学校からアンティーク葛城まで、スタスタと美姫は歩いてきたんだ。だから染み込んだ日光も発散した十七歳女のフェロモンも、いつもの数倍で、同性のあたしでもタジロイデしまう。いや、あたしが、長期の引きこもりで、そういう外の気配に過敏になっているのかもしれない。
「それって、昨日の野暮用の続きなんでしょ?」
「うん、分かる?」
「眉間の皴が深すぎるもん」
「え、ほんま!?」
美姫は体を捻って、机の上の鏡に顔を写し、両手で顔をゴシゴシこする。
「で、なにがあったのよさ?」
「まずは、皴を伸ばしてから!」
「ごもっとも」
「うん、分かる?」
「眉間の皴が深すぎるもん」
「え、ほんま!?」
美姫は体を捻って、机の上の鏡に顔を写し、両手で顔をゴシゴシこする。
「で、なにがあったのよさ?」
「まずは、皴を伸ばしてから!」
「ごもっとも」
十七歳の皴なんて、気持ちを切り替えれば一瞬で消える。美姫は顔をこすりながら気持ちを切り替えているんだ。あたしはお茶を入れにいく。
「演劇部の再建話を潰してきた」
お茶請けの海老センをボリッと齧って、美姫は切り出した。
「演劇部の再建話を潰してきた」
お茶請けの海老センをボリッと齧って、美姫は切り出した。
「演劇部って、とっくに潰れてたんじゃないの?」
「それが、またぞろね……顧問が張りきってしもて……パソコン触ってもええ?」
「え、あ、うん」
美姫は慣れた手つきで、桃子のキーボードを叩いた。K高校演劇部のページが出てきた。
「おー、ホームページとかあるんだ」
「すごい演劇部に見えるでしょ?」
「うん……ちゃんと更新してるじゃない」
「この二か月は活動してへんねんよ」
「……あ、ほかの学校のことばっかり」
「だって、活動してないんやもん。今度もね、他のクラブと兼業してるもんばっかりで……おついでみたいにやって、失敗してきてんのにね。その反省も無くおんなじやり方……顧問の見栄や」
スクロールしていた美姫の指が停まった。
「え……演劇部飛躍の誓い?」
今日付けの更新で「演劇部をさらに発展させようと、部員一同で誓い合いました!」と、十枚ほどの写真付きで出ている。写真はどれも二十人以上の生徒が写っている。
「これ……演劇部に関係ない生徒ばっかや」
「なになに……あ、アハハ、なるほど」
笑ってしまった。写真の下には『演劇部を応援してくれる皆さん!』と小さく書いてある。
「……ありがと。あたしブロックされてて、このページ見られへんのよね」
「せやからね……」
あとの言葉を飲み込み、小さくため息をついて、美姫はK高演劇部のページを閉じた。美姫からは、もう日向の匂いはしなくなっていた。
「さ、たこ焼き食べに行こうよ。今日はおごるからさ!」
「やったー! 持つべきものは里奈さまやなあ!」
美姫は元気に胸を張って……天井を向いたまま言った。
顔を下げたらこぼれるんだ……涙が。
「それが、またぞろね……顧問が張りきってしもて……パソコン触ってもええ?」
「え、あ、うん」
美姫は慣れた手つきで、桃子のキーボードを叩いた。K高校演劇部のページが出てきた。
「おー、ホームページとかあるんだ」
「すごい演劇部に見えるでしょ?」
「うん……ちゃんと更新してるじゃない」
「この二か月は活動してへんねんよ」
「……あ、ほかの学校のことばっかり」
「だって、活動してないんやもん。今度もね、他のクラブと兼業してるもんばっかりで……おついでみたいにやって、失敗してきてんのにね。その反省も無くおんなじやり方……顧問の見栄や」
スクロールしていた美姫の指が停まった。
「え……演劇部飛躍の誓い?」
今日付けの更新で「演劇部をさらに発展させようと、部員一同で誓い合いました!」と、十枚ほどの写真付きで出ている。写真はどれも二十人以上の生徒が写っている。
「これ……演劇部に関係ない生徒ばっかや」
「なになに……あ、アハハ、なるほど」
笑ってしまった。写真の下には『演劇部を応援してくれる皆さん!』と小さく書いてある。
「……ありがと。あたしブロックされてて、このページ見られへんのよね」
「せやからね……」
あとの言葉を飲み込み、小さくため息をついて、美姫はK高演劇部のページを閉じた。美姫からは、もう日向の匂いはしなくなっていた。
「さ、たこ焼き食べに行こうよ。今日はおごるからさ!」
「やったー! 持つべきものは里奈さまやなあ!」
美姫は元気に胸を張って……天井を向いたまま言った。
顔を下げたらこぼれるんだ……涙が。