大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・055『キーストーン奪還の旅立ち』

2024-07-02 10:01:41 | カントリーロード
くもやかし物語 2
055『キーストーン奪還の旅立ち』 




 最初のお供はネル(コーネリア・ナサニエル)だ。


 魔法特性と魔法耐性が高いこともあるんだけど、本人が強く希望して「強い意志も特性と耐性を補完してくれるだろう」とソフィー先生が判断して決まった。

 ハイジも行きたがったんだけど、くわせものの影響が抜け切れていないので外された。

「ウウ……ネルの次はハイジだからなッ!」

 涙目になって強がりを言うハイジ。

『王女さまや学校のみんなも見送りたがっていたんだが、派手なことをやると敵に悟られてしまうからな』

 ソフィー先生が御息所の口を借りて事情を説明してくれる。

 御息所は樺太の時と同様、手袋の防護服を着てポケットに収まっている。

『やくものミチビキ鉛筆でも飛べるが、同伴者と合わせなければならないので魔石を使ってくれ』

「これだ」

 ネルが左手で襟をまくってペンダントの魔石を見せてくれる。右手の魔石を受け取って首に掛ける。

 うわ?

 首に掛けたとたん体が浮いてビックリする。

『少し飛べば慣れる。必要なものは日に一度魔石を通して送ってやる、では、気を付けて行け』

「「はい」」

『定時連絡を忘れんようにな』

「き、気を付けて行ってこいよなぁ(#°△°;#) 」

 声を震わせるハイジ。

 いっしょに付いていけない悔しさと友情が滲み出ている。

「もういい、我慢してないでトイレ行ってこい」

「ウ……ごめーーーん(>Д<)!!」

 お尻を押えながらトイレにダッシュするハイジを見送って裏庭に出る。

『もうすぐ月が隠れる…………今だ!』

 セイ

 ネルと小さく掛け声を揃えて地面を蹴る。

 あらかじめ見当をつけていた夏の大三角(ベガ、デネブ、アルタイル)の真ん中を目指して飛んで行ったよ、キーストーン奪還の旅にね。


 
☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精)  プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖)
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)077・演劇部には同情されたくない!

2024-07-02 07:18:06 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
077・演劇部には同情されたくない! 





 久々にタコ部屋の部室に集まった。


 ここのところの涼しさで、タコ部屋でもええやろという判断。

 図書室ではエロゲがやりにくい。ノーパソを使うのは問題ない。せやけどポーカーフェイスでやってるつもりでも『グローバルクラブ』やってると、なんでか司書室の八重桜(敷島先生)には分かってしもて、そのたんびにエスケープキーを押さならあかんので集中でけへん(-_-;)。

 須磨先輩は昼寝がでけへん。タコ部屋では椅子を並べて簡易ベッドにしてた先輩やねんけど、図書室では禁止されてる。机に伏せて寝るのはかめへんねんけど、椅子を並べて本格的に寝るのは禁止やからなぁ。

 千歳は自慢のお茶を淹れることがでけへん。お茶は、俺にとってのグローバルクラブ、須磨先輩の昼寝に匹敵する。俺も須磨先輩も人が見たらええ感じはせえへんやろけど、お茶を淹れてる時の千歳は、ちょっと可愛い。

 ミリーは、部室棟の解体修理が中断してるんで、どこで部活やってもいっしょ。そやけど、放課後、部員四人でマッタリする習慣が付いてるもんで、やっぱりタコ部屋がええらしい。他の部員がマッタリしてないとミリーもマッタリでけへんみたいや。

「ミッキーの相手は疲れるわあ」

 だらしなく椅子に座ってミリーは天井を仰いだ。

「ミッキーは美晴先輩が好きなんじゃないんですかぁ(#^_^#)?」

 チャイナタウンの中華レストランで一緒になった時の様子で、ミッキーが美晴先輩に気があるのは分かってる。千歳は好意的。俺はどうでもええねんけどな。

「あいつ、自分からはアプローチしないのよ。せっかく交換留学でうちに来たのにさ」

「シスコで、なんかあったんじゃない?」

「学年違うから、なかなか自分から出向いてなんてことできないのかもね。ミッキーはアメリカ人にしてはシャイなんじゃないかなあ」

「その分、あれこれ興味持っちゃって、質問攻めでまいっちゃうわ。昨日なんて、階段の段数が13だって発見して大騒ぎ」

「え、学校って13階段だったの?」

「先輩、8年も在籍してて気ぃつかへんのですか?」

「うん、知らなかった」

「で、なんでなんですか13階段?」

「デフォルトだと思う。13が忌み数字だなんて、昔の日本じゃ知られてないわけでしょ、日本人の体格とかで建てたら、たまたま13になったんだと思うわよ」

「ちょっと試してくる」

「先輩……どこ行くんだろ?」
 
 しばらくすると――ちょっと来てみそ――と声が聞こえた。

「やっぱデフォルトだね、これ以上高くても低くても上り辛いよ。当然下りづらいし」

「クレバーですよ須磨先輩!」

 ミリーは三回ほど階段を上り下りしてチョ-納得した感じ。

「いやあ、なんかあるんだろうって事務所まで行って確認したんだけどね、事務長さんが古い図面まで出してくれたんだけど分からなくって、学校中の階段数えるハメになったのよ。よし、これであいつも納得でしょ」

 すると、ミリーのスマホが鳴りだした。

「ゲ、ミッキーだ(-_-;)……イエス、ミリースピーキング……」

 ミリーはスマホを耳にあて、声とは裏腹なウンザリ顔で電話に出た。

「え、あ、うん……じゃね。幸運を祈ってる」

「なんちゅうてきよったんや?」

「阪急京都線に13……あ、漢字表記だから十三てところがあるから調べるんだって。あいつ付き添って欲しそうだったから『そういうことは生徒会の美晴先輩の方が詳しいから』て振ってやったの。ナイスアイデアって喜んでた」

 しばらくすると階段の上の方からセカセカといら立った足音が下りてきた。部室から顔だけ出すと目が合った。

「あ、副会長」

 俺は、今までのいきさつで副会長という呼び方しかせえへん。

「え(;¬¬)?」

 死角から声をかけられたせいか、タコ部屋=演劇部のせいか、嫌な顔で振り返る副会長。

「ひょっとして、ミッキーですか?」

「ああ……たった今電話してきてね、十三(じゅうそう)で迷子になったから助けに来て欲しいって(-_-;)」

「それで、今から?」

「うん、こんなことまでミリーに頼めないしね、ちょっくら行ってくるわ」

 ピョン

 階段の残り二段を飛び降りると昇降口に向かって走っていく副会長。

 
 演劇部には同情されたくない!


 そんな副会長の心の声が聞こえたような気がしたぞ。
 


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
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