愉しむ漢詩

漢詩をあるテーマ、例えば、”お酒”で切って読んでいく。又は作るのに挑戦する。”愉しむ漢詩”を目指します。

閑話休題 185 飛蓬-92 はやぶさ2が届けた「玉手箱」 

2020-12-22 09:34:35 | 漢詩を読む
令和2年12月7日(月)の昼、TVニュースで、街の雑踏の中で涙に潤む目にハンカチを当てている中年女性の顔が大写しされた。さらに若者、中年、……とマイクを向けられて、誰もが感激の一声を発していた。快挙!と。

朝の新聞でも一面に“46億年のタイムカプセル”、“生命誕生の謎 迫れるか”、“技術で欧米に10年先行”(毎日)等々、胸の躍る見出しで飾り、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙の旅計画(サンプルリターンプロジェクト)の成功を報じた。

この一年、コロナに泣かされて来た一年であった。国際交流もままならず、友との語らいの場も消え、一家団欒の機会さえ脅かされる状況である。国内ばかりでなく、全地球の人々の命が脅かされており、鬱陶しい日々である。

そんな中での JAXAの快挙である。大げさでなく、心の憂さを吹っ飛ばしてくれた。胸の内で快哉を発し、あるいは感激のあまり涙した人も多々居たと思う。筆者も快哉に、胸の熱くなるのを覚えた一人である。

その思いを漢詩として書き留め置くことにした。下記ご参照ください。 

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<漢詩原文および読み下し文> [上声七麌韻]
庚子晩祥禽隼的玉匣 
    庚子(コウシ)の晩(クレ) 祥禽(ショウキン)隼(ハヤブサ)の玉匣(ギョクコウ)
六龍導航祥禽隼, 六龍(ロクリュウ) 祥禽 隼を導航(ドウコウ)し,
萬里啄取龍宮土。 萬里に龍宮の土を啄取(タクシュ)せしむ。
流星一閃澳砂漠, 流星一閃(イッセン) 澳(オウ)の砂漠,
誰不歡喜疼頰部。 誰か疼(イタ)む頰部(ホオブ)に歡喜せざらんや。
 註]
  庚子:令和二年。       玉匣:玉の小箱、玉手箱、カプセル。 
  六龍:太陽を乗せた車を牽く六頭の龍。郭璞(カクハク):遊仙詩 其四、
    六龍安可頓 に依る。此処ではJAXA。 
  導航:飛行機などを誘導する。 啄取:ついばみ取る。“取”は助辞。
  龍宮:(神話の)竜宮城、此処では小惑星の名称。 
  澳:豪州、オーストラリア。 
  疼頰部:頰部をつねって痛いことで、夢でなく現実であることを知る。

<現代語訳>
 令和2年の暮れ、祥禽・隼 玉手箱 齎(モタラ)す
JAXAは宇宙を高速で飛ぶ「はやぶさ2」を誘導し、 
万里の小惑星・竜宮の土を啄取させる。
土の入った玉手箱は、豪州の砂漠に一瞬の流星の尾をひいて降りる、
つねった頬の痛みで夢でないことを知り、誰しもが歓喜したことだ。 

<簡体字およびピンイン>
庚子晩祥禽隼的玉匣 Gēngzi wǎn xiáng qín sǔn de yùxiá

六龙导航祥禽隼, Liùlóng dǎoháng xiáng qín sǔn,
万里啄取龙宫土。 wànlǐ zhuó qǔ lónggōng .  
流星一闪澳沙漠, Liúxīng yī shǎn Ào shāmò,  
谁不欢喜疼颊部。 shéi bù huānxǐ téng jiá .  
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“はやぶさ2”が、まさに6年に及ぶ地球‐小惑星・竜宮間の長旅を完遂。竜宮から、2回にわたって“啄んだ”土(砂、岩石のかけら?)をしまい込んだ玉手箱(カプエル)を豪州のウーメラ砂漠に無事に届けてくれたのである。

3億km離れた地球-竜宮の間、52,4億km飛んで往復。“はやぶさ2”は、さらに113億km離れた小惑星の探査へと宇宙へ舞い戻った と。技術の粋を結集したミクロン以下の精度の部品からなる極精細な機器をゴロゴロと岩石が散在するその隙間に着地 と。

この長旅を再現する諸々の極大・極微小な数字群、また齎されるであろう大きな科学的成果等々、実は、筆者の想像・実感する力からはるかに食みだすものばかりではある。ただ,とてつもない成果が齎されるであろう佳い夢をみせてくれた感激は他の人に劣らない。

英国ではワクチンの接種も開始された。その波は徐々に他国にも広がっていくことでしょう。我が国でも、2機関でワクチン研究開発が進行中で、臨床第I相試験の開始が伝えられている。トンネルの先に微かな光が見えているように思える。

“はやぶさ2”が齎した感激を機に、他力本願ながら、さらにコロナ感染症撲滅に向けた光がより輝きを増していくよう願って止まない。
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