巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
どうしよう……
一つだけ、取り扱いに困る短冊があった。
―― みなさんも天の川で恋人と出会えますように ――
「え、どうして困るんですか?」
ロコが正直に質問する。
「だって……」
「そうだねぇ……」
真知子とたみ子は分かっているようで言葉を濁す。
「よーく見てみ」
「ええ、どれどれ……え……あ!」
ロコも間近に見て分かったようだ。
「鉛筆の下書きが残ってますね、そのう……」
ロコも言い淀んでしまう。
べつにヴォルデモート卿の名前が書いてあったわけじゃない。
消されてはいるけど、ごくうっすらと読めるのは『美奈』という名前だった。
短冊に署名するかどうかは規定していない。じっさい書かれていないものがほとんどで、中には『ケメコ』とか『二年女子』とか『I.H』とかイニシャルだけのとかも多かったし。
その短冊には『みなさんの友だち』と書いてある。
どうしたものか……
「これ、MITAKAに来てくれた同級生の人だよね……」
佳奈子が敵の癖玉をレシーブするように言う。
「いいんじゃないか、それくらい」
レシーブされたボールを敵コートに打ち込んだのはいつの間にか来ていた倉田先生だ。
「いいんですか?」
「ああ、文面にも思いやりがあるし、きみらもちゃんと考えてる。これでいいんじゃないか」
よし!
みんな小さくガッツポーズして、めでたく七夕の飾りつけを終えた。
「でも、明日から期末テストなんだから、早く帰って勉強しろよ」
「「「「「ハーーーイ(''◇'')ゞ!」」」」」
返事だけはいいわたしたちだったよ(^_^;)
もうちょっといいか……みんなで三本の笹を眺めていると、誰ともなく口ずさむ。
笹の葉さ~らさら 軒端に揺れ~る お星さ~まキ~ラキラ~(^^♪
歌っていると、他の生徒も集まって来て、フォークソング同好会の子がギターをもっていたもんで、期せずして『フォークの集い』になってしまう。
四時を過ぎたころに今度は担任の花園先生に怒られて、ようやく解散した。
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 猫又たち アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
- 宮田 博子(ロコ) 2年3組 クラスメート
- 辻本 たみ子 2年3組 副委員長
- 高峰 秀夫 2年3組 委員長
- 吉本 佳奈子 2年3組 保健委員 バレー部
- 横田 真知子 2年3組 リベラル系女子
- 加藤 高明(10円男) 留年してる同級生
- 藤田 勲 2年学年主任
- 先生たち 花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀 音楽:峰岸 教頭先生 倉田(生徒会顧問) 藤野先生(大浜高校)
- 須之内直美 証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
- 御神楽采女 結婚式場の巫女 正体は須世理姫
- 早乙女のお婆ちゃん 三軒隣りのお婆ちゃん
- 時司 徒 (いたる) お祖母ちゃんの妹
- その他の生徒たち 滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
- 灯台守の夫婦 平賀勲 平賀恵 二人とも直美の友人