大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・113『マック一号店!』

2024-07-20 11:02:29 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
113『マック一号店!』   




 終業式が終わるや否や学校を飛び出して電車に乗った。

 ロコを先頭に、巡(わたし)・たみ子・真知子の四人。

 佳奈子は部活のために不参加。仕方がない、女バレの部長だしね。

 なんで、佳奈子を放ってまで電車に乗ったか? 去年は仲良く万博に行ったのにね。


 マクドですよ! マクド!


 マクドの一号店が東京で開店するんだ。

 令和女子のわたしは、マクドなんて珍しくもなんともないんだけど、昭和46年の日本ではちょっとした事件。最近の事件ではトランプさんが撃たれたぐらいのインパクトがあるかもしれない。

 ロコが言い出した時は――なんでマクドごときでハイテンション?――と思ったけど、みんなの(主にロコの)ワクワクが伝染って、わたしも遠足に行くみたいにウキウキしている。

 
 オオ……!


 銀座ですよ、銀座!

 それも四丁目の交差点、ゴジラに何度壊されたか分からない、世界で一番タフな服部時計店の時計塔がなんともゆかしい。
 その服部時計店の向かいにあるのが銀座三越、銀座三越って云えば、この70年代じゃ日本の百貨店のセレブでトップなんだろうねえ。そのくらいの知識はあるよ。

 その昭和のセレブリィティーの一階、銀座の大通りに面して、こればかりは令和の時代と変わらぬマックの『M』のマーク。お店の間口はツースパン分もあって――どうだ、これがマクドナルドだ!――という、10円男的に言うところのアメリカ帝国主義の圧を感じるよ!

「……歩行者天国って、マクドナルドに合わせたのかなあ」

「いいえ、銀座の歩行者天国は去年の8月に新宿、池袋、浅草と並んで始められたんです。たぶん、時期的に言ってタイアップしてるのかもしれません」

 たみ子の疑問にあっさり答えるロコ。

 正直真夏のホコ天は――熱中症に注意!――なんだけど、去年の万博で慣れたわたしたちは屁でもない。

「中で食べてみたいですけど、これは外ですねえ」

 カウンターのオーダー窓口は六つ、それほど待たなくてもいけるんだけど、初日とあって店内は満席。外は熱いけど、マックのも含めてパラソルの席がいっぱいあるので、とりあえずは問題なし。

 おお、ビッグマック200円! マックフライポテト70円

 ドリンクと合わせてもワンコインでお釣りがくる! この時代は五百円札だけどね(^_^;)

 パラソル席をとるのに魔法を使わなければならないかと思ったけど、万博で鍛えたスキルで椅子を運んできて、すでに三人の先客がいたところに割り込む。

 先客の三人もわたしたちも汗みずくなんだけど、みんな元気にニコニコムシャムシャ。

 ああ、この元気にムシャムシャが高度経済成長の原動力なんだろうなあと思う。

 そうなんだよ、仲間の三人も含め、このホコ天に来てる人たちは、お母さん……ううん、お祖母ちゃんの世代だよ。この元気さというかオーラは気持ちいい。

 わたしは、こういうの予感してたから秘密兵器を用意してきた!

「ねえ、写真撮ろうよ!」

 おお、いいねえ(^▽^)!

 みんな賛成して、カバンから使い捨てカメラを出す。

 スマホを出すわけにはいかないからね。

「じゃ、撮るよ!」

 カシャ

 連写は効かないので、その都度ダイヤルをジーコジーコと回す。

 このアナログ感が、けっこういい。

「よかったら、シャッターおしましょうか?」

 先客のトンボ眼鏡さんが嬉しいことを言ってくれる。

「あ、すみません、助かります(^▽^)/」

 四人揃ってを二枚、一人ずつを一枚ずつ撮ってもらう。

「「「「どうもありがとうございました」」」」

 爽やかにお礼を言って「いいえいいえ」の笑顔を残して先客さん達は手を振って行った。このささやかな交流っていうか、ホコ天とマクド一号店に来た値打ちはあったと思うよ。

「でも、変わったカメラですねえ」

「え、ああ、ジュニア用の安物だから」

「レンズ付きフィルムって書いてありますねえ……」

「あ、現像できたら見せるからねえ(^_^;)」

 ちょっとふんだくるようにしてカメラを回収。

 家に帰ってから調べると、使い捨てカメラは80年代にならないと出現しないみたいだった……(''◇'')。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹        
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  


