アラビアンナイトの成立事情を辿りながら、その文明史的意味を考える本です。
日本でも老若男女に御馴染みのアラビアンナイトは、ペルシャ、インド、エジプトなどから数百年の間にあつめられた物語集です。
その成り立ちですが、エジプト系写本やシリア系写本等々、様々な写本の合体が今に伝わる「アラビアンナイト」の総体になったようです。
当初の「アラビアンナイト」は、物語の数も「千一夜」分に足る量ではなかったようですし、今では「アラビアンナイト」の代表作である「アラジン」や「アリババ」の物語も含まれてはいなかったとのことです。
(p43より引用) アラビアンナイト研究者の一人、ミア・ゲルハルトはこれらの物語のうち、原写本が確認されていないものをまとめて「孤児の物語」と呼んでいる。少なくとも現在のところ、ガラン版が出版される以前に書かれたと思われるアラビア語写本の中には、「アラジン」も「アリババ」も「アフメッド王子と妖精パリ・バヌー」も見つかっていないのだ。
アラビアンナイトは、ヨーロッパに移植されて以来、多様な変容をとげました。
そのひとつの方向が「子どもの読み物」であり、今ひとつが「大人?の文学」でした。
(p74より引用) 十八世紀初期にガランによって初めてヨーロッパに紹介されたアラビアンナイトは、新たな移植先であるヨーロッパでの文化事情にあわせてさまざまな役割を演じ分けてきた。当初は東方への関心を喚起するとともに新鮮かつ刺激的なファンタジー文学の世界を提示するのみだったが、やがてはその普及度に比例してヨーロッパでの受容形式が枝分かれしていく。
つまり一方では児童文学の題材を提供し、もう一方では成人向け好色文学としての性格を明確にし、さらには植民地となって支配されるべき東方世界についての情報源としても利用されるようになっていったのである。
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アラビアンナイト―文明のはざまに生まれた物語 価格:¥ 819(税込) 発売日:2007-04 |