大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!69『病室の美優』

2024-11-22 07:27:50 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
69『病室の美優』 





「あら、渡瀬さん。今日はもう上がったんじゃないの?」

 病室に入ると、母親の美智子が驚きやがる。マユも驚いたけど顔には出さねえぞ。

 以前ロ-ザンヌで客として会ったときよりも十歳ほど老けて見えやがる。看病疲れなんだろうけどよ、自分が老けることで、少しでも娘の命をのばしてやりたい母心のようにも思えたぞ。

「ナースステーションにもどったら、このブローチ、ユーノー (Juno)って、ローマ神話の女性の結婚生活を守護する女神さまだって、ドクターに教わって……改めてお礼を……」

 そこまで言うと、渡瀬ナースは涙で言葉が詰まってしまった。マユ自身の心なのか、コピーしたナースの心の反応なのか分からなくなっちまう。

「お礼が言いたいのは、わたしの方よ……渡瀬さんは、わたしと同い年でしょ。その渡瀬さんが、結婚を間近にして、こんなにキラキラして……わたし、自分のことのように嬉しいのよ(⌒∇⌒)」

 やつれてはいるけど、美優は酸素マスクをずらし、透き通るような笑顔を返してきやがった。

「でも、疲れたんじゃない? この一週間、これにかかりっきりだったでしょ。わたし、よっぽど止めようと思ったんだけど、美優ちゃん、一生懸命だったし、お母さんも楽しそうに観てらっしゃったから……」

「うん……少しね。いよいよ酸素マスクなしじゃ、呼吸も苦しくなってきたけど。わたし……満足」

「『渡瀬さんにあげる』って言われたとき、びっくりしちゃった。そのとき、これがユーノーだって言われてたら、わたし泣いちゃってたわ」

「フフ……」

 美優は力無く、しかし、心から嬉しそうに笑ったぞ。

「そこまで言ったら、きっと渡瀬さん泣いちゃうだろうって……当たりだったわね。でも、もう泣かないで。美優もわたしも、渡瀬さんの笑顔が見たかったんだから」

「渡瀬さん……」

「うん?」

「側に来て……」

「え……?」

「目にきちゃったみたいなの……それ、彫り終えてから、物がが見えにくくって」
 
 美優は抗ガン剤を使わなかった。もう助からないことが分かってやがったし、抗ガン剤の副作用で髪の毛が抜けたりするのが嫌だったんだ。どうせ助からない命なら、少しでも女らしく逝きたかった。泣かせるやつだぜ。

「ほんと……渡瀬さん、ほんとにきれいよ。お母さんの言ってたこと、ホントだね」

「そうよ、恋の絶頂にいる女性は、一生で一番きれいになるのよ。もともと渡瀬さんはきれいな人だけどね」

「渡瀬さん……顔さわってもいい?」

「う、うん。いいわよ。こんなものでよければ、ご存分に」

 美優は、渡瀬ナースの頬に触れようと手を伸ばした……しかし、渡瀬ナースの顔の高さまで手を伸ばす力が出ない。

「……手が、上がらない(^_^;)」

「美優……!」

 母の美智子が、思わず立ち上がった。

「ちがうって、お母さん。ブローチ彫るのに腕使いすぎたから……」

 渡瀬ナースは美優の手を取って自分の頬に持っていきやがる。

「スベスベのツヤツヤだ……フフ、なんだか、赤ちゃんのお尻みたい……泣かないでよ渡瀬さん」

「う、うん」

「泣いたら、スベスベが分からなくなっちゃう……」

 美優は、一分足らずで渡瀬の顔から手を放した……もう、力が尽きてきやがるんだ。

 もう、明日からは寝たきりになりやがるだろ……渡瀬姿のマユは小悪魔の勘で、美優の命は一週間きっかりだとふんだぜ。

 マユは温かくも悲しい気持ちになっちまって、母の美智子にそっと言った。

「お母さん……」

「え……そんな薬があるの!?」

「ええ、命を延ばすことはできませんが、命をまっとうするまでは普通の元気でいられます」

「ぜひ、お願いします!」

「なにこそこそ話してんの……」

「「な、なんでも……!」」
 
 美智子と渡瀬ナースの声がそろったぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 美優       ローザンヌの娘
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・150『修学旅行・四日目・1(万博跡地を横に見て)』

2024-11-21 17:22:58 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
150『修学旅行・四日目・1(万博跡地を横に見て)』   




 四日目の最終日は大阪だ。


 基本的に去年といっしょらしいんだけど、去年は大阪を二日目に持ってきていた。

 理由は簡単、大阪万博があったから。

 つまり、三年生は修学旅行に万博を組み込んでいた。

 万博も終わったんだから、大阪でもないと思うんだけど、すぐに代案も浮かばないので、最終日に持ってきた以外はそのまんま。学校というのは、なかなか慣習というか前例というものは変えられないんだね。

 奈良を出発して程なく生駒山を超える。

 おおぉ……!

 意外に歓声が起こる。

 目の前に大阪平野が広がり、手の届きそうなところに大阪湾。その向こうに淡路島、その右手には青々と六甲山脈と神戸の街も霞んで見えて、けっこう雄大な景色だ。

 湘南の海も雄大で好きだけど、言ってみりゃ見渡す限り太平洋で水平線が見えるばかり。それが、この景色は日本地図でお馴染みの近畿地方の中心部が全部見えている。

「こんなに澄み渡って一望に見えるのはとても珍しいですねえ、きっとみなさんの普段の行動がいいからでしょう(^▽^)。左手に小さな森のように見えておりますのが仁徳天皇陵で、正面に見えております緑が大阪城で……」

 バスガイドさんも職業意識に目覚めて、数分で、このパノラマのおおよそをガイドしてくれる。

「……大阪の端から端まで見えてるんだねえ」

「大阪は、日本一狭い自治体ですからねぇ」

 真知子が呟いてロコが補足する。

 日本は狭い国だけど、山越えの峠道程度のところから全景が見える都府県は、そんなには無い。こっそりスマホで検索すると、二十何年かすると関空が出来て、日本一は香川県に譲るみたい。

 たまたまなのか、気をきかせたのか、バスは万博会場のど真ん中、万博会場とエキスポランドの間を通る。

「惜しかったですねぇ、去年でしたら本番に間に合いました。万博会場はほとんどのパビリオンが取り壊され、現在は、万博記念公園に生まれ変わるために工事中でございます。また、左側も一部設備をリニューアルして来年には新エキスポランドとして営業再開となっております。チラリと見えておりますのが五つのコースを持ち、その総延長は2340メートルと世界最長を誇りますジェットコースター、ダイダラザウルスでございます」

 オオ…………!

「その向こうは観覧車ワンダーホイール、高さは40メートルですが、この北摂の地では一番の高さを誇ります。また、右手に見えますのが太陽の塔、大屋根は撤去されますが、岡本太郎の作になりますこの塔は永久保存が決まっております」

 オオ…………!

「歓声は二種類ですねえ」

 ロコが声を潜める。

「二種類?」

「はい、じっさいに行って懐かしんでいるのと、行けなくて残念がってるのとです」

「あぁ、そうだねぇ……」

 行けなかった子には申し訳ないので、小さな声で賛意を表しておく。

 10円男が小学生みたいに腰を浮かせてガイドさんの言う通り、ロコが指摘した通りの表情で見ているのが可笑しかった。

 バスは、その10円男の残念を癒すように、宝塚ファミリーランドを目指すのだった。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!68『病院潜入』

2024-11-21 07:26:51 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
68『病院潜入』 





 病院の駐車場に入ると、マユはちょっとした魔法をかけた。

 黒羽Dがドアを閉める寸前に、ナビのスイッチを切り忘れるようにな。

「あれ、切り忘れか……」

 で、ナビのスイッチを切り直しているうちに、ポチの姿のマユは、後部座席から抜けだして監視カメラの位置を確認した。

 豆柴とはいえ病院に犬が入り込んだら騒ぎになるからな。カメラの死角を拾いながら、黒羽の後をつけていったぜ。

 夜間受付で、黒羽は父の病室を尋ねやがる。その瞬間、受付のガードマンは監視カメラのモニターから目を離す。その隙に、ロビーの自販機の横に隠れる。病室はガードマンが黒羽に教えていたのを覚えているんで問題はねえ。

 あとはポチの姿をなんとかするだけだ……そこに運良く日勤空けのナースが更衣室に向かうのに出くわしたぜ。

 マユはナースの後をつけ、更衣室でそのナースに化けた。むろんナース服は、そのナースが着替えたものを拝借した。ナースの胸には渡瀬の名札がついていたぞ。


 病室は五階にある。


 エレベーターに乗っているうちに化けたナースの記憶の断片が浮かび上がった……吉永美優という若い患者のことが気がかりなようだぜ。骨肉腫が術後に全身に転移し、もう手の打ちようが無え、余命は黒羽のジジイ同様に一週間ほど。美優はナースと同い年みてえだ。

「おめでとう……」

 そう言って、美優はナースにブローチをくれた。死期を悟った美優が、同い年のナースの幸せを願って、少しずつ病床で作ったものみてえだ。

「あげる。幸せになってね」

 特定の患者に感情移入はしねえのが、この職業の鉄則みてえだが、さすがに渡瀬ナースはグッときやがった。そのブローチが、まだポケットに入っていやがる。

 エレベーターが上昇しはじめたときにそのブローチを出してみた。ユーノー (Juno)の横顔を彫り込んだブローチ。
 ユーノーは、ローマ神話で女性の結婚生活を守護する女神だ。渡瀬ナースはそのことを知らねえみてえだけど、マユは、そのことがすぐに分かったぞ。

 気づいていたら、渡瀬ナースは職業の規範を超えて涙したにちげえねえ。


「あ……」


 ブローチを裏返して驚いた。『ローザンヌ』のロゴが入ってやがる。ローザンヌは、黒羽と出会う前に知井子が、ゴスロリのコスを買った店……ナースの記憶にローザンヌのマダムの顔が……美優はマダムの娘だ!

