大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・231『満要鎮PI史跡・2』

2024-07-08 12:01:05 | 小説4
・231

『満要鎮PI史跡・2』孫大人 




「あたしはPIなんか絶対しないからね」

「え、突然アルネ?」

「JQもJR西もPIされて、中身は児玉元帥やら劉宏大統領なわけでしょ。それって、単なるスペアボディーじゃん。ロボットは人間の道具じゃないとか言ってるけど、嘘っぱちじゃん」

「おお……( ゚Д゚)」

「悟兵のソウルが入ってきてさ、アルアル語喋ってるなんてゲロが出るし」

「アハハハ、そんな予定は無いアルヨ」

「え、だったらなんで電源入れたりしたのよ?」

「え、騒鈴が言ったアルヨ『ねえ、主電源入れてくださらないかしら』って」

「え、そうだった!?」

「そうアルヨ、ほんの三時間ほど前のことアルヨ」

「ナイナイ、ぜったい無い!」

「バックログ見てみるいいよ」

「無いもん、無いから見ないし」

 なんか子どもを相手にしてるみたいアル。でも面白いから深入りしないアル(^_^;)。どう言い返してやるか考えていると、ピックアップトラックがバンを引き連れて入ってきたアル。

「ん……なんだろ?」

 東鈴と二人、近所に越してきた引っ越しトラックに気を奪われる子供のようにシゲシゲと見る。バンの方からも作業員風やらスーツ姿やらジャンパー姿が下りてきてテキパキと作業に入る。

「あ、似てる……」

 東鈴が呟く通り、下ろしてきた物体は児玉元帥のPI記念碑に似ていた。

 ジャンパー姿が儂に気付いて笑顔でやってくる。

「やあ、孫大人じゃありませんか!?」

「え、あ、ああ……」

 思い出した、このジャンパーは満要鎮の村長の張ナントカだ。

「いやあ、PI記念碑はうちの観光資源なんですがね、昔のように人が集まりませんでしてねえ。まあ、大連の203高地やら万里の長城ほどには人気がありませんからね。こんど劉宏大統領の記念碑も合わせて、PI資料館なんかも併設しようと思いましてねえ(^▽^)。漢明の銀行からも資金を借りましてね、やっとここまでこぎつけたんです」

 なるほど、アイデア村長の村おこしと言ったところアル。

 記念碑のプレートには『瀋陽PI記念館』と表記されている。

 行政区的には満要鎮なのだが、政府は民間施設の表記にはうるさくない。

 千葉にあっても東京ディズニーランドと呼ぶしね。

 大勢の観光客を呼び込もうとしたら、何でもありでいいアルよ。

 記念碑は新品でピカピカ。日本人ならひいてしまうかもしれないが、ここらあたりはピカピカが好まれるアル。

 
☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー       
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
 

 

 

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REオフステージ(惣堀高校演劇部)083・美晴はお料理名人!

2024-07-08 08:22:45 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
083・美晴はお料理名人! 





 自慢じゃないけどお料理はからっきし。

 目玉焼きくらいはできるけど、あとはカップ麺にお湯を注ぐくらいのもの。


 十八歳にもなって、このザマなのは家庭環境によるところが大きいんだけど、言いだすととんでもないグチりになるので控えておく。

 母も祖母も十分承知しているので、この一週間はデリバリーを手配してくれている。

 ところが、世の中には予期せぬ不幸というものがある。

 もともと今回のことはミッキーのホームステイ先の家が火事で焼けてしまうという不幸があったからだしね。そしてミッキーが十三(じゅうそう)に足を伸ばした時にスマホの電池が切れてしまって、わたしが迎えに行くハメになったことが引き金になっている。

 あるものなのよね、不幸の連鎖というのは。

 もっとも、本人のミッキーは、わたしの家に住めるようになって「神は試練の後に喜びを用意してくった!」とか言って、アメリカに戻ったら久しく足を向けていない教会に13ドルの寄付を持ってお参りに行くって言ってる。教会の寄付に13ドルというのはどうかと思うんだけどね。

 あ、そうそう、不幸の連鎖。

 なんと、このデリバリーさんが食中毒を出してしまって、二日目から止まってしまった!

 お母さんはヌカリのない人で、デリバリー以外の手配もしてくれている。

 わたしの口座に『おもてなし資金』を振り込んでくれていて、それを下ろせばしのげるようになっている。

 でも、これは万一の時の保険のようなもので、このお金で食材を買うことはできるけど。その食材でもって、わたしが料理することがどんなに無謀なことなのか……これには目をつぶっている。

 こんなところにも、日本人の安全保障への脳天気さが現れていると思うんだけどね。

 一週間だけのことだから、外に食べに行くという選択肢も一般的にはあるんだけど。

 シスコでミッキーんちに滞在している時に「ミハルの料理の腕はすごい!」ということになってしまっているのよ。

 これは日本と日本人への過剰な期待というか幻想が元になっていて、ま、多少の見栄とかもあって、ミッキーとその家族の思い入れを否定しなかったわたしにも問題がないわけじゃない。
 
 だって、一か月後にミッキーがわたしんちにホームステイするなんて、この大阪にミサイルが落ちてくるよりも確率が低いんだもん!

 でも、デリバリーを頼んでいたじゃない?

 それはね、こういうこと。

「わたしが作ったら美味しくなりすぎるのよ。一般的な家庭料理を堪能してもらうには、このデリバリーが一番なの!」

 と苦しく押し切った。

「もう少し一般的な家庭料理ができるようになったらご馳走するわ」

 自分へのフォローも忘れなかった。

 こういう屁理屈の立て方は、我ながらすごいと思う。ひょっとしたら国会議員に向いているのかもしれない。

 いろいろあって、放課後の惣堀商店街をミッキーと二人で歩いている。

 恥を忍んで演劇部のミリーに相談したんだ。

 ミリーは、もう四年も大阪に居る。

 ホームステイ先は黒門市場で魚屋さんをやっている渡辺さんだ。

 渡辺さんは魚料理の他にも調理の腕はハンパじゃなくて、ミリーもその薫陶を受けて、かなりのものになっているらしい。

 演劇をちっともやらない演劇部だけど、お茶とお料理はなかなかのものらしい。

 お茶は千歳、お料理はミリーなんだ。

 松井須磨と小山内啓介も、なにか持っていそうなんだけど。生徒会の諜報能力をもってしても、この二人については分からない。
 
「協力してあげるわ、とりあえず食材は揃えておいてちょうだい」

 協力を約束してくれたミリーは綿密なリストを書いてくれた。

「魚だったら黒門市場の方がよくない?」

「ばかねえ、最初からそんな美味しいもの揃えたらハードル上がりっぱなしになるじゃないのよ!」

 なるほど、ミッキーのホームステイは三か月はあるのだ。

「それに、下校途中に買い物しておくって、とても自然じゃない」

「なるほど……演劇部のくせに思慮深いじゃない」

「うるさい!」

 ミリーは大したもので、惣堀商店街のどこにいけば何があるかをしっかり把握している。

 わたしは家事とお料理のエキスパートとしてミッキーを連れまわした。

「すごいね、商店街がみんなお馴染みさんなんだ!」

「まーね」

 学校の制服を着て「あれとそれください」とテキパキしていれば、どこのお店でもお得意さんぶっていられる、地元商店街の有りがたいところよ♪

「あら、生徒会の副会長さん」

 声が掛かったのは、食器洗剤を買いに入った薬局だった。
 


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)


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