本書では、JR西日本・三菱重工・日本航空・雪印・関西電力・JCO・NASA等々、数多くのトラブル事例が紹介されています。
それらの多くは「ほんのちょっとしたこと」が発端で、それが過信と惰性等により積み重ねられてクリティカルなプロセスに致命的な