 あとで寄ってみよう。そう思ったときには五階に着いていたぜ。

 マユは、黒羽が入った隣の空き病室に入った。隣の様子が手に取るように分かるぜ。ベッドにひと回り小さくなったジジイ、枕もとに二十代後半の女……黒羽Dの妹が文庫に目を落としてやがる。

「英二、何しに来た!?」

 ジジイは、病人とは思えねえほどでけえ声だ。

「お父さん、体にさわるわよ」

「……そこに座れ」

 次の声はひどく弱々しかった。やっぱり余命は一週間といったとこだ。ジジイはかなり衰えてやがる。以前、HIKARIプロの事務所で黒羽を叱りつけていたころの半分ほどに痩せ、顔は薬の副作用で黄色くなってやがる……心臓を生かすために肝臓を犠牲にしてやがんだ。

「なあ、英二……」

「なんだよ、オヤジ」

「おまえが、仕事に打ち込んでいるのは嬉しい」

「バカにしてたんじゃないのか。いたいけない少女を使ってあぶく銭稼いでいる角兵衛獅子だって」

「……思っていたさ。でもな、いつだったっけ、オレがおまえのところへ行こうとして(13~16回)地下鉄の通路で発作おこしちまって、その時助けてくれた女の子」

「ああ、知井子とマユか……」

「おまえ、あの子たち入れっちまったんだな」

「悪いか」

 妹がお茶を淹れる気配がした。

「お父さん、毎日チャンネルかえてはAKRの子たちのこと追いかけてるのよ」

 父と息子は同時に目を背けやがる。その隙間を淹れたてのお茶の香りが満たしたぞ。

「……みんなよくやってるよ。特にマユなんか命かけてやってるようなスゴミがあるよ」

「……そうか」

 そりゃそうだろ。あのマユの中味は拓美。生きた証(あかし)残そうって必死なんだからな。

「あんないい子たちを、あそこまで光らせたんだ。おまえの仕事は間違っちゃいねえ」

「え……あ、うん」

 黒羽は、窓辺に寄って背中で答えた。

「だけどよ……お前が身を固めないのが気がかりなんだ」

「……だ、だから、ちゃんといるって彼女は」

「古いこと言うようだけどよ、黒羽の家をお前限りにはしてほしくねえんだ」

「お父さん、ひょっとしたら彼女連れてくるかなって……期待してんのよ」

「期待なんかしてねえよ、どうせ英二のハッタリだ」

「そんなことないって。今日は急だったから連れてこれなかったけど、今度は必ず……」

「必ずって、いつだい……おれは、もう十日ももちゃしねえぞ」

「お父さん、そんなことないわよ」

「気休めはよせ。由美子、お前の顔に『長くない』って書いてあるぜ」

「お父さん……」

「泣くな由美子。おまえも英二も嘘はつけねえ。死んだ母さんが、そこんとこだけはちゃんと育ててくれた」

「ほ、ほんとうに嘘じゃない(;'∀')」

「なあ英二、今の仕事が一段落してからでいい、身い固めろ。由美子は、もう三十になろうってのに、ここんとこ男っ気一つありゃしねえ、なんでか分かるか?」

「三十ぐらいの独身女なんてザラにいるわよ。お父さんせっかちなんだから」

「由美子、養子になってくれることを条件に男を考えてるだろう……そんなこと考えてたら、行かず後家になっちまうぜ」

「そんなんじゃないってば」

「真田ってやつと別れたの……その伝だろ」

「由美子……そんな話あったのか?」

 窓ガラスに映る妹と目があって、取り乱す黒羽D。こいつのこんなところは始めて見たぜ。

「ないない、お父さんの妄想よ!」

 由美子が、顔を赤くしてムキになってやがる。

「オレ、今度は必ず……連れてくるから。由美子もつまらない心配すんな」

 三人とも黙っちまって、時計の秒針の音だけになっちまう。

「無理すんなって……」

「無理じゃないって、じゃ、オレ仕事残ってるから、また明日。由美子、悪いけど頼むわ」

 黒羽Dは、ぬるくなったお茶を飲むと、そそくさと出て行く。最後まで父の顔は見られなかったぜ。


 ハ~~~

 マユはため息をついたぞ。


 天使なら、安直に人の命を助けて自己満足しやがるんだろうけど、悪魔の使命は違う。
 人に試練を与え、その生をまっとうさせることにある。死ぬ、あるいは死んだ命に干渉することはできねえ。それができるのなら、あの拓美だって生き返らせてるぜ。

 マユは、ポケットのブローチを撫でて、美優の病室に向かったぞ……。
 


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・149『修学旅行・三日目・4(志賀直哉旧居と新薬師寺)』

2024-11-20 15:46:59 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
149『修学旅行・三日目・4(志賀直哉旧居と新薬師寺)』   




 あたりは百坪を超えるお屋敷が並んでいて、その割には道幅が狭い。

 志賀直哉旧居は、そういうお屋敷の一つで、幼稚園ぐらいなら余裕で開けそうなくらいに広い。

「あ、今は大学の持ち物なんだね」

 看板の横に〇〇大学のセミナーハウスと書いてある。

「学校の施設だと税金とか安くなりますからねえ」

「なるほどぉ」

 
 順路は二階からで、二階には書斎と客室がある。


「ここで、かの文豪は『暗夜行路』を書いたんだねえ」

 机を撫でながら真知子が感心する。

「真知子、詳しいんだね!」

 佳奈子が感心すると「いやいや、当てずっぽう。志賀直哉って『暗夜行路』と『小僧の神さま』しか知らないしぃ(^_^;)」

「『小僧の神さま』は小学校で習ったよね、中身忘れたけど……ああ、春日大社の森とか若草山とか、よく見えるんだあ」

 たみ子は窓からの景色に感動。

「こんなとこなら、勉強はかどるんでしょうねえ」

「あはは、あたしは五分で寝ちゃうねえ」

「あ、それもいいですねえ、リフレッシュして部活に打ち込めそうです」

「人間、やっぱり環境ですよね……」

「そうだねえ……」

 ロコと佳奈子はタイプが違うけど、しみじみリラックスするポイントは同じみたい。あ、かくいうわたしも……というか、五人とも同じ。一年で同じクラスになったことが始まりなんだけど、いい仲間だよ。

 一階に下りると、志賀直哉の自室、奥さんの部屋。子ども部屋は、なんと床がコルク張り!

「すごい、ここなら回転レシーブの練習でもできそう!」

「志賀直哉の子どもに生まれたかったです!」

「そうね、子供部屋の隣は志賀直哉の寝室だし、よくできたお父さんだったんだねえ」

「ねえ、台所すごいよ!」

「声、大きいよ!」

 台所に感動したらたみ子に怒られる。

「ちゃんとガスだし」

「え、元々?」

「元々ですよ!」

「うちにガスが来たの幼稚園のころだよ」

「ああ、うちも」

「NHKで『水道完備ガス見込み』ってやってたじゃない。あれ見て、わが横田家のことだと思ったもん」

「うんうん、『バス通り裏』とかも親近感だった」

 アハハハハ((´∀`*))

 付き合いで笑っておくけど、そのドラマは知らないよぉ(^_^;)。

「あ、これ冷蔵庫ですよ!」

「あ、備え付けなんだ!」

 壁に木製のハッチが付いていて、正直わたしは分からないんだけど、お仲間四人はソッコーで気が付いている。

「お祖母ちゃんちにあったけど、もっと小さい木の箱だった」

「一番上に氷を入れるんだよね」

「そうそう、氷屋さんが配達に来るんだ」

「大きなのこぎりでザクザク切ってくれるんだよね」

 氷の配達……? ウウ、令和少女のわたしには想像つかない(^_^;)。

「ねえ、食堂もすごいですよぉ」

 隣りは教室の2/3くらいの広さに、9人掛けのテーブルが据えてあって、壁沿いにも長椅子やら小テーブルやら。ちょっと模様替えをしたらキッチンと合わせてけっこうなレストランや喫茶店が開けそう。

「パフレットにも書いてあったけど、志賀直哉って人は人を集めて賑やかにやるのが好きだったのね」

「うん、いい意味でサロンだったんだね……こんなところでMITAKAやれたらいいわよねえ……」

 パンフ見ながらため息つくMITAKAの創始者は、雰囲気的にはサロンのマダムの雰囲気。

「あっち、サンルームじゃない?」

「あ、ほんとだ」

 佳奈子につられて移動すると、てっきりベランダかと思ったところは、大小の丸テーブルが置かれたサンルーム。

 天井に大きな天窓、庭に面してはガラス張りの大窓なんで、ダイニングの方から見ると、ベランダに見える。広さはダイニングと合わせると教室の倍近いかもしれない。

「窓の外は芝生の庭ですよぉ」

「おお、余裕でバレーコートがとれる!」

「ね、あっちにはプールとかもあるみたい」

「「「「ほおおおおおお」」」」

 間抜けな歓声をあげると、後ろで人の気配……というか、クスクス笑われてるし。

 振り返ると、草色のカーディガンがよく似合うロン毛の美人さんが壁際のテーブルに着いていらっしゃる。

「あ、すみません、自分たちだけかと騒いでしまって」

 真知子が代表して頭を下げると、美人さんはワイパーみたいに手をハタハタさせる。

「こちらこそ、不躾に笑ってしまって。あなたたち、修学旅行?」

「はい、湘南の方の、宮之森高校っていいます」

「そう、ゆかし気な名前ね。志賀直哉は好きなの?」

「「「「あ……」」」」

「学校で『小僧の神様』を習って『暗夜行路』はタイトルを知ってる程度ですぅ」

 言い淀んでいると、ロコが正直、かつ簡潔に我々のレベルをばらしてしまう。

「そうよね、戦前の作家だし、それだけ知ってるだけで優秀よ」

「どーも……」

「あ、でも、この家は、みんな感心しました」

「品があって、そんなに奢った風もなくって」

「人を迎えて、人生を豊かに楽しもうって感じがとてもいいです」

「あてられちゃダメよ」

「え、そうなんですか?」

「戦争に負けた時、志賀直哉は『あんな戦争を始めたのは漢字や日本語を使ったせいだ』って言ったのよ」

 え?

