鳴かぬなら 信長転生記
「桶狭間じゃないんだから、一人だけでかっこつけないでよね!」
「市……」
「違ったか、その敦盛は本能寺っぽい……兄ちゃん、死ぬよ」
「リュドミラの狙撃も通じず、武蔵の刀も折れた……最後の決着は俺がつける!」
「武蔵の刀は二刀流、それでも敵わなかった。あんたの刀だけじゃ間に合わないっしょ!」
「市……」
「市もいっしょにいく!」
ゴロゴロゴロ……ゴロゴロゴロ……
魔人と化した曹操の怒りか、兄妹二人の想いに感応したか、武漢の空に蟠った暗雲は急速に密度を増し、稲光が縦横に走る。
ガラガラガラ……ピッシャーーーーン!!
間近に落雷!
キャーー! ウワーー! グワーー!!
ほとんど灰燼に帰した武漢のあちこちから悲鳴が上がり、大魔神の曹操でさえ、片膝ついたまま右手で顔を庇う。
ウォーーーーーーン ワォーーーーーーン ユォーーーーーーン
叫ぶとも歌うともオノマトペともつかぬ倍音が頭上で響く。
あれは!?
顔を上げると、城壁の上、たった今まで茶姫・孔明・大橋が芭蕉扇を振るっていたところに三面六臂の魔人が立っている。
身の丈は大魔神には及ばないが人の三倍は優にあるだろう。三面も、それぞれ祈るような堪えるような静かな怒りと決意が漲り、緩やかに回転し、曹操の魔人と向き合ったところで瞬間停止して睨みつける。
一対の手で槍を構え、もう一対の手には弓と矢を、もう一対の手には武蔵を倣うように双剣を持している。
シャリン……
これを敵認定した大魔神が、これも虚空より両刃の大剣を取り出し正眼に構え、中空に浮揚、阿修羅を誘うように退りながら構えを開いた。
その刹那!
グゥギィーーーーン!!
金属音のような叫びをあげて阿修羅が自身一発の弾丸になったように一直線に跳躍した!
チュィーン! ガキーン! シャリーン! グキーン! ゴキーン!
宙を穿つように剣戟の音が響くが、その姿は残像として刹那目に留まるだけ。地上の我々は、その剣戟と残像を追うばかりで、この突然の戦いの訳を知ることすらできない。
シャリーン! グキーン! ゴキーン! チュィーン! ガキーン! シャリーン! グキーン! ゴキーン! チュィーン! チュイーン! ガキーン! シャリーン! グキーン! ゴキーン! チュインチュイン! グガキーン……!
え……止んだ。
ボタボタボタボタ!!
止んだと思ったとたん、広場の上空から夥しい血が滝のように流れ落ちてきた。
ドチャ!!
続いてクジラほどの血まみれ肉が落ちてきた。塊の先は五つに分かれてヒクついている……大魔神の腕だ!
その凄惨さに、下界の者たちが怖気を振るっていると、阿修羅が暗雲の中から血みどろの姿で現れ、城壁に避難した俺たちに正対する高さまで降りて制止した……。
☆彡 主な登場人物
- 織田 信長 本能寺の変で討ち取られて転生 ニイ(三国志での偽名)
- 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
- 織田 市 信長の妹 シイ(三国志での偽名)
- 平手 美姫 信長のクラス担任
- 武田 信玄 同級生
- 上杉 謙信 同級生 配下に上杉四天王(直江兼続・柿崎景家・宇佐美定満・甘粕景持 )
- 古田 織部 茶華道部の眼鏡っ子 越後屋(三国志での偽名)
- 宮本 武蔵 孤高の剣聖
- 二宮 忠八 市の友だち 紙飛行機の神さま
- 雑賀 孫一 クラスメート
- 松平 元康 クラスメート 後の徳川家康
- リュドミラ 旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ 劉度(三国志での偽名)
- 今川 義元 学院生徒会長
- 坂本 乙女 学園生徒会長
- 曹茶姫 魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
- 諸葛茶孔明 漢の軍師兼丞相
- 大橋紅茶妃 呉の孫策妃 コウちゃん
- 孫権 呉王孫策の弟 大橋の義弟
- 天照大神 御山の御祭神 弟に素戔嗚 部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主