大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語2・062『野分の果て』

2024-07-26 12:08:03 | カントリーロード
くもやかし物語 2
062『野分の果て』 




「これは野分じゃ!」

 織姫さんからもらった花を傘にして、ポケットから目だけを出した御息所が警告するよ。

「ノワキとはなんだあああああああああああ((((;゚Д゚))))」

 プルプルプルプルプルプル

 強い風に長い耳がはためき、その振動で語尾を振るわせながらネルが質問する。

 わたしも分かってないけど(^_^;)。

「た、台風とかストームのことじゃ! 風が野原の草を吹き分けるように吹きすさぶから野分と言うんじゃ!」

「な、な、なるほどなななななななな((((^△^;))))」

「ネル、耳を押えよ、声が震えて聞き取りにくいぞよ」

「ご、ごごごごめんんんん(耳を押える)……こんどは聞こえにくくなった(^_^;)」

「ねえ、風が道を隠してしまったよ」

 野分で倒された草が細い道を隠してしまい、別の道が風に吹き分けられて現れてきたよ。

「なにか妖に誘われているのかもしれぬ、心してまいれ」

「なんだか、古典的な喋り方になっていないか、御息所?」

「あ、この野原の妖気のせいかもしれぬ。しばらく寝るぞよ」

 ポケットの中に引っ込み、花でふたをしてしまったよ。

「わたしが前を行くから、やくもは飛ばされないようにして付いてこい」

「う、うん、ありがとう」

 ビョォーーービュゥーーーーーブゥォーーーーー

 めちゃめちゃに風が吹く中、その風の向きが変わる度に道も変わって、それでもネルが盾になってくれて、風が弱まるところまでたどり着けた。風が止んで定まった道は二股に分かれた三叉路だよ。

「うう、なんとかなったな……でも、道はこれでいいのか、風の吹くままに進んできただけだぞ」

「ど、どうだろ(;'∀')?」

「二股に分かれてる、どっちに行けばいいんだぁ?」

 野分が吹きすさんでいるうちは果敢に進んでたネルだけど、穏やかに道が定まってしまうと、わたしといっしょに立ちすくんでしまう。

 ネルのいいところは、逆境に陥っても果敢に進める勇気と力だけども、こういうAかBかという選択を迫られることには弱いみたい。

 いや、いっしょにビビってるわたしも人のことは言えないんだけどね。

 シャララ~~ン

 魔法少女が出現するようなエフェクトがしたかと思うと、三叉路の股のところに古代服の少女が現れた!

 額田王を少し若くして、ちょっぴりコケティッシュにした感じに、間人皇女(はしひとのひめみこ)に違いないと思ったよ!

 

☆彡主な登場人物 
  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生 ミチビキ鉛筆、おもいやり等が武器
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド メイソン・ヒル オリビア・トンプソン ロージー・エドワーズ
  • 先生たち       マッコイ(言語学) ソミア(変換魔法) フローレンス(保健室)
  • あやかしたち     デラシネ 六条御息所 ティターニア オーベロン 三方 少彦名 朝飯前のラビリンス くわせもの  ブラウニー(家事妖精) プロセス(プロセスティック=義手・義足の妖) 額田王 織姫
 


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REオフステージ(惣堀高校演劇部)101・こんなに痩せてしまって……

2024-07-26 06:48:30 | 小説7
REオフステージ (惣堀高校演劇部)
101・こんなに痩せてしまって…… 





 おもわずライザップをググってしもた。


 そやかて、今の体形で『夕鶴』のヒロインをやる自信が無かったから。

 交換留学生のわたしとミッキーを使おうやなんて、もうビビってしまう。そら、足かけ4年も日本に居ったら日常会話はペラペラ。元々子どものころからお隣りの日系バアチャンの大阪弁に馴染んでたんで、言葉についての苦労は無い。

 せやけどもね、舞台で、たとえ学校の文化祭と言うても、スポットライトを浴びることは別物なんよ。

 せやけどもね……。

 元来がミーハーのアメリカ人やから直観的にオモシロイ!と思ってしまうんよ!

 思ってしまうと、平均的日本人の倍は豊かな表情筋が喜びの表情を作ってしまうんよ。

 で、しっかり台本を読んでみた。


 で、あ~~~~~~~~~(-_-;)なんよ。


 鶴の化身であるヒロインのつうは、与ひょうに頼まれるままに『鶴の千羽織』を織る、自分の体の羽毛を抜いてね。

 で、やっと織り終って一言こう言うんや。

「お~こんなに痩せてしまって……」

 ここ絶対笑われる!


 お風呂に入って、すんごく久しぶりに自分の裸を鏡に映してみたんよ。

 けしてデブっていうほどやないけど、骨格的にガッチリしてる。肩の肉とか! オケツから太ももにかけての線とか! 二の腕のプヨプヨとか!


 で、風呂上りに思わずライザップをググってしまった(^_^;)。


 とても文化祭までの期間に痩せることはでけへん。

 こんなことなら、出し物を『三匹の子豚』かなんかにしてほしいって思ったわよ。

 え、あれなら最初からプヨプヨのブタやろて?

 最初からブタならええんよ、プヨプヨのプニプニでも人は笑わへんわよ。
 
 せやけどさ、プニプニの鶴ってありえへんでしょ!

 まして千羽織を織ったあとで「こんなに痩せてしまって」なんて、もうソッコー吉本の世界や!

 それに、元々の火付け役で、わたしをヒロインにしようって言いだして演出までやろうかっちゅう八重桜先生はゴリゴリのコミュニスト。反論でもしようもんなら、民主集中制やとか党の決定やとか言い出して梃子でも動かへん感じ。


 そんなチョーブルーな気持ちで最初の稽古に臨んだわけ。


「じゃ、今日から楽しく稽古しましょう。やってる者が楽しくなきゃ観てる人は絶対楽しくないからね、オッケー!?」

「「「「「「ハイ( ๑•̀o•́๑ ) !」」」」」

「……ハイ(-_-;)」

 みんな元気に返事する中、わたしだけが蚊の泣くような返事しかでけへん。

「あら、どうしたの?」

 さっそく聞きとがめられてしまう。

「え、あ、いや……『こんなに痩せてしまって……』に違和感ありまくりでぇ」

「ん?」

 するとみんなの視線が集中して、こころなしか――あ、そうだよね――と言われたような気がした。

 カマラ・ハリスの心臓を羨ましく思った。

「なんだ、そんなこと気にしてるの」

「せ、せやけど、重大事項なんです!」

「自意識過剰なんだと思うけど。そうね、気になるようなら……その台詞はカットしましょう」

「え?」

 十月革命のレーニンの演説写真からトリミングで消されたトロツキーを思い浮かべてしもた( ゚Д゚)。


☆彡 主な登場人物とあれこれ
  • 小山内啓介       演劇部部長
  • 沢村千歳        車いすの一年生  留美という姉がいる
  • ミリー         交換留学生 渡辺家に下宿
  • 松井須磨        停学6年目の留年生
  • 瀬戸内美春       生徒会副会長
  • ミッキー・ドナルド   サンフランシスコの高校生
  • シンディ―       サンフランシスコの高校生
  • 生徒たち        セーヤン(情報部) トラヤン 生徒会長 谷口
  • 先生たち        姫ちゃん 八重桜(敷島) 松平(生徒会顧問) 朝倉(須磨の元同級生)
  • 惣堀商店街       ハイス薬局(ハゲの店主と女房のエリヨ) ケメコ(そうほり屋の娘)


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