「不完全で不便で、そのために文化の進展が阻害されて、あんな戦争をやってしまった。これからはフランス語を公用語にすべきだって」

 ええ!?

「太宰治とかは畏れ入ってたけど、そういう危ういオッチョコチョイな人」

 アハハハ(^_^;)

「あら、つい余計なこと言っちゃったわね。まあ、ここの雰囲気が気に入ってくれたのなら嬉しいわ。この先、東の方に行くと新薬師寺とか柳生街道とか、よかったら……あら、こんな時間。じゃ、わたしはお先に」

 心憎いほどの笑顔を残して草色カーディガンは行ってしまった。

 さて、も少し時間があるから、美人さんの言っていた新薬師寺の方に足を延ばそうと外に出る。

 歩いていると、ふと横っちょの家が気になって目を向ける。

 え?

 屋根の上にさっきの美人さん! 

 つるりと手で顔を撫でると安倍晴天……またやられた(-_-;)。


 新薬師寺は、薬師寺のイメージが頭にあったんで、拍子抜けがするくらい小さなお寺。

「ウウ、志賀直哉の家より狭いかも」

 さっきは歓声あげた佳奈子も、ちょっと萎れている。

 建物もお寺というよりは、天平時代の倉庫というような感じ。石の壇の上に体育館のステージにソックリおさまってしまいそうな小さい本堂。
 
 お寺の本堂にはたいていある縁側が無いし、観音開きの扉が三つあるんだけど窓が一つも無くて、まるで倉庫。

 せっかくなので中に入ると、大仏をそのまま縮小したようなご本尊の周囲を十二体の十二神将という、ちょっとおっかないナンチャラ大将という像が取り巻いている。

「あ、思い出しました」

 ロコが閃いた。

「お寺の寺っというのは、元々は『役所の建物』っていう意味なんですよ」

「建物?」

「はい、中国に仏教が伝わったころ、いきなりは立派なものを建ててもらえなくて、古い役所の建物を流用したんですよ。それで、いつの間にか『寺』っていうのが、いわゆるお寺になったんです! だから、唐招提寺とかは、その役所の建物だった名残りが残ってるっていいます」

「あ、なるほどぉ、じゃあここも?」

 あらためてパンフを読むと、元は400メートル四方もあるような立派なお寺で、ちゃんとした金堂とかがあったらしいけども、戦乱とかで焼けたり縮小したりで今の大きさ。金堂も焼け残った建物らしくて、ザックリ言うとロコの説明通り。

 金堂を出たところの茶店でお抹茶をいただいて、三日目の締めにした。

 
 その夜、夢に十二神将の宮毘羅(くびら)大将が出てきた。

 新薬師寺は草色カーディガン(おそらく安倍晴天)に勧められて 見に行って、疲れていたこともあってよく覚えてないんだけどもね。やっぱ晴天のオッサンにおちょくられているのかもしれない。


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!67『黒羽Dの苦悩』

2024-11-20 08:31:56 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
67『黒羽Dの苦悩』 





「マユ、オモクロの研究生になるの?」

「虎穴に入らずんば虎児を得ずだぜ」

「……でも、このパンフ、応募用紙がないよ」

「さっき、配達されてきたとこだ。書類審査は軽いもんよ。なんたって、クララと、拓美の合成だからな」

「ヒュ~」「(#*´・`*#)」

 クララは小さく口笛を鳴らして、拓美は顔を赤くして感心しやがった。

「とにかく、オチコボレ天使のお節介は放っておけねえからな」

「だよね」「う、うん」

 クララと拓美がうなずいたところに、黒羽Dが入ってきやがった。

「すまない。これからちょっと外さなくっちゃならなくなった。今夜のレッスンには付き合えないけど、みんな励んでくれよ。明日は、その成果しっかり見せてもらうからな。パフォーマンスはカレーじゃないから一晩寝かせて上手くなるってもんじゃない。今のモチベーションを『コスモストルネード』の発表まで、持ち続けていること。選抜もアンダーの研究生もね!」

 はい!

 百人近いメンバーと研究生が返事をしやがる。そのモチベーションの高さは目の前で花火が爆発したみてえで、マユはビクッとして飛び上がりそうになっちまったぜ。

 でもよ、その中で、たった一人、ブラックホールのみてえに落ち込んでる人間がいやがる。

 誰でもねえ、いま檄を飛ばした黒羽D自身だ。

 いくら表面を取り繕っても小悪魔の目はごまかせねえ。

――死ぬ――オヤジ――よくもって一週間――
 
 思念がスパークしてやがる。表面は明るそうに振る舞ってやがるけど、心の中は悲しみと混乱でいっぱいだ。どうやら、さっき事務所に電話があったみてえだ。

――どうして、携帯切りっぱなし……よくもって一週間……そうよ……はい?……看護師さんが呼んでる……父が……お父さんのメモ……読むよ『英二、いい歳して嫁さんもなし。仕事一途もいいけど、体には気を付けろ。見舞いなんぞこなくていいからな。通夜も葬式にも来なくてもいい。気の済むまで仕事に打ち込め。父』……お兄ちゃんの勝手! バカ、その勝手じゃなくて、勝手にしろの勝手よ!――

 黒羽Dの妹からだ。

 お父さんとは13~15回に出てきたジジイのことだ。どうやら、思いあまって「今から行く!」と返事をしやがって……え……「彼女だっている」……おやおや、ハッタリかましやがったんだ。

「じゃ、みんなガンバローぜ! イェイ!」

 元気にカマしやがった。

 オオオオオオオオオオ!!
 
 何も知らねえメンバーと研究生は、黒羽のエールを倍にして返しやがる。

 ブチブチブチブチブチ!!

 その跳ね返りが、無数の矢になって黒羽Dに突き刺さるイメージが浮かびやがるぜ(-_-;)

 リハーサル室を出た黒羽Dは、電源を落としたスマホ画面みてえに暗かった。しかし、黒い画面の向こうは整理されてねえ仕事や思い出の欠片でクラッシュ寸前だ。


 マユは、ポチの姿にもどって黒羽の後をつけたぜ。


 地下の駐車場で黒羽が車のドアを開けたとき、魔法でカラーコーンを倒して注意をそらし、その隙に後部座席に乗り込んだ。

 運転中も、黒羽Dの心は混乱したままだったけど、新曲キャンペーンのアイデアの整理にかかってやがる。そんて、こんな状況で仕事のことを考えている自分に自己嫌悪も襲ってきやがる。まるで、サンチャゴの海みてえだ。黒羽Dは、何度もため息をついたり、意味もなくハンドルを叩いたりしやがった。

 マユは、久々に見たぞ。こんなに苦悩している人間を。

 小の字は付いても悪魔。黒羽Dの苦悩を頼もしく思ったぜ。

 人間とは苦悩や錯誤のあとに道を切り開いていく不完全な生き物なんだ。いわば、悪魔と天使のせめぎあいから湧いて出た虫みてえなもんだ。

 でもな、一寸の虫にも五分の魂、魂は鍛えなくっちゃならねえ、天使みてえに気まぐれで安直な救済はしねえんだからな。

 いまは、雅部利恵の安直なクワダテを阻止することがマユの使命だ。そのためには、黒羽Dにダウンしてもらっては困る。むろん、黒羽Dの魂も放っちゃおけねえ。


 そんな具合に根性たぎらせてっと、フロントグラスにA病院の建物が揺れながら現れたぜ……。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・148『修学旅行・三日目・3』

2024-11-19 17:24:07 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
148『修学旅行・三日目・3(ささやきの小道)』   




 安倍晴天かと思ったオニイサンは一瞬しゃがんだかと思うと、それっきりになり、鹿の集団も磁石を遠ざけたパチンコ玉みたく結合が緩くなって、飛火野のあちこちに散っていった。不思議と、こっち側にやって来る鹿は居なかった。

 まあ、昨日からずっと鹿なんで、ちょっと飽きてもきてる。興福寺でいっぱい鹿煎餅やったしね。


「さあ、午後の部いこうか!」


 こちらも真知子の声でお昼を終えて出発する。

「あ、ささやきの小道ですぅ!」

 ロコが参道脇の道しるべを指さす。

「京都の哲学の小道と並んで、有名な散歩道なんですよ、ここを抜ければ志賀直哉旧居にも近いです!」

「ああ、そうね。哲学の小道には行けなかったし」

 たみ子の一言が続いて、道を南にとる。

 道幅はほんの二三メートル。それで両側は一メートルちょっとの土手になってて飛火野からは地続きなんだけど、丈の低い木がいい感じの密度で茂っている。ボンヤリ歩いてると、ただの林の中の道なんだろうけど、これは違う。

 林の中は草とか蔦はほとんどなくて、その気になれば林の中だって歩ける。以前、富士の樹海の動画を観たけど、木々は乱雑に生えているし、草も蔦もボウボウ。踏み込むとしたら、ちゃんと足もとを固め、鉈とか装備を整えなければ入れるもんじゃない。だから、人生をお仕舞にする目的で踏み入った人たちは道路からそんなに離れていないところで亡くなっている。

