3月も半ば、きょうはぽかぽか陽気の一日でした。お不動さんの境内にある桜の蕾も心なしか膨らんできたようで、開花が待ち遠しい季節になってきました。 さあて、今週もいろいろありました。先日は、所要のため東京に行く機会がありましたので、家内を同行して少しゆったりとした日程で東京見物と洒落込みました。それも、現役の頃に歩いたビジネス街ではなく、下町の風情が残る両国、浅草、柴又、そしていま話題の築地と東京都庁などを巡って来ました。3日間のうちの1日は、「お上りさん」よろしく、はとバス1日コース「江戸味覚食い倒れツアー」に参加です(笑)。
泊まったホテルが錦糸町界隈だったこともあり、「すみだ北斎美術館」も覗いてきました。北斎の絵は、3年前に琵琶湖河畔の佐川美術館で開催された「北斎とリヴィエール~ふたつの三十六景と北斎漫画」で初めて原画に出会いました。なんといっても構図の素晴らしさ、そして当時の人々の生活感あふれる表情が気に入っています。美術館の一画には、北斎とその娘の葛飾応為の実物大の人形も展示されていました。絵を描く手先が微妙に動く精密な仕掛けになっていましたが、コタツ布団をかぶって絵筆を取る北斎の姿に、在りし日の人間・北斎を見た思いがしました。案内によれば娘・応為も相当な腕前の絵師だったのだそうです。
街を歩いていると、北斎通り沿いにビルの間から東京スカイツリーが見えました。あまりにも高いので近場で全景を望むのは大変です。すると「タワービュー通り」と名つけられた通りがありました。タワービューというだけあって電線がありません。小池知事が言うところの無電柱化がいち早く実践されていて、この通りからだと下町に聳えるスカイツリーの全景を望むことができます。心憎い楽しい発見でした。
はとバスツアーの方は、朝の9時に東京駅を出発し、築地場外市場→浅草観音と仲見世→江戸東京博物館→柴又・帝釈天と、定番のコースに食事付きです。日曜日だったので横浜にいる次男夫婦もお誘いし、東京見物を楽しみました。
いま話題の築地市場は、確かに老朽化が著しい市場でした。でもねえ、じゃあ豊洲移転しかないかと言われるとなにか胡散臭いものを感じてしまいます。どこの組織にもありそうな話ですが、当事者意識に欠けたビジネスモデル優先の負の遺産になりそうな危うさがあります。
日曜日だというのに、場外市場は朝から観光客でいっぱいでした。活気にあふれていました。この活気、熱気は大事にしたいものです。築地本願寺にまで足を延ばしてお参りしてきました。 次に向かったのは浅草。いつもテレビで見る雷門の前で定番の記念写真です。仲見世の賑わいも半端ではありません。江戸東京の風情を体感しました。
次に向かったのは、両国国技館横の江戸東京博物館でした。北斎美術館の近くでもありました。江戸東京の歴史と文化を実物資料や復元模型で紹介しています。一画には文明開化東京から関東大震災、戦争、戦後の歩みを振り返るコーナーもあって、じっくり見ていたら1時間の自由時間があっという間に過ぎてしまいました。いずれにしても、江戸特有の美意識「粋(いき)」を感じさせる楽しい博物館でした。
そして最後は、寅さんで有名な柴又・帝釈天です。こちらも浅草に劣らず参道にはたくさんの人出で賑わっていました。これが「江戸」なんでしょうね。人との距離を非常に短く感じました。時代の先端を突っ走る首都東京とは違い、人の顔が見える街、人の呼吸を感じる街、地に足がついた街の様子が、ぼんやりと浮かんでは消えていきました。
そういえば寅さんこと渥美清さんの急逝を知ったのは、20年前、パリはルーブル美術館界隈の新聞屋さんで手にした朝日新聞でした。1面に大きく掲載された記事を驚いて読んだことを思い出します。 江戸川の土手にも登ってみました。大阪の淀川に似た風景でしたが、対岸は千葉県です。遠くに矢切の渡しを眺めることができました。
帰阪する前に、いま話題の都庁も覗いてきました。45階の展望台から東京の街を眺めたあと32階の職員食堂で人気メニュー「鰻重」を美味しくいただきました。価格はなんと880円でした。
東京一極集中、地方創生などといった言葉が飛び交うご時世。次代を牽引する「IoT」や「AI」「イノベーション」といった言葉に対する期待は大きいけれど、人の心が追い付いていないもどかしさ。さあてどうなんでしょうね。ビジネスモデルと人の生きざま、夢(いや虚構)と現実..........。温故知新という言葉がありますが、時代の転換期にあって私たちは何か大切なものを置き忘れてはいないか。いやいや、それは加齢に伴う時代認識の脆弱性なのかも?そんなことをぼんやりと考えながら羽田を後にしました。
注記:
上記の花の写真は皇居東御苑で撮影したものです。1枚目はカンヒザクラ、2枚目はニワウメです。苑内には様々な植物が植えられ、カメラマンの恰好の被写体になっています。 カメラをもったお爺さんは、皇居の植物ガイドブックを片手に「毎週来ていますよ」と嬉しそうにお話しになっていました。