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REオフステージ(惣堀高校演劇部)095・学食の中二階

2024-07-20 06:43:36 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
095・学食の中二階 






 うちの学食には中二階がある。


 学食の半分はガラス張りの吹き抜けになっていて気分がいい。

 残りの半分が中二階と二階部分。二階部分は普段は締め切られている同窓会館。

 でもって同窓会館がある東側以外の三方は天井までのガラス張りになっていて、明るくて雰囲気がいい。

 他校の学食は体育館の一階部分だったり、校舎の付けたし部分だったりで、食堂というよりは餌場。

 うちは「ちょっとさびれた」という枕詞がつくけどリゾートのレストラン風。

 六年目の三年生なので、食堂を利用するときは、この中二階に陣取っている。

 一般の生徒に混じると気を使うし使われる。そんなのやだしね。

 それに、中二階だと下のフロアが鳥瞰できる。

 みんな腹ペコだし、列に並んだり席の確保に頭一杯だから、中二階に視線を向けられることも少ない。

 なんちゅうか、学校に住み着いた猫が屋根裏から睥睨しているような感じ……だと千歳とかは言うのだ。

 猫に例えられたことよりも、中二階の超留年生に気づいていることが面白い。

 ガンバローーー!

 壁一枚隣の同窓会館から鬨の声がした。

 四時間目から組合の先生たちが会議をやっているのだ。選挙が公示されたから、例によって公には言えない選挙運動の話だ。

 勤務時間中に組合活動をやることも政治活動をやることも御法度のはずなんだけどね。

 ま、いいんだけども、部屋を出て中二階の私を見つけてギョッとしたような顔をするのはやめてほしい。

 わたしは化け物でもスパイでもないんだからさ。

 あ……

 下のフロアで千歳がボンヤリしている。

 車いすで食堂に来ても、生徒たちは自然に受け入れている。

 みんな幼稚園や保育所のころから障害を持った子たちと生活している。だから、自然と互いに溶け込んでいるんだ。

 かさ張る車いすがいっしょに居ても嫌な顔はしないし、逆に過剰に構ったりもしない。

 昼時の食堂というのは――昼飯を食うのだ!――というパッションが無ければ列に入れないし、ボンヤリしていては食いッパグレる。

 なにボンヤリしてんのよ?

 目立たぬようにフロアに下り、真横で千歳に声を掛けた。

「あ、須磨先輩……」

 え……?

 振り向いた千歳の目には涙が滲んでいた。

「Bランチでいいか?」

 涙には気づかないふりで売り切れの確率が低いBランチを提案、ろくに返事も聞かず、Bランチの列に並んだ。

 気を取り直した千歳は席を確保して待っていた。

「すみません、中二階にはいけませんから」

 バリアフリーの進んだ学校だけど、さすがに食堂の中二階までは及んでいない。

「ドンマイドンマイ、とりあえず食べよ」

 すでにAランチを食べた後だけど、いっしょに食べれば心も開くだろうと並んでBランチを食べる。

 いつもなら――もう食べたんじゃないですか?――くらい聞いてくるんだけど、千歳はボソボソと食べている。

 ご飯を半分残したところで口を開いた。

「わたし……文化祭の舞台には立ちたくないんです」

「え、なんで(;¬¬)?」

 危うく唐揚げを落っことすところだった。

「わたしが出たら……ポルノになっちゃいます」

「ポ、ポルノ!?」


 ポトリ。


 危機一髪だった唐揚げを落としてしまった(;'∀')。
 


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)
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