 でも、ここは意識して見れば分かるほどに整っている。

「真ん中に小川が流れてたら、南禅寺の……ほら、水路閣の奥のやつに似てるね」

 表現は違うけど、佳奈子が同じ意味のことを言う。みんな「ああ……」と半分景色に見惚れながら返事をする。

「盆景って知ってる?」

 たみ子がむつかしいことを言う。

「ボンケイ?」

 馬鹿なわたしは、クリラクガンの時みたいに聞いてしまう。

「知ってます! 本物の木や苔やらを使って、お盆や鉢植えの中に景色を作るやつですよね?」

「うん、お祖父ちゃんがやってたんだけどね……プ、ププ(〃艸〃)」

「え、なによ」

「盆景って、焼き物の人形とかを置いたりするんだけどね」

「ああ、その盆景の人形みたいなのね、わたしたち」

「なんだか、侘び寂びの世界ですねえ(^▽^)」

「でも、なんで噴き出すの?」

 すぐ後ろで笑われたせいか、少し不機嫌そうに佳奈子が振り返る。

「お祖父ちゃん、人形は信楽焼で揃えてたの」

「信楽焼がおかしいの?」

「あ、それってタヌキでしょ!?」

 三軒隣りの玄関わきに置いてあるのを思い出した。信楽焼と言えばタヌキだ!

「ええ、あたしタヌキなのお!?」

「ううん、ちょうどタヌキが五匹並んでるの思い出したから」

「そうか、全員ならいいか」

「そうだ……」

 リュックから文庫を取り出すロコ、どうやら、これがネタ本みたい。チラリと見えた拍子は岩波文庫! わたしは『ガガガ』とか『電撃』とかがヘッドにくるのしか読んだことない。

「ここいらの木は、みんなアセビですよ」

 アセビ?

 あんまり馴染みのない植物だ。

「冬から春にかけて、白い花を付けるんだそうです」

「ああ、それは見事かも」

「……あ、分かりました! アセビの実は鹿には毒なんで、鹿は寄り付かないんだそうですよ!」

「「「「ああ」」」」

 納得した、それで、ここいらには鹿が居ないんだ。

「でも、なんで、こんな林の中に鹿よけ?」

「この先の高畑ってところに、春日大社の祢宜たちが住んでたんですけどね」

「ネギ?」

「ああ、神社に仕える男の人で神主のいっこ下の役職」

 稚児舞をやっただけあって、たみ子はよく知ってるようだ。

「フフ、神のお使いでも、しょっちゅう付きまとわれたらかなわんということですねえ」

「うん、鮮やかな紅葉もいいけど、こういう地味な草木もいいもんね」

「ちなみに、アセビは馬酔木とも書いて、馬も苦手みたいです」

「え、馬と鹿が……」

「あ、馬鹿除けになるのかも!」

 プ( ´艸`)

「いま、特定の人物が浮かんだ人は反省しましょう!」

 
 馬鹿なお喋りをしているうちに、アセビの林もぬけて、文豪の旧居が見えて来た。

 

☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  

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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!66『よし、これだ!』

2024-11-19 08:22:25 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
66『よし、これだ!』 





「よし、これだ!」  


 白線の二往復目には、新曲のタイトルが浮かんだ。

――間もなく列車が通過しますので、白線の後ろにお下がり下さい――

 会長室の白線は特別製で、駅の構内アナウンス、そして列車の通過音やホームの振動まで再現できるようになってやがる。窓ぎわのスリットからは、列車の通過に見合った風が「バン!」と吹き出して、光会長のキャップを吹き飛ばしちまった。

 光会長は、若い頃から、駅のプラットホームの白線の上に立って、通過列車の振動と風圧を全身で感じた時にアイデアがひらめくってあぶないやつだ(^_^;)。

 で、今、その効果が現れた!


『秋桜旋風(コスモストルネード)!!』


 季節性もインパクトも十分あって、あとは歌詞だ!

 光会長は白線の設定を山手線から新幹線にして足を踏ん張りやがった。

 新幹線は、シューっていう独特の接近音がする……列車接近のアナウンスは、もう耳にも入らなかったぜ。


 ドバッ! ドバッ! ドバドバ! ドバッ!


 衝撃的な通過音と風圧のショックで、小柄な会長は部屋の端まで吹き飛ばされやがった!

 しかし、壁には衝撃吸収のためのラバーが貼ってあって怪我はしねえ。怪我はしねえが、衝撃はハンパねえ。ハンパねえけど、二回転して、壁にぶつかったときには、最初のフレーズがひらめいてやがったぞ!


 特急を準急停車と間違えて♫ ホームの端まで吹き飛ばされ~た~♪

 ショック! ショック! ショック!!

 手にした花束、コスモストルネード!


「振り付けの春まゆみ、作曲の大久保は来たか!」

「はい!」

「ここに!」

 振り付け師と作曲家が、息を切らしながら会長室に入ってきやがった!

 さっそく、最初のフレーズに曲と振り付けが付けられる。

 ドバドバッ! ドバドバッ! ドバドバッ!

 ドバドバッ! ドバドバッ! ドバドバッ!

 それから、二回新幹線が会長室を通過し、そのMAXな風圧で、会長室はまさに嵐の中だぜ。

 デスクの書類はもちろん、パソコンのデスクトップまで吹っ飛び、ロッカーは倒れ、カーテンはちぎれ、部屋の片隅で他の細々したものといっしょに吹き寄せられてやがる!

 ドバドバッ! ドバドバッ! ドバドバッ!

 三回目の通過の時は、光会長は、雄々しく足を踏ん張って曲の一番を完成させてやがったぞ!


 オレの心は、コスモストルネード!


 振り付けの春まゆみも、二回スピンして決めポーズを完成させた。曲は、大久保がアカペラできめやがった!


「「「決まった!」」」


 作詞・作曲・振り付けが一発で決まちまった!!

 すぐに大久保はスコアに音符を並べ、春まゆみは振り付けのコンテを描いた。

 この間、わずかに13分13秒。13分後には伴奏用の編曲ができて、コンピューターに入力されて、一時間後には、AKRのメンバーが集められ、歌と振り付けのレッスンに入っちまった。もう目が回るぜ!

「会長、すごいですよ!」

 付き合いの長い黒羽ディレクターも舌を巻きやがる。

「な~に。軽いもんよ」

 そして、ボコボコになった会長の手には二番と三番の歌詞がしっかりと握られていたぜぇ。

 マユがもどってきたときは、もう夕方でよ、AKRのメンバーたちは、一通り、新曲の『秋桜旋風(コスモストルネード)』をマスターし、夕食を兼ねて一時間の休憩に入ってやがった。


「うそ、オモクロって、そんなクワダテしてんの!?」


 マユの姿をした拓美が目を剥きやがる。

 三人は、食事のあと、メンバーや研究生・スタッフたちで一杯のリハーサル室で話してんだ。

 下手に個室で話すよりも、この方が目立たねえ。なんせマユは、クララとマユの拓美を足して二で割った姿をしているんで違和感がねえしな。

「この話、黒羽さんに言ったほうがいいかな」

「言わなくていいわよ(*,,ÒㅅÓ,,)  」

 拓美は、きっぱりと否定しやがった。

「情報源聞かれたら困るし。わたし今度の『秋桜旋風(コスモストルネード)』はいけるような気がするの」

「そうね、今のAKRは会長から、研究生まで一つになれてるものね」

 クララも拓美に同調しやがった。

「わたしたちは、二つになってしまったけどぉ」

 マユは、オスマシして言ったぞ。

「ごめんね」

 拓美は、真っ直ぐに受け止めて、ペコリと頭を下げる。

「いいんだ、拓美の気が済むまで、そのアバターは貸してやっから」

「もうしわけない」

「ほんとにいいんだって。マユにもタクラミがあるんだからな」

「「え……?」」

 クララと拓美の声がそろった。


 マユはオモクロの研究生募集のパンフを開いた……。




☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  

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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・147『修学旅行・三日目・2(蘭陵王)』

2024-11-18 21:01:54 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
147『修学旅行・三日目・2(蘭陵王)』   




「運がいいです(^▽^)!」

 遅れて駆けこんだ学食で諦めていたAランチがまだ残っていたみたいに歓声を上げ、石段を駆け下りるロコ。

 つられてみんなも駆け下りて、先着の観光客の人たちが振り向く。

 あ、すみません!

 声にこそ出さないけど、体中で『すみませんオーラ』が出てるんだろう、修学旅行生だと見抜かれて微笑みと共に鑑賞の輪の中に入れてもらう。

「あ……蘭陵王だ(‘‘艸‘‘)」

 たみ子も口を押えて感激。

 ランリョウオウ?

