RE・かの世界この世界
北門は南側の正門ほどの大きさではないが賑わいは比べ物にならない。
城塞都市の日常生活をまかなう物資を積んだ大小さまざまのトラックが行き来し、商売や仕事で出入りする人々がバスや車、あるいはバイク、あるいは荷車や自転車、近隣の者は行商の大荷物を背負って行き来している。
道の中央二車線は軍用車優先で、軍用のハーフトラックや装甲車、戦車が通る。中でも快速で軽快な二号戦車が半分近くを占めていて、我々の二号戦車も、その中に混じっている。
「なるほど、これなら目立たないな」
そう呟くと、タングリスがクスリと笑う。
「目立たないもなにも、われわれ四人は正規の警備兵として登録されています。遊撃警備隊に属しているので、どこをどう通ろうと怪しまれません」
「でも、こんな子供みたいなの連れていたんじゃ、いくら警備隊のコスを着ていてもダメだろう」
「珍しくはありません、ほら、前からやって来る部隊……」
タングリスが示したペリスコープを覗くと、警備任務から帰還してくる二号の車列が見える。数えて五両の二号は乗員たちが車外に出て、砲塔に腰掛けたり、道具入れの上に腰掛けたりしてくつろいでいる。
そのくつろいでいる兵士の半分は女性であったり少年少女であったりする。
「ここからは言葉を改めます。軍服を着ている手前、こちらが上官ですので」
「あ、ああ、もっともなことだね。やることがあったら、遠慮せずに命じてくれ」
「では、さっそく。外に出て手を振ってやれ」
さっそく口調が変わって、ちょっとたじろぐ(^_^;)。
「「え、いいのか!?」」
ブリとケイトは気にも留めずに声が弾む。タングリスがハッタリをかまして「人目についてはいけません」と言っていたので、北門を出るまでは二号の狭い車内で辛抱していた。その開放感の方が大きいようだ。
タングリスの意地悪にはには訳がある。
リュック二つ分のおやつを諦めきれないブリが、タングニョーストに取り上げられたお菓子を魔法で取り戻してゲペックカステンの中に潜ませているのだ。
二号の履帯ガードの上には左右共に大きなゲペックカステンという道具入れが付いている。ゲペックカステンは飾りではなく、戦車のメンテに必要な器具や野営の道具などが入っていて、余計なものを入る余裕はない。
そこに無理やりお菓子を詰め込んだもので、一部の道具は下ろしてしまった。それで、タングリスは意地悪を言ったのだ。
「プハー! やっぱ、外の空気はおいしいぞ!」
砲塔に腰かけて伸びをするブリに、すれ違う二号の乗員たちが手を振る。
「任務ごくろうさま!」
「あんたら、これからか、ごくろうさん!」
元気よくエールの交換。だれも、ブリがブリュンヒルデ姫だとは気づかない。やっぱ、トール元帥がュンヒルデを取ってしまった効果は大きいようだ。
しばらく行くと、一両の二号戦車が路肩に停まっていた。
「すまん、ちょっとツールを貸してくれんか」
腕まくりして油まみれになった車長の軍曹が声をかけてきた。
「ここにきてエンコかい?」
「ああ、だましだまし来たんだが、北門の目前でこれだ」
「レッカーを呼べばあ」
ブリが、なにごとかを予感してアドバイス。
「それは最後の手段だ、レッカー呼んだら、報告とか始末書が大変だからな」
「……(#・∀・#)」
ブリは汗が出てきた。メンテツールはあらかた下ろしてしまっている。
ケペックカステンを開けてしまえば大量のおやつがバレてしまう!
ヤ、ヤバイ……ブリの心の声が聞こえてくるようだった。
☆ ステータス
- HP:250 MP:150 属性:剣士(テルキ) 弓兵(ケイト)
- 持ち物:ポーション・5 マップ:1 金の針:2 所持金:1000ギル
- 装備:トールソード 剣士の装備レベル1 トールボウ 弓兵の装備レベル1
☆ 主な登場人物
- テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
- ケイト(小山内健人) 今度の世界の照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトと変えられる
- ブリ ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
- タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
- タングニョ-スト トール元帥の副官 タングリスと共にブリの世話係
- トール元帥 主神オーディンの将軍
- ペギー 峠の万屋
- 二宮冴子 二年生、不幸な事故で光子に殺される
- 中臣美空 三年生、セミロングの『かの世部』部長
- 志村時美 三年生、ポニテの『かの世部』副部長