大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・234『山海関の風』

2024-07-18 17:38:34 | 小説4
・234

『山海関の風』孫大人 




 秦皇島市 (チンファンダォ市 )の海岸に筋斗雲を停める。


 昨日立ち寄った虎山長城(丹東市)のさらに南西の地方都市アル。

 二百年ちょっと前までは、この秦皇島市の山海関が万里の長城の東端ということになっていたアル。
 大雑把に言うと中華と満州の境目アルが、時代によって境目は移動するので、はっきり境目とは言えないアル。言えないアルが、その昔、ここより東北を関東、南西を関内と言って大雑把に民族や文化の境目としたアル。

 中華が元気な時は、ずっと北の豆満江のあたり、マンチュリア全部を中華言うてたアル。その時は万里の長城の東端は虎山長城のさらに北にされてたアル。

 時代によっても、人によっても、その境目の認識は変化するアル。だから、国家の大乱となった時は見極めが肝心アル。

 この孫悟兵、そこを見極めて動くアル。そことは人の気アル。

 マンチュリアと国境近辺の人間がどっち向いて、何を望んでいるかを見極めて、身の処し方決めるアル。

 無理な動きは、たとえ短期的に成功しても長続きはしないアル。

 国家の興亡や縮小拡大の繰り返しは、この大陸では、いわば大陸の生理アル。運命と言ってもいいアル。

 生理や運命であるならば、その秋(とき)の犠牲を小さくするのが英雄の道アル。

 この孫悟兵、けして英雄の器ないアル。せいぜい冒険者か勇者のレベルアル。

 しかし、仮にも先祖伝来の大人の二つ名を名乗る身。先祖に恥じぬ選択するアル!

「さすがに騒めいてるね……」

 え(''◇'')?

 一瞬見透かされたか思ったアル。いまの想いは、ちょっと青臭いアル。

 東鈴は屋台やキッチンカーには目もくれないで海に張り出した長城の果てに歩いていくアル。

 ザザザ~~~ ザップ~~ン

「ここから西の果て嘉峪関までの6000キロ余りが万里の長城なのね」

「21196キロあるよ」

 ザ ザザザーーー

 ズゴォォォーーー

 波音に混じって、そうとは断じたくない飛翔音がするアル、方角は北の方アル!

 ズギューーーーン

 違う飛翔音が南の方からもするアル!

 南の飛翔音は頭上を飛び越えて、虎山長城(丹東市)のあたりも飛び越えて、奉天のあたりで北からの飛翔体とぶつかって火花が散ったアル。

 遅れて奉天からも飛翔体が上がっているのが見えたアルが、目標を喪失して次々に自爆するアル。

 事態は悟兵の想像を超えて動いているアル。

 北方の、おそらくはロシアのミサイルがマンチュリアを狙って傲然と飛来し、それを漢明の迎撃ミサイルが撃ち落としたアル。

 マンチュリアの迎撃ミサイルは結果が出た後に上空に達して虚しく自爆したアル。

 地上の人間たちは、この孫悟兵も含めてバカみたいに口を開けてミサイルたちの残した煙を見るだけアル。

 ビョォーーー

 前触れもなく北の風が吹いてきて、東鈴の長い髪を嬲っていく。数瞬白いうなじが露わになって、ちょっとドキッとしたアル。

 シュポン……と音がして、東鈴の髪は一瞬で引っ込んでショートになったアル!

「しばらくショートでいくわ」

「ちょっとシュールアル(^_^;)」

「なに言ってるの、悟兵もさっさと戦闘態勢になりなさいな(ㆆ_ㆆ) 」

 
 三白眼のジト目で言うのは止めて欲しいアル……

 

☆彡この章の主な登場人物
  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑月面軍三等軍曹、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑幕府北町奉行所与力 扶桑政府老中穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     ピタゴラス診療所女医、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑科学研究所博士、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵             天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任 じつは山野勘十郎 月で死亡
  • 扶桑 道隆              扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)     将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)          地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)           児玉元帥の友人 乳母の老婆婆の小鈴に頭が上がらない JR東と西のオーナー       
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)          西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)          西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)           西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)    今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官 PI後 王春華のボディ
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書 JR西のボディー 劉宏にPI
  • 胡 盛媛 中尉           胡盛徳大佐の養女
  • 朱 元尚 大佐           ホトケノザ採掘基地の責任者 胡盛徳大佐の部下だった
 ※ 事項
  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス
  • 奥の院      扶桑城啓林の奥にある祖廟
 
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REオフステージ(惣堀高校演劇部)093・演劇をやってこその演劇部よ!