 たみ子以外は「え?」なんだけど、さすがに声は出さない。

 階段の下はテニスコートほどの白砂の庭で、五月人形的なのが怖い面を付け、バチというか指揮棒みたいなので空を指している。すぐに、舞楽の調子が変わって、クル、クルっとアクセントを付けて半回転し、その都度、地面を踏み固めるような仕草、飛び降りるような仕草、片足をトンと前に出すと床を真横に拭うような所作、力士の土俵入りみたいな所作。その度に下あごがブラブラして、少しコミカル。

 舞楽っていうんだろうけど、神社の巫女舞さえまともに見たことないんだけど、不思議に辛気くさいという感じはしない。

 衣装は朱色や金色、お面はサル? と思ったら耳の横に扇子みたいなエラとかが見えて、どうやら竜のお面みたい。

 四股を踏むような仕草があって、両手を腰骨のとこらへんに収めてシズシズと帰って行き、観客の人たちからめでたい拍手が沸き起こった。

 パチパチパチパチパチパチ

「いやあ、春日大社の舞楽って、決まった日にしかやってないですから、ほんとうに運がよかったです(^▽^)/」

「あれ、ランリョウオウって言うのねぇ」

「たみ子さんは、知ってたみたいですねえ」

「あ、うん、うちの田舎の神社でもやってるの。わたしも稚児舞で出たことあるんだよ」

「え、そうなの!?」

「あ、いま、電信柱みたいなノッポの子が稚児舞やってるの想像したでしょ!」

「あ、いやそれはぁ(;'∀')」

「わたし、子どもの頃は小っちゃい方だったんだからね」

「ああ、きっと可愛いお稚児さんだったんでしょうねえ」

「そりゃ~もう!」

「あ、わたしだって、小さいころにベールガールやって評判だったんだから」

「ベールガールって?」

 常識のないわたしは素直に質問してしまう。

「え、結婚式場でバイトしてて知らないんですかぁ?」

「あ、写真撮ってるだけだから(^_^;)」

「花嫁のベールの端っこ持って後ろからついていくやつよ」

「あ、ああ」

 数は少ないけどキリスト教式のやつで見たことがある。

「あ、それでランリョウオウって?」

「ああ、むかし、中国の斉って国があってね。そこの王子さまがあまりに男前で、素顔で戦いに出たら敵味方共にその二枚目ぶりに戦うことを忘れてしまうんで、その王子さまは醜い竜のお面を付けて戦ったって伝説」

「へえ、そんなのあるの!?」

「二枚目すぎて戦いにならないって、なんだかマンガみたいね」

「あ、佳奈子も知ってるよ!」

「え、バレーボールでですか?」

「うん、先輩から聞いたんだけど、大浜高校の男子バレーでね、女の子みたいに可愛いセッターが居てね、その子がトスあげると敵は見とれて、必ず負けちゃったって!」

「ええ、ほんと?」

「フフ、それって敵の方にホモもっけがあったとかぁ(* ´艸`)」

「え、敵って、うちの男バレ……プ(〃艸〃)」

「「「「アハハハハハハハ(>∀<)( ^o^) (˃᷄ꇴ˂᷅ )  (ᵔᗜᵔ* ) 」」」」

 みんなで、うちの男子バレーを思い浮かべて笑いながら参道を戻って行った。

 笑い出したら止まらなくって、すれ違う観光客の人たちもビックリしたり笑ったり、飛火野まで戻ってお弁当にした。

 プォ~~~~ン

 なんだか金管楽器の音がしたかと思うと、鹿たちがいっせいに歩いたり駆けたりして一カ所の集まり出した!

 見ると、青い半纏を着た男の人がホルンを吹いて鹿を集めている。

「あ、鹿寄せですねえ」

「ああ、なんか奈良の風物って感じねエ」

 みんなで、鹿寄せに見惚れていると、ホルンを吹いているオニイサンが、一瞬こっちに向いた。


 え、安倍晴天?



 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!65『見学自由』

2024-11-18 08:16:38 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
65『見学自由』 





 雅部利恵(天使名ガブリエ)が肩入れしてからのオモクロは、それまでの「オモシロクローバー」から「想色クローバー」と名を変えたけど、略称はオモクロのまま中身を変えやがった。

 それまでのお笑い系ではなく清楚とビビットが売りでよ。だけど、トークやバラエティーなんかでは元のオモシロの味も残していやがって、その手のコントやギャグをやらせると、AKRの上を行きやがる。

 ディレクター兼社長の上杉は、関西のお笑い総合商社と言われるユシモトから資本提携をうけ、中堅プロダクションを買収、いちやく東京でベストテンに入る芸能プロにしてやがった。

 その新生上杉プロの前まで来た。

 なんと「見学自由」の張り紙がしてある。

 学校帰りの女子高生なんかも結構並んで、見学の順番待ちをしてやがる。五十人一組で十五分の見学ができる。

 マユは、さっそく並んだぜ。

 一時間たった三回転目、やっと番が回ってきて見学の流れに潜り込めたぜ。


 一階の展示室には、オモクロの歴史や、活躍ぶりをパネルや映像で見られるようになって、メンバーの衣装なんかも展示してある。オモクロのこれからのスケジュールなんかも書いてあんだけど、AKRのえらいさんたちが言っていた新企画については書かれてなかったぞ。

 ロビーにはメンバーの写真が並んでいて、ルリ子と美紀の写真も当然並んでやがる。

 おお……( ゚Д゚)!

 学校での意地悪グループの印象など全くなくてよ、清楚なお嬢様キャラで額縁に収まってやがる。プロフは生年月日と性別以外はデタラメだけどな。

――学校では、人前で話すこともできない性格で、少しでも前に出られるようになりたいです――

 笑いそうになったぜ(`艸´)。


 五分ほどで展示室を出されると、階段を上がった二階に連れて行かれた。


 なんとリハーサル室の隣りの部屋を見学室にして、リハーサルを見せてくれる。防音のガラス張りになっていて、リハーサル室の音声は、据え付けのスピーカーから聞こえてくる。

 ルリ子と美紀もレッスンに励んでやがる。

 そして気がついたぜ。

 二人は白魔法をかけられてやがって、歌唱力やダンスの能力が何倍にも高められてやがる。

 実力でアイドルになった拓美や知井子に負けない歌とダンスだ。マユは、拓美には体しか貸してねえ。だから混じりけなしの実力だ。

 白魔法は、本人には分からねえようにかけられていて、ルリ子も美紀も自分の力と努力のタマモノだと思ってやがる。
 
 このごろのルリ子たちは学校でも大人しい。

 だけじゃなくてよ、他人への気配りや態度が優しくなってきやがった。これは白魔法じゃなくて、ルリ子たちが持った自信からくる自然な優しさ、この点では、マユも文句はねえ。しかし、その根本にあるのが、オチコボレ天使の利恵の思惑なんで、いただけねえ。

 運がよかった。

 残り時間五分というところで、リハーサル室に上杉ディレクターが入ってきやがった。

 オモクロの新しい企みというか企画は、メンバーにも知らせられていないようで、オモクロのやつらの心を読んでも分からなかったぞ。

 上杉の心は読まなくても飛び込んでくる。それだけ自信と闘志に燃えていやがる。

 新曲は『秋色ララバイ』ってタイトルで、見学者の前ではレッスンさせてねえ。オモクロにしては大人しい曲みてえだ。けどもサビからはオモクロらしくビビットになりやがる。曲自体は平凡のちょっと上って感じだけどよ、オモクロたちの手に掛かると、思いがけずヒット曲になりそうな予感がしたぞ。
 
「え……!?」

 思わず声が出ちまった。

 でも、周りの女の子たちの声や想念に紛れて、たとえ、利恵が、ここにいても気は付かれなかった。

 上杉は、AKRに果たし状を突きつける気でいやがる。表面は別の企画としてだけど、会場はすでに東京ドームを押さえてやがる。ユシモトの資本力の背景があってできることだぜ。

 メンバー全体の、いわば団体競技と、選抜のソロで競わせるつもりでいやがる。オモクロはすでに準備に入ってやがる。果たし状を出された時点で、AKRは一歩遅れることになるぜ。

 それに、なにより利恵が一枚かんでやがる。どんな影響が出てくるか分からねえ。

 ん……?

 見学室を探っている思念を感じたぞ!

 的は絞り切れてねえみたいだが、あきらかに探ってやがる。

 ……分かった。

 リハーサル室のパイプ椅子に化けた利恵が、見学室からのマユの思念を感じて探ってやがんだ。しかし、いまのマユはポチの体を借りて、見かけも拓美とクララを足して二で割った姿をしている。マユとは気づいてねえみてえだ。

――なんだ、見学の子たちが興奮しただけか。まあ、それほどいい出来ってことなんだ(^▽^)――


 パイプ椅子の利恵は、おめでたく解釈しやがった。

 見学時間が終わって、出口に差しかかったところで、パンフが配られた。パンフの何枚かにメンバーのサインが書かれている。外に出てパンフを開くまで分からないが、当たった子は「キャ-!」とか「ウソ!」とか歓声を上げていやがる。マユは、違うことでほくそ笑んだ。

 パンフの中に、研究生の応募用紙が入っていたんだ。


 マユは、小悪魔らしくほくそ笑んだぜ。



☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・146『修学旅行・三日目・1』

2024-11-17 15:35:24 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
146『修学旅行・三日目・1』   




 興福寺は八角形の南円堂に「お伽話に出てきそうなフォルムねえ」とおもしろがり。五重塔を仰ぎ見て「よくぞお風呂屋さんの焚きつけにならなかったねえ」と運の強さを喜んであげる。

