18世紀のフランス宮廷画家フランソワ・ブーシェは、とにかく描き捲くった。
絵画は約1000点、版画は約200点、1000枚以上の素描を作り出し、なおかつ陶器やタペストリーの下絵、壁画制作、舞台装置なんぞもこしらえた。
工房制をとっていたとしても、恐るべきその仕事量。
文化が爛熟していたロココ時代は、かなりエロティックな物も好まれたようで、目にも露な美女の裸体が画面に臆面もなく描き出され、露骨なシーンもあったりする。
まるでこれはフランスの浮世絵師だ。
歴史を紐解いていると、世界同時発生的事象がかなりな頻度で出会うことがある。
いまでこそリアルタイムで世界の情報が共有できることからそれもありうると思うが、18世紀やそれ以前も人類の記した道はとても似通うから驚きである。
何か大きな意思が作用しているのじゃないかと、とんでもな想像をめぐらすのも楽しいけれども。
それにしても、この夢見心地のきらびやかな世界は、もうすでに腐臭を漂わせ、快楽の果てを背後に隠しているようで、ブーシェの冷めた上から目線にちょっと背筋が凍るような感じを受けた。
やってくれるではないか、ブーシェ!
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