愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題297 書籍-10 海外旅-1 春日訪杜甫故郷

2022-11-23 17:04:31 | 漢詩を読む

 春日訪杜甫故郷    [下平声一先韻]  

中年頗好賦詩篇,

 中年 頗(スコブ)る賦(フ) 詩(シ)の篇(ヘン)を好(コノ)み,

晚歲奇縁鞏義辺。

 晚歲(バンサイ)に 奇缘(キエン)有って鞏義(キョウギ)の辺。 

遥路訪洞心身快,

 遥路 洞を訪ね心身は快(カイ)なり, 

好雨浥地草花妍。

 好雨(コウウ) 地を浥(ウルオ)して草花は妍(ケン)なる。

黃鸝競唱葉陰影,

 黃鸝(コウリ)は 競って唱(ウタ)う葉の陰影(カゲ)に, 

同志高吟杜墓前。

 同志は 高らかに吟ず 杜甫の墓前(ボゼン)に。 

順利羈応詩聖導,

 順利なる羈(タビ) 応(マサ)に杜詩聖(トシセイ)の導(ミチビキ) 

 ならん, 

安能不動熱心弦。

 安(イズグ)んぞ 熱き心の琴弦(キンセン) に動(フ)れ能(アタワ) 

 ざらんか。 

 註] 〇鞏義:河南省の一小都市、杜甫の故郷; 〇洞: 

  揺洞、山の麓に穿った洞の住宅; 〇黃鸝:コウライ

  ウグイス; 〇同志:杜甫の墓前で偶々居合わせて、

  共に詩を吟じることができた中国某大学杜甫研究者

  のことをいう; 〇詩聖:杜甫の尊称; 〇心弦: 

  心の琴線。   

<現代語訳> 

 春の季節、杜甫の故郷を訪ねる 

若い頃には賦や詩の作品の書物を好んで読んでいたが、晩年になって奇しくも縁あって、杜甫の故郷 鞏義(キョウギ)の辺りを旅した。 遠路はるばる杜甫の生まれ育った住居“揺洞”を尋ね、心身ともに快く。ちょうど小雨が降って土地を潤し、草花は開き妍を競っていた。樹の葉陰では、コウライウグイスが賑やかに囀っており、杜甫の墓前では、中国の杜甫研究者と日本の詩吟同好会の方々の吟の交歓があった。これらの旅の出来事はきっと詩聖・杜甫のお導きによるものであり、誰しも熱い心の琴線に触れずには置かなかったであろう。 

<簡体字およびピンイン>  

 春日访杜甫故乡 

中年颇好赋诗篇, 晚岁奇縁巩义辺。

遥路访洞心身快, 好雨浥地草花妍。

黄鹂竞唱叶阴影, 同志高吟杜墓前。

顺利羁应诗圣导, 安能不动热心弦。

屋内に祀られた杜甫の像 

 

<記>

 2018/4/20から4泊5日の旅で、黄河の流域、洛陽、鞏義および開封を訪ねた。ハイライトは、詩聖杜甫の故郷・鞏義と洛陽の竜門石窟を訪ねたことである。

 折しも、鞏義では「第一回 詩聖杜甫及び中華詩学研究国際シンポシウム」(於 成功学院大学大講堂)が開催され、その開会式典に参加する機会を得、シンポの触りの部分だけ参観させてもらった。

 杜甫が少年時代を過ごしたとされる揺洞“杜甫誕生揺”および「唐杜少陵先生之墓」を訪ねた。お墓の前で偶々、我々の旅団と 杜甫研究に関わっている上海大学文学部某教授と合同で「春望」の奉納吟を行う機会を持った。松下に眠る詩聖杜甫の導きに違いない と、感じ入ることしきりであった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする