少しひんやりはするけれども清々しい休日の朝を迎えました。きょうは3月11日、あの東北大震災から1年が経過しますが、私たちは改めて生きることの尊さを思い、生きることの意味を問うことになりました....。みんな時代の課題に気づいていながら手を拱いている。TV討論会を眺めていても、高名な政治家や評論家の言葉が白々しく思えてきていけません。....一方では、それなら君はどう生きる、と自問自答する私がいます。
ところで、雑誌「男の隠れ家」4月号の特集は「本のある空間、本と過ごす時間」です。その中に「古本夢空間」という章があり、私がよく行く街の古書店も2店紹介されていました。関心をもったのは天神橋筋商店街の古本屋巡りの記事でした。「喧噪の商店街をぶらりふらり。新旧の店が点在する浪花・古書ワールドの魅力」と紹介されると、じっとしていられません。きのうは帰途、足を伸ばして古書店巡りと相成りました。
京阪電車「天満橋駅」を降りて西に5分、中之島の先端部分に架かる天神橋を渡って数分歩くと、天神橋筋商店街1丁目の入り口がありました。看板には「日本一長い商店街」の文字が目にとまります。商店街に入ると、いかにも庶民の街、大阪といった雰囲気が漂います。大阪天満宮を過ぎ、落語お笑いの殿堂「繁昌亭」を過ぎると、地下鉄南森町駅あたりでいったん大通りに出ます。信号を渡って直進すると商店街2丁目に進みます。こうして商店街は天神橋筋6丁目まで続きます。長いはずです。
さて、お目当ての古書店は、3丁目あたりに集中していました。まずは天牛書店天神橋店へ。一歩お店の中に入ると、軽いBGMが流れ、商店街の喧噪とは別世界。専門書から一般書までが並び、貴重本や昔懐かしい雑誌類も揃っています。選書にお店のポリシーが感じられる、そんなお店でした。それに価格もリーズナブル。楽しい時間を過ごすことができました。
次に訪ねたのは矢野書房。このお店も雑誌にとりあげられていましたが、天牛さんとは異なる選書ポリシーを感じました。冊数はそれほど多いわけではありませんが、特定のテーマに拘りのある楽しい書棚でした。ここでもずいぶんじっくりと眺めることになります。そのあと、駄楽屋書房、常磐書房、エンゼル書房と巡りました。もう少し進むと、あと数軒お店があるようですが、時間切れです。次回のお楽しみにとっておくことにしました。
この日手にしたのは、田中宏和著「ガイアの樹(南方熊楠の風景)」、西條嫩子著「父 西條八十」、カール・ヤスパース著「大学の理念」、以上3冊でした。そうそう、南方熊楠といえば、先ごろ発表された第22回南方熊楠賞に同志社大学名誉教授で考古学者の森浩一先生が受賞されました。森先生といえば、随筆家の須賀敦子さんとは従兄弟の間柄であることを読書遍歴の中で知りました。こんな意外な発見も読書の楽しみのひとつです。
大阪のド真ん中にある大きな商店街、なかなかの賑わいをみせていました。実は、恥ずかしながら40年ほど大阪に暮らしていて、天満橋と天神橋筋と梅田の位置関係が良く判らなかったのです。数え切れないほど電車・バス・車で行き来しているのに、どうも立体的に理解できなかった。それが自分の足で街を歩いてみて、初めて立体的に体感することができたように思います。やはりヒトは自分の足を使うことだと再認識した次第。足を使えば、頭脳にも活力が芽生える。初老の私にとっては大きな課題なのかもしれません。努めて歩くことにいたしましょう。
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