やくもあやかし物語 2
「これは野分じゃ!」
織姫さんからもらった花を傘にして、ポケットから目だけを出した御息所が警告するよ。
「ノワキとはなんだあああああああああああ((((;゚Д゚))))」
プルプルプルプルプルプル
強い風に長い耳がはためき、その振動で語尾を振るわせながらネルが質問する。
わたしも分かってないけど(^_^;)。
「た、台風とかストームのことじゃ! 風が野原の草を吹き分けるように吹きすさぶから野分と言うんじゃ!」
「な、な、なるほどなななななななな((((^△^;))))」
「ネル、耳を押えよ、声が震えて聞き取りにくいぞよ」
「ご、ごごごごめんんんん(耳を押える)……こんどは聞こえにくくなった(^_^;)」
「ねえ、風が道を隠してしまったよ」
野分で倒された草が細い道を隠してしまい、別の道が風に吹き分けられて現れてきたよ。
「なにか妖に誘われているのかもしれぬ、心してまいれ」
「なんだか、古典的な喋り方になっていないか、御息所?」
「あ、この野原の妖気のせいかもしれぬ。しばらく寝るぞよ」
ポケットの中に引っ込み、花でふたをしてしまったよ。
「わたしが前を行くから、やくもは飛ばされないようにして付いてこい」
「う、うん、ありがとう」
ビョォーーービュゥーーーーーブゥォーーーーー
めちゃめちゃに風が吹く中、その風の向きが変わる度に道も変わって、それでもネルが盾になってくれて、風が弱まるところまでたどり着けた。風が止んで定まった道は二股に分かれた三叉路だよ。
「うう、なんとかなったな……でも、道はこれでいいのか、風の吹くままに進んできただけだぞ」
「ど、どうだろ(;'∀')?」
「二股に分かれてる、どっちに行けばいいんだぁ?」
野分が吹きすさんでいるうちは果敢に進んでたネルだけど、穏やかに道が定まってしまうと、わたしといっしょに立ちすくんでしまう。
ネルのいいところは、逆境に陥っても果敢に進める勇気と力だけども、こういうAかBかという選択を迫られることには弱いみたい。
いや、いっしょにビビってるわたしも人のことは言えないんだけどね。
シャララ~~ン
魔法少女が出現するようなエフェクトがしたかと思うと、三叉路の股のところに古代服の少女が現れた!
額田王を少し若くして、ちょっぴりコケティッシュにした感じに、間人皇女(はしひとのひめみこ)に違いないと思ったよ!
☆彡主な登場人物
- やくも 斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
- ネル コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
- ヨリコ王女 ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
- メグ・キャリバーン 教頭先生
- カーナボン卿 校長先生
- 酒井 詩 コトハ 聴講生
- 同級生たち アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
- 先生たち マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
- あやかしたち デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