もう1週間前になってしまいましたが、県内豊橋市美術博物館さんに伺い、岸田劉生展を拝見して参りました。
岸田劉生展は、もう何度も色々な所で鑑賞させて頂いて来ました。
若い頃は「岸田劉生か、見ておかなくちゃ」という気持ちが強かったと思いますが、最近では、やっとといえば、やっと、、
あぁ、岸田劉生展、見に行きたいなぁ〜と思うようになりました。
色々な角度からのアプローチにより劉生展は多く開催されて来ましたが、今回の展覧会はとても鑑賞しやすいと感じました。
年代を追っているせいもあるでしょうけれど、それぞれの時期の作品数、質のバランスに大変優れていると感じたのです。
私はこの頃、コレクター様や画商と同じように、展覧会を開かれれる学芸員の先生方の「熱量」というものに興味を持ちます。
作品の集められ方、展示のされ方によって、先生方がどれほどその作品たちにご興味をもたれているか?
どのようにその画家を解釈されているか?がよくわかるのです。
美術館さんにもご予算の問題があり、入場者数で勝負をなさらなくてはならない展覧会ももちろんお有りでしょうけれど、先日の長谷川利行展や、今回の劉生展のように、切口の鮮やかな展覧会はやはり「もう一度見てみたい」と思わせてくれる魅力を持っています。
この東京国立近代美術館蔵の「落合村の新緑」の美しさに目を奪われました。
教会に熱心に通い、絵を独学で学び始めた劉生16歳の作品です。
図録の写真でご覧になり難いかと思いますが、実作品は、色がもっと綺麗でした。
やはり劉生はスケールが大きいのです。
既に劉生が劉生たる孤独をこの風景画は内包し、とても美しいと感じられます。
劉生が亡くなってしまう2年前、36歳の作品です。
私は以前からこの作品が好きです。
この展覧会の副題にも「実在の神秘、その謎を追う」とありますが、その「求め」を一瞬たりとも怠らなかった劉生の短くも長い画業に、瞬間の安心、得心をこの作品から感じるのです。
日本画と油彩画の和解。劉生の技術の達成度。
この絵を見ていると、実在の重みに劉生は1つの解決を見出したのではないかとさえ思えます。
劉生については、面白い資料を見つけましたのでまた後日書かせていただこうと思います。
お暑い中ではありますが、このお盆の時期に、この劉生展はピッタリではないかと存じますので
機会がございましたら、ご鑑賞ください。
岸田劉生展 実在の神秘、その謎を追う
この展覧会は豊橋市美術博物館さんで9月2日まで、
その後、ともに企画の中心になられたふくやま美術館さんでも9月15日〜11月4日まで開催されます。HPなどでお調べくださり、お近くの展覧会にお出かけいただけたらと存じます。