 あれからMJスマホで調べたら五重塔は国宝だし、興福寺そのものが1998年に世界文化遺産になってるよ(^_^;)。

 あ、MJスマホって魔法少女スマホで、昭和に来てても使えるんだ。

 
 ここで時間を食っては予定をこなせないんで、鹿せんべい買って、鹿との約束を果たしただけで東大寺へ。

 
「……やっぱり大きいねえ( ゚Д゚)」

「三回目ですよぉ(^_^;)」

 佳奈子が感嘆してロコが付け加える。

 仁王門の仁王、仁王門潜って大仏殿、そして中に入って大仏様を拝んで三回目の感嘆。ほかの四人も「へえ」とか「ほお」とか声を上げてるんだけどね。

「でも、この大仏って三代目なんだよね」

「はい、初代のは平重衡が、二代目は戦国時代に松永久秀が焼いてしまって、今のは江戸時代に作られた三代目です」

「じゃあ、鎌倉の大仏の方が年季が入ってるんだ」

 湘南地方の我々としては地元に近い鎌倉の大仏を贔屓にしたくなる。

「でもでも、足の一部とか蓮の葉のところは初代のままなんですよ」

 ロコが公正に指摘する。

「あ、柱の穴潜りだ!」

 佳奈子が声を上げて、大仏様の右ひざ方向に走る。

「子どもの頃に読んだ『弥次喜多道中』の書いてあったんだけど、ほんとにあるんだ!」

「ああ、弥二さんが引っかかって抜けなくなるってやつ!」

 面白そうなので、スカートの真知子以外の四人でやってみる。

 案内を読んでみると、鬼門封じのためとか厄除けのためとか説明があったけど、高校生はおもしろればOKなんだ(^▽^)/

 あらためて大仏様に手を合わせ、大仏殿を出てからロコがこっそり注釈。

「あのう、弥次喜多が潜ったのは京都の大仏なんですよね(^_^;)」

「「「「え?」」」」

「あ、まあ、おもしろかったし、いいんですけどね」

「京都に大仏あったの?」

「あ、落雷で焼けたみたいです。木造だったみたいです」

 道理で、年配の参拝客の人たちが笑っていたけど、考え過ぎなのかもしれない。


 来た道を少し戻って春日大社を目指す。

 
 少し登りの参道を人の流れにのって進む。参道脇には千年以上の歴史の中で献納された石灯籠がいっぱい並んでいて、その背後には今を盛りの紅葉が栄えてとっても雰囲気。学校のある宮之森の町自体が、奥宮と呼ばれる神社と宮之森城址があって紅葉が素晴らしいんだけど、やっぱり千年の都のはすごいよ。木々の背の高さが違うし、奥行きも深いしね。
 
 ちなみに、奈良の鹿は、この春日大社の神さまのお使いだということで大事にされているらしい。

 社殿は、どこか八坂神社に似ていて朱塗りの柱が女性的。

「すごいぃ」「雰囲気ぃ」「ほう……」「おお……」「いいねえ……」

 高校生らしく五文字にもならない感嘆の声をあげながらお参りを済ませて、石段を下りると雅な雅楽の音が聞こえて来た。

 

 
☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!64『マユはポチの姿で偵察したぜ』

2024-11-17 08:27:10 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
64『マユはポチの姿で偵察したぜ』 




 マユは迷路みてえなダクトを伝ってスタッフの会議室を探したぜ。むろん、ワンコのポチの姿でな。

 帰り道のことは心配はねえ。ポチの嗅覚は人間の一億倍もあるからな、自分の匂いをたどっていけば、もとの出口にたどり着くことは簡単だ。

 オッサン特有の臭いがただよってきて、たどっていけばドンピシャ。HIKARIプロのえらいやつらが会議をしている部屋の排気口にたどり着いたぜ。


「……オモクロが、この週末の週間火曜曲で、新曲の発表をやります」


 オーディションのとき、えらそーに見えて、実は、それほどでもねえディレクターが話してやがる。

「どんな曲なんだ?」

 社長が目を細めた。とたんにデーモン先生みたく人相が悪くなりやがる。

「それが、分かりません」

「分からない?」

 みんなが、一見えらそーなディレクターに注目した。

「これまでは、宣伝を兼ねて意図的に情報を流していたんですが、今回は、見事に分かりません」

「オレは、少しは分かっている。作詞作曲は中山耕一だ」

 黒羽ディレクターがつぶやいた。やっぱり人の一歩先を行くやつだぜ。

「え、薬師丸陽子じゃないんですか!?」

 二番目にえらそーなディレクターがびっくりして、目を剥きやがる。

 その拍子にディレクターは、コンタクトレンズを落とし、話に参加できなくなったけど、見かけほどにはえらくねえので、会議が中断するほどじゃねえ。

「上杉のヤロー、勝負に出てきやがったなぁ……」

「たかが上杉、たいしたことはできませんよ」

 えらそーなディレクターが言った。

「オレも昔は『たかが光ミツル』って言われていたんだぜ……」

 ぜんぜんえらそーに見えねえ会長が立ち上がって、会議室の窓辺に沿って歩き始めた。会長が本気で考え事をしたときのクセみてえで、歩くとこには白線がひかれてやがる。

 え、なんで白線なんだ? 

 オッサン達の頭を覗いてみる。

 プ(`艸´)

 思わず噴いちまった。

 これは会長が光ミツルとしてデビューする前、フォークの国家主席と言われたころからの習慣なんだ。

 いつも駅のホームの白線ギリギリのところを歩いて考え事をするって変なクセなんだ。

 HIKARIプロができたころは、屋上のふちに白線を引いて歩いてやがった。それが、通行人に自殺者と間違われ、通報されて大騒ぎになった。それからは、会長室と会議室の窓ぎわに白線を引いて代用してやがる。へんなジジイだ。

 フニュ

 二往復目、さっきのディレクターのコンタクトレンズを踏んだ。ソフトなんで割れることはねえけど、靴底のわずかな違和感が、会長を決心させたぜ。

「この違和感は本物だ。今日一日で新曲作るぞ! で、オモクロと同じ日に発表! 十時までには作詞しとくから、振り付けの春まゆみ、作曲の大久保も呼んどけ!」

「じゃ、レッスンも、今日からですね!」

「むろんだ!」

 出て行きながら黒羽ディレクターに命じやがった。黒羽ディレクターは、全員に目配せ。それだけで、おのおのがやるべき事が分かる。

 う~~~~ん(-_-;)

 なかなか鍛え上げられたクリエィティブ集団だぜ。


「みんな、集まれ!」


 リハーサル室に行くと、黒羽ディレクターはメンバー全員を集めやがった。

「今日は、十時から新曲のレッスンに入る。今までとはやり方が違うからビックリしないように。それから、今日は遅くなるから、家には連絡入れとくこと。深夜タクシーで帰る覚悟しとけ!」

 はい!

 大石クララを筆頭にメンバー全員が熱気の籠もった返事をしやがった。会長の熱気が、HIKARIプロ全員に行き渡っていく。知井子なんか、なんだか自分の身長が、また伸びたような気がしたぐれえで、ピョンピョン跳ねてやがる。

 マユも、なんだかワクワクしてきてよ、人の姿になってクララたちが用意してくれてた制服を身に着け、オモクロのプロダクションを目指していったぜ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・145『修学旅行・二日目の残り』

2024-11-16 14:49:00 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
145『修学旅行・二日目の残り』   




 奈良は壮大な田舎だ。

 四方を山に囲まれてるんだけど、ついさっきまで居た京都よりも広い。

 でもね、京都はお寺や神社だけでなく、ビルもけっこうあった。五階建てぐらいのね。駅前ビルやらデパートやら大学やらホテルやら、少しは会社とかも。そういうものの間にはビッシリと平屋や二階建ての瓦屋根が、それこそ甍の波で、その点ではけっこうな大都会。

 だけど、奈良は一面の田んぼや畑やら。そういう田畑の中にお寺の大屋根がや塔が覗いている。奈良の主役は田んぼと畑。宮之森や大浜くらいの家並も見えて、ガイドさんの説明だと奈良市の中心らしい。
 うちの街をそれほどの田舎とは思わないけど、奈良を田舎と感じてしまうのは、元々は平城京という日本の都だったという知識があるからなのかもしれない。

 いや、高校生の気まぐれな印象です。気に障ったらごめんなさい(^_^;)。

「でもさぁ、京都ほど人が多くないのは嬉しいかな」

 東大寺近くの駐車場にバスが停まって呟いたら、みんな「うんうん」と頷いた。

 その京都でも、令和の半分ほどの混雑でしかないんだけど、それでも京都はくたびれた。令和のインバウンド爆発の京都に行ったら死んじゃうね。

「うわあ、鹿ですよ、鹿の団体ですよ!」

 駐車場を出ると、もう鹿が列をなして歩いていて、感動!

「鹿と遊ぶのは明日、今日はこのまま宿舎だからね!」

 花園先生に叱られて、そのまま興福寺近くのホテル。


「おお、奈良盆地が一望できるよぉ!」


 真知子が声を上げ、みんなで窓辺に寄ってみた。

「ああ、ほんの三階なのにねえ」

「でも、宮之森も三階の教室から街の向こうまで見えますよぉ」

「そうだけど、なんだか落ち着くわねえ……」

「あ、佳奈子、なに食べてんのぉ!?」

「あ、お茶うけ置いてあるよ」

「あ、お茶淹れます!」

 京都のホテルにお茶うけは無かった。ここもホテル形式だけど旅館の雰囲気がある。

「落雁だねぇ」

 ラクガン? 