2024-07-18 06:50:10 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
093・演劇をやってこその演劇部よ! 





 演劇なんてやったことのない演劇部!


 だもんだから、いざ、文化祭でやるとなったら、なにをしていいか分からない。

 知識も経験もないし、必ず途中で寝てしまう学校の芸術鑑賞以外で演劇なんて観たこともない。

 それで図書室にいくことにした。

「演劇の台本て戯曲っていうんだねぇ」

 机の上に「なんとか戯曲大全」とか「かんとか戯曲集」を積み上げて感心する。

「それって知らなさすぎ(´¬_¬) 」

 一応演劇をやっていたころの演劇部を知っている須磨先輩がジト目を向けてくる。

「でも、今から読むのんかぁ……」

 啓介先輩が、早くもうんざりしたような顔でページをめくる。

「これ、手でめくりなさい」

「すんません……」

 啓介先輩は、シャーペンの尻でパラパラやっているのだ。

「あっちはどうなんだろ……」

 パソコンコーナーで検索中のミリーとミッキーに目を向ける。

 視線を感じてミリー先輩が車いすを転がしてくる。

「条件悪すぎだよ」

「そうなん?」

「たった五人でさぁ、たった一か月でやるのって無理やわぁ」

「そない言うてもなあ……生徒会には義理があるしなあ」
 
 それは同感、生徒会というか美晴先輩に借りがある。

 相当無理を言ったり無茶をしたけど、演劇部の存続を認められたのは美晴先輩のおかげだ。二階の新部室を斡旋してくれたのも美晴先輩だしね。

「だから、文化祭で演劇してくれる?」

 断れないわよね……将来的にも無為徒食の演劇部を存続させるには、美晴先輩のアドバイスは正しい。

「『高校演劇』で検索してたらね、演劇をやろうという者は、やりたい芝居の五本や十本はレパートリー持ってなきゃだめだって」

 時間と人数以外にも問題がある……みんなは言わないけどね。

 わたしとミリー先輩は車いすでしょ……ただでも少人数なのに、ミリー先輩は本番までには治るかもしれないけど。

 黒柳徹子さんは車いすでやってたけど、そうそう上手くいかないと思う。

 ううん、元々舞台に出ようなんて気持ちは無いけど、裏方やるにしてもね……現実的には厳しいと思うよ。

 パソコンコーナーが賑やかになってる。

 ミッキーの横に八重桜……いや、敷島先生が寄ってきてなんか喋ってるよ。

「あ、通訳しなくっちゃ」

 ミリー先輩が車いすを向けるのと敷島先生がハイテンションでこっちを向くのが同時だった。

「演劇をやってこその演劇部よぉ(◝ ϖ ◜) 」

 明石家さんまを女にしたような満面の笑みでテーブルに近づいてきた。

「文化祭でやるんだから、長い芝居はだめ。出し物がいっぱいあるんだからね、観客は素人ばかりだから、予備知識の有る出し物が一番よ! 多少台詞が聞こえなくても、ああ、このシーンはこういうことを言ってるんだって分かるものがグッド。あなたたちにも予備知識があれば稽古もやりやすいでしょ!」

 好きな先生じゃないけど、さすがは文芸部顧問、言っていることには説得力がある。

「なんか適当な芝居あるんですか?」

「あるわよ!」

 さすがは図書室の主、まるでスケートを履いているようにスイスイ机や書架の間を滑っていくと一冊の本を持ってきた。

「これよ、これ!」

 バサッと置かれた本に須磨先輩の頭に閃きの電球が点いた。

「そうか『夕鶴』ならピッタリだ!」

「「「夕鶴……?」」」

「鶴の恩返しよ!」

「「「「あ、あーーーー(°ロ°(°ロ°(°ロ°(°ロ° ) !」」」」

 全員の脳みそに共通理解の電球が灯った。

「それで、主人公は沢村さん、あなたがおやんなさい!」

「え、ええ( ゚Д゚)!?」


 心臓が停まるんじゃないかと思った。



☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
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