「こどもの読み物」としてのアラビアンナイトは、オリジナルに囚われず、様々な国で様々な変容を遂げました。
(p90より引用) 児童文学としてのアラビアンナイトは本来の民俗的コードを喪失し、近代西欧型市民社会のニーズにあわせて自在に変身することができたのである。
児童文学としてのアラビアンナイトが日本や中国に紹介される際にもこのような可塑性が存分に発揮された。・・・中国語版の翻訳者も中国人読者にあわせて恣意的な改変を加えているそうだ。
ファンタジックなストーリーの中で活躍していたアラビアンナイトのヒーローたちは、その物語から飛び出していきました。
(p90より引用) 児童文学としての定着に付随してはもう一つの大きな動きがあった。キャラクターや小道具のパーツ化である。つまりアラジンやアリババ、空飛ぶ絨毯や魔法のランプが本来のストーリーとは関係のない設定でも自在に活躍し、パーツ単位の組みあわせによって新たな物語を生産できるようになったのである。キャラクターのパーツ化は娯楽産業の発達にともなって加速していく。
このあたり、ディズニーは、アラビアンナイトをはじめ世界各地のファンタジーを非常に上手にキャラクター化し自らのものにしています。
(p193より引用) アラビアンナイトは移植先の文化にあわせて自らを変形させ、新しいメディアにもたくみに入りこんできた。これからもその時々の時代的文化的、あるいは技術的状況に適合しながら、次々と新しい形をとり、新しい物語を生み出していくことになるだろう。アラビアンナイトは、物語というものの「進化」を体現しているのである。
アラビアンナイトは、まさにダーウィンの「進化の木」のように、新たな変化を取り込み、適応放散を遂げていったのです。
ただ、その変化をつかむ視座は基本的には「ヨーロッパ」にあり、そこから見た「オリエント観」「中東観」を映し出したものでした。
オリジナルは「オリエント」生まれですが、それがその地で育ち、様々に進化していったわけではありません。
ヨーロッパでも育ち、日本でも育ちました。
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アラビアンナイト―文明のはざまに生まれた物語 価格:¥ 819(税込) 発売日:2007-04 |