 イミフだけど、下手に聞いたら昭和人間でないことを疑われるような気がして止しておく。

 ラクガンをポリっとかじる、口の中に栗の味わいと控えめな甘さが広がって、ほうじ茶によく合う。

「ねえ、五重塔も雰囲気だけど、興福寺って全体としては取り留めないねえ」

「うん、京都のお寺って塀で囲まれててまとまりがあったのにね。興福寺は町との境目が分かりにくいねえ」

 真知子とたみ子は高尚だ。

「それはですね、廃仏毀釈の影響ですよ」

「え」「ああ」

 ロコが入るとさらに高尚になる。

「明治の初めに神仏分離令が出て、お寺や仏像がずいぶん壊されたんです。京都はそれほどじゃなかったみたいですけど、奈良は、けっこうやっちゃったみたいで、興福寺はあれこればら売りされましてね。あの五重塔も町の風呂屋さんが焚きつけ用に買ったんですけど、大きすぎて壊せないんで、しばらく放っておいたら神仏分離令が撤回されて、ああやって無事に立ってるんですよ」

「「「「ほお」」」」」

 ロコの取材能力はますます冴えてきてる。

「あ、なんか香ばしい……」

 たみ子がほうじ茶のことを言ったのかと思ったら、わら焼きの匂いがほのかにしてくる。

「なんだかうっすらと霞が漂って来ましたよぉ」

 若草山や、その向こうの山々がシルエットになって、興福寺の伽藍もこころなし霞んできたような気がする。

 どこかで、稲刈りの後の藁を焼いてるんだ。

「なんだか万葉の昔から漂ってきたみたいねぇ」

「雰囲気ですねえ」

 ラクガンとほうじ茶にわら焼きが加わって、五人揃って時空を超えそうと思ったら、館内放送。

『ええ、夕食の準備が整いましたので、宮之森高校の生徒さんは一階の大宴会場までお集まりください』

 万葉の昔から引き戻されて、なんだかおかしくなってクスクス笑いながら、みんなで大宴会場に向かった。


 その夜は、布団を☆形に並べ、いろいろ来し方行く末について話したんだけど、長くなるから、またいずれ。


 明くる三日目は、地図とスタンプカードをもらってグループ単位で周る。それぞれのポイントには先生が立っていて、スタンプを押してくれる。

 移動手段は歩くかバスかタクシー、場所によっては電車という手もある。

 うちのグループは話題になった興福寺から始めて、東大寺、春日大社、志賀直哉旧居とかを周る。


☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 
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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!63『拓美とクララの助けを借りて』

2024-11-16 07:14:38 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
63『拓美とクララの助けを借りて』 





 マユの姿をした拓美が手伝ってくれるんだけどな、めちゃくちゃ恥ずかしい(>△<)。

 便座から滑り落ちねえように拓美が体を支えてくれる。悪魔というのは何からでもエネルギーを摂ることができる。人間みてえに飯も食う。でも、食ったものは百パーセントエネルギーに代わるんで、排泄ということをしねえんだ。

 でもよぉ、ケルベロスは犬だからな、豆柴の姿になっても、飯を食えば子犬らしくポコンとお腹も出るし排泄もしちまう。

 ア アァ~~~~

 屈辱と快感を同時に感じて、思わずため息が出ちまう。


「楽になりましたか……」


――いやはや、なんとも(-_-;)――

「え……?」

 犬語なんで、さすがに通じねぇ。

「犬に化けてるけど、マユさんなんでしょ?」

 そう言いながら、クララがウォシュレットのボタンを押した。

「キャイーン (✹Д✹ノ;;) !」

「「おっとぉ!」」

 水圧で吹き飛ばされるところだった! 拓美が支えていてくれたんで、なんとかこらえることができたんだけどなあ。これじゃもたねえ!

――化け・てる・ん・じゃな・くて犬のか・らだ・を・借りて・んだ!――

 思念でこれだけのことを伝えんのに、五分もかかっちまったぜ。

 仕方がねえんで、ケルベロスの魔力で人間の姿に化けた(''◇'')!

 ドロン!

「「わ……!」」

 豆柴がいきなり人間の姿になったんで、個室はギュ-ギュー……おまけに、その姿はスッポッンポン。マユは慌ててトイレットペーパーで最低限のところを隠したぜ!

「天使の雅部利恵ってのが、なんか企んでてよ、AKRに対抗しようとしてやがんだ。だから緊急事態! それで、魔界の犬の体を使って、ここに来たわけ!で、犬の姿じゃ、意思の疎通もムツカシイから、犬の魔力で、人間に化けてる! でも犬の悲しさ、化けても服までは手が回らねえ。で、お願いなんだけど……」

「あ、服ですか!?」

「ううん。便器の中のモノ流してくれる。ここからじゃ、レバーに手が届かなくって……」

 クララがレバーを押して水を流した。

「でも、裸でいいんですか?」

「いいんだ、またすぐにポチに戻るからよ。利恵は、ルリ子の欲望を、純真な向上心と思いこんで、このAKRに対抗してきてやがるんだ。下手をするとAKRが潰されっちまう。やつらの動きはここのスタッフも掴んでるぞ。この世界ってクサイ臭いで満ちてるからな」

 拓美が、思わず鼻を押えやがる。

「その臭いじゃねえ!」

 その五分後、マユはポチの姿にもどってよ、トイレの通気口からダクトに入って黒羽たち幹部のいる部屋を目指したぞ。ここのスタッフたちが、どれだけオモクロの情報を掴んで、対策してやがるか知るためにな(`△')。

 拓美とクララは、衣装部屋に行って、マユが人間の姿に戻ったとき、困らねえように服を探しに行ってくれた。

「どれも、ステージ衣装だから派手ねぇ……」

 拓美がため息をついた。

「これがいいよ!」

 クララが一着の衣装を取りだした。

 それはAKRのデビュー曲『最初の制服』に使った衣装で、ほとんど、女子高生の制服と変わりなかったぜ。

 二人は、それをトイレの通風口下の用具入れの上に目立たねえように置いてくれた。

「でも、クララ」

「なに?」

「マユさん、人間に化けたとき、クララに似てなかった。なんとなくだけど」

「わたしは、なんとなく、あんたに似てるような気がした」

 ポチの悲しさ……人間に化けるときは見本がいる。つまり、その時見えた人間の姿を真似てしまうんだ。だから、マユの姿をした拓美と大石クララを足して二で割ったような姿になったわけなんだ。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  



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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・144『修学旅行・三日目だけど二日目のこと』

2024-11-15 11:58:41 | 小説
(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
144『修学旅行・三日目だけど二日目のこと』   




 二日目の昨日は嵐山・嵯峨野を経巡って、お昼を挟んで京都御所と二条城だった。

 バスを降りたら、まずは嵐山でクラス写真。

「え、直美さん!?」

 びっくりした。ガイドさんに案内された撮影場所には、我が雇い主の直美さんがカメラを構えて待っていた。

「忘れてもらっちゃこまるなあ、うちは宮之森御用達だぞ」

 直美さんは後半クラスに付いていたんで二日目まで見かけなかったんだ。

「東山界隈じゃ場所が無くてねぇ、最初から集合写真は嵐山って決まってたんだよ」

 ああ、そうだろうねえ、あのあたりで撮れるのは平安神宮か丸山公園だろうけど、8クラス500人近くを待たせておけるスペースは無い。

「バスの都合で後半クラスからだけど、前半もすぐだから、そのへんに居ててね」

「はーい」

 と返事しながらも佇んでしまう。他の子たちもそうなんだけど、松尾山、桂川とそれに掛かっている渡月橋、嵯峨野のお寺やお屋敷を一望にした中の島は絶景だ。
 令和のここいらは京都どころか日本観光のメダマになっていて、インバウンドの外国人でいっぱい。昭和の嵐山は、賑わっているとはいえ、まだまだ余裕で、すっかり寛いでしまう。

「あ、六組……」

 真知子が撮影準備の整った六組に目をとめた。

「「「「あ……」」」」

 わたしたちも声が揃った。最前列でしゃがんでいる子が佐伯さんの写真を構えている。

 そうなんだ、佐伯さんの命が助かったことは、まだ知らされていないんだ。

 助かったとはいえ、元通りに回復するかどうかは未知数だし、やっぱりあの話は校長先生と教頭先生のところで停めてあるんだ。

 何も言わないで三組の番がまわってくるのを待った。

「ほんとうは、お父さんが来るはずだったんだけどね……まあ、秋の関西も写真にはいい季節だからねぇ」

 うちのクラスを撮り終えると、フィルムを巻きながらポツリと直美さん。

 マスターは大正一桁生まれで、戦争で具合を悪くしたみたいで無理がきかない。まあ、だからこそ、わたしが雇われてるわけだけどね。

「まあ、わたしも楽しんでるから、グッチも楽しんできな」

「はい!」


 というわけで、お仲間と一緒に嵯峨野散歩。


「大覚寺の方まで行くと空いてますよ」

 ロコの提案で松尾山を左に見ながら北に向かう。

「左に行くと常寂光寺や野宮神社に落柿舎、見どころはいっぱいですが、人もいっぱいなんで、こっちが断然いいです!」

 他のグループたちが左右に散っていくのは、ちょっと心細いけど、ロコの調査能力には一目も二目も置いているので安心して進む。

「ほら、あれです!」

「「「おお……」」」

 わたしを除く三人がオッサンみたいな歓声を上げる。

「水戸黄門とかでよく出てくるよぉ~このへん~」

 たみ子が小手をかざして首を振る。

「そうねぇ、時代劇の定番ロケーションだねえ」

「ねえ、このアングルなんて旗本退屈男!」

「眉間の傷が目に入らぬかぁ」

「よ、早乙女主人之介!」「市川歌右衛門!」

「ああ、もう、さっさと入りますよぉ!」

 拝観料を払うと、清水寺とかとは違って靴を脱いで上がれる。

「ああ、なんか感激ねぇ、靴を脱いで上がれるなんて……」

「あちこちにお花が活けてあるょ~」

 佳奈子が指差した方を見ると、廊下や、開け放した畳の部屋やらに素人のわたしが見てもイカシタ生け花がある。

「これ、計算されてるねえ……思わない?」

 ナゾをかけるたみ子。

「え……あ、そうか」

 真知子が納得するけど、他の三人は???

「あちこちにあるけど、視界に入るのは一つだけになってる」

「うん」

「「「あ、ああ」」」

「さすがに、嵯峨御流の家元ですぅ!」

 ロコが感嘆の声を上げるけど、たみ子が言わなきゃ気が付かなかっただろうね。

 理論家のたみ子や真知子が感覚的に感心して、感覚派のロコが後れを取るのは見ていて面白い。

「寝殿造りで言ったら渡殿だよね」

 生け花に感心した建物から屋根付きの廊下かカギ状に向こうとあっちの建物に繋がっていて、女子高生の知識では寝殿造り。

 なんだか源氏物語の中にいるみたいな感じで渡殿を進んで行くと、ほんとうに寝殿造りのところに出てきた!

