完全に好みの問題として、ルーベンスはデッサンがいい。
器用で上手なことこの上ないのはわかるけれど、みっちり描いた大作は、過剰なところがもたれてしまう。
あとは、工房制をひいて製作していたので、量産品は画面のぬるさが目に付く物もある。
ルーベンスがさらっと描いたデッサンは、軽やかさが心地よく、典雅な音楽が聞こえてきそうだ。
本当は、もっと注目されてもよさそうなルーベンスだけれど、大量に存在するその作品ゆえに飽きられ軽んじられているのかもしれない。
実際、自分もヨーロッパの美術館を巡っているとき、「どこにでもいるルベちゃん」といって、しみじみ彼の作品に見入ったことがないのだけれど。
だから、今は贖罪の意を込めて、ルーベンスのデッサンを押してみるのだった。