぐわしい香りで存在を知らせる金木犀、 花に見つめられ小雨のなかを講座に急いだ。 ようやくやってきた秋気を愛でつ、 心にふかく受けとった。
5ヶ月ぶりにみえた○さんは、お休みの間にご主人を亡くされていました。
「あっという間…」 と絶句する。 ひと周り小さくなったようなそのお顔、何とお慰めしよう。 ただ、手を取って 「良くいらっしゃいました ゆっくりお元気出してね」
お隣さんも 「私は10年以上まえに夫を…」 みじんも感じさせなかった屈託のないその方の、 つらい哀しいときを知るよしもなかった。
ほとんど女性ばかりの教室に、 勇気を出して出席される貴重な男性たち。 そのおひとりが
「プールで泳いできました、その帰りが万葉です」 と 晴れやかだった。
日焼けして屈強なその方はいつも熱心。 部屋に入るとき
「ここが終わると 入院している認知症の妻を見舞います」 そう呟く。
ハッとした
人は皆 いろいろ抱えている。 それでも 何か勉強したい、自分を高めたい 磨きたいと、 健気にしっかり生きている。 すぐ泣いたり、 わめいたりする自分が恥ずかしくなった。
今日の歌は どれほど身にしみたことだろう…
君が行く 道の長手ナガテを 繰り畳ね 焼き滅ぼさむ 天の火もがも
あかねさす 昼は物思モひ ぬばたまの 夜はすがらに 音ネのみし泣かゆ
帰り ベルト・モリゾ展へ。 ゴーギャンやゴッホにも再会した。 今あるいのちをたいせつに ちからいっぱい 生き抜かなければ 申し訳が立たない。
写真: 住友ビル広場 「立話」 富永 直樹