「「「「「おお……( ゚Д゚)!」」」」」

 またも五人で感動。

 縁側も軒も思い切り広くて深くて、建物と縁側は壁とか障子とかじゃなくて……なんといったかなぁ、これは?

「半蔀(はじとみ)ですよぉ!」

 そう、上下に分かれていて、上は車のハッチバックみたくに上下にスィングして、下の方は取り外しができるようになっている。

 なんだか、紫式部とかが出てきそうな設えだよ。

「金閣寺も半蔀だよね」

「おお、左近の橘、左近の梅ですよぉ!」

 庭には白砂が敷いてあり、正面には檜皮葺のごっつい門がある。

「ええとぉ……」

 すごい勢いでノートを繰るロコ。

「ここは宸殿と言って、後水尾天皇から下賜された本物ですよ! あっちの門は勅使門と言って、天皇か天皇のお使いをお招きする時以外はひらかれないんですよ」

「なるほど、それで菊の御門が付いてるんだ」

「「「「なるほどぉ」」」」

 なっとくして、それから、しみじみする。

「半蔀に蝉の金具がついてる」

「え……ほんとだ」

 半蔀は金箔が貼ってあって、どの半蔀にも二匹ずつ金の蝉が付いている。

 さすがのロコでも、これは分からないようだ。

 昨日の疲れもあって、いつの間にかコクリコクリとしてきた。

 すると、目の端っこに見えていた勅使門が音もなく開いてくるではないか!

 ちょ、ちょ(''◇'')。

 わたしの興奮が伝わって、みんなも目を覚まして、開き始めた勅使門に釘付けになった。

 そして、現れたのは……黒の半纏にちり取りと竹ぼうきを持った掃除のおじさんだった(^_^;)。

 無敵のおじさんに感動して大覚寺を後にする。

 お昼は大覚寺の東にある大沢の池のほとりで、配給されたお弁当を広げる。

 お弁当はアイデアだ。

 観光地だから食堂とかにはことかかないんだけど、どこに行ってもけっこうな人。それに、みんな仲間同士で食べたいから探すだけで時間がかかる。

 帰りは野宮と常寂光寺、竹林を抜けて大河内山荘に足を延ばし、芝生に座って眼下の桂川や京都の景色を見て過ごした。


 一時半に集合場所に戻ってバスに乗車。


 そして、金閣寺と二条城……も話したいんだけど、またこんどね(^_^;)。



☆彡 主な登場人物
  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校2年生 友だちにはグッチと呼ばれる
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女 時々姉の選(すぐり)になる
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 猫又たち              アイ(MS銀行) マイ(つくも屋) ミー(寿書房)
  • 宮田 博子(ロコ)         2年3組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            2年3組 副委員長
  • 高峰 秀夫             2年3組 委員長
  • 吉本 佳奈子            2年3組 保健委員 バレー部
  • 横田 真知子            2年3組 リベラル系女子
  • 加藤 高明(10円男)       留年してる同級生
  • 安倍晴天              陰陽師、安倍晴明の50代目
  • 藤田 勲              2年学年主任
  • 先生たち              花園先生:3組担任 グラマー:妹尾 現国:杉野 若杉:生指部長 体育:伊藤 水泳:宇賀  音楽:峰岸  世界史:吉村先生  教頭先生  倉田(生徒会顧問)  藤野先生(大浜高校)
  • 須之内直美             証明写真を撮ってもらった写真館のおねえさん。
  • 御神楽采女             結婚式場の巫女 正体は須世理姫 キタマの面倒を見ている
  • 早乙女のお婆ちゃん         三軒隣りのお婆ちゃん
  • 時司 徒 (いたる)         お祖母ちゃんの妹  
  • 妖・魔物              アキラ      
  • その他の生徒たち          滝沢(4組) 栗原(4組) 牧内千秋(演劇部 8組) 明智玉子(生徒会長)
  • 灯台守の夫婦            平賀勲 平賀恵  二人とも直美の友人  
 


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魔法少女なんかじゃねえぞ これでも悪魔だ 小悪魔だけどな(≧▢≦)!62『ポチになっちまった!』

2024-11-15 06:30:00 | 不思議の国のアリス
魔法少女なんかじゃねえぞ  これでも悪魔だ  悪魔だけどな(≧▢≦)!
62『ポチになっちまった!』 




 不敵で無責任な高笑いを残して、デーモン先生は消えちまいやがった。

 足もとではポチが嬉しそうにお座りしていやがる。


 次に気がつくと目線が低くなってやがる。


 目の前にあるのがAKR47のスタジオやら事務所やらが入っているビルだということは分かったけど、いやにデカイ。

 トコトコとビルの前の玄関に行って、ガラスに姿を映してみた。

「え……うそ!?」

「かわいい~!!」

 二番目の声とともに、マユは抱き上げられちまった。

「この子、豆柴だよね?」

 AKR最年長の服部八重の声だぜ。

「飼い犬でしょうね、どこから来たのかしら?」

 この声は、最年少の矢頭エモ。

――顔近づけんなよ、こら、スリスリなんかすんな!――

 そう言っても犬語なんで、二人には分からねえ。

「あ、首輪の下に、名札……ポチっていうんだ」

「でも、この子、女の子みたいですよぉ……」

――こらあ、どこ見てやがんだ(;>∀<)!――

 というわけで、豆柴のポチとして人間界にもどされたマユは、迷子犬として、事務所の受付に預けられちまったぜ。

 段ボールの箱に入れられ、子犬用のドッグフードと水をあてがわれた。

 チ、こんなもの……と、思ったけど、豆柴の子犬はすぐに腹が減る。

 ドッグフードがご馳走に見えてきた……と、思ったら、シッポを振りながらがっついてんじゃねえか! 

 ハグハグハグ……ハグハグハグ……ハグハグハグ……

 その姿がかわいくて、受付前にきたやつらがしゃがんで見ていきやがる。休日なんで、ほとんどAKRが所属するHIKARIプロのやつらだ。それも早朝からレッスンのあるAKRのメンバーが多い、多すぎ!

「ああ、こいつ、ウンコしたがってるぞ」

 出勤してきた黒羽ディレクターがデリカシーもヘッタクレもなしに言いやがる(''◇'')。

「やだぁ、ウンコですか!?」

 受付の女の子が、もろイヤな顔をしやがる。こんなやつクビにしろ!

「仕付けられてるようだから、ここじゃやらないよ。でも、このソワソワ感、早くさせてやんないともらしちゃうぞ……」

 豆柴のあわれさ、食べたらすぐに胃腸が動き出し、もよおしてしまう。黒羽ディレクターは、管理人室から古新聞とレジ袋をもらってきて、ポチになったマユを、ビルの前の歩道に連れて行きやがる。

 街路樹の植え込みに下ろされた。

「さあ、ここなら落ち着いて用が足せるだろう。オレあんまり時間無いから、早くすませろよな」

 と、言われても犬になって三十分、意識がついてこねえ。出るものが出てこねえ……。
 
 そこに、早朝練習にジョギングをやっていたリーダーの大石クララと、マユの姿をした拓美がやってきやがった。

――ちょっと、拓美!――

「え……!」

 拓美が声を出して驚いた。無理もねえ、魔界で補講を受けていると思っていたマユが豆柴のポチになって、植え込みでしゃがんでるんだからな。

「お早うございます」

 クララといっしょに、黒羽に挨拶しながら拓美は考えた。

「この子、わたしが飼っているポチなんです。いつも決まったところでないとおトイレできない子だから、わたし、やります」

「頼むよ、でも、犬連れて来ちゃいけないなあ」

「すみません。わたしも気がつかなかったんですけど、着いてきちゃったんですね。気をつけます」

 黒羽は、一言ありげだったけど忙しいやつだ、古新聞とレジ袋を渡すと、ビルの中に消えていきやがった。

「この子、女子トイレに連れていってあげたほうがいいんじゃない?」

 クララは、分かってやがるみてえだったぞ……。


☆彡 主な登場人物
  • マユ       人間界で補習中の小悪魔 聖城学院
  • 里依紗      マユの同級生
  • 沙耶       マユの同級生
  • 知井子      マユの同級生
  • 指原 るり子   マユの同級生 意地悪なタカビー
  • 雅部 利恵    落ちこぼれ天使 
  • デーモン     マユの先生
  • ルシファー    魔王、悪魔学校の校長 サタンと呼ばれることもある
  • レミ       エルフの王女
  • ミファ      レミの次の依頼人  他に、ジョルジュ(友だち)  ベア(飲み屋の女主人) サンチャゴ(老人の漁師)
  • アニマ      異世界の王子(アニマ・モラトミアム・フォン・ゲッチンゲン)
  • 白雪姫
  • 赤ずきん
  • ドロシー
  • 西の魔女     ニッシー(ドロシーはニシさんと呼ぶ)  
  • その他のファンタジーキャラ   狼男 赤ずきん 弱虫ライオン トト かかし ブリキマン ミナカタ
  • 黒羽 英二    HIKARIプロのプロデューサー
  • 光 ミツル    ヒカリプロのフィクサー
  • 浅野 拓美    オーディションの受験生
  • 大石 クララ   オーディションの受験生
  • 服部 八重    オーディションの受験生
  • 矢藤 絵萌    オーディションの受験生
  • 上杉       オモクロのプロディューサー
  • 片岡先生     マユたちの英語の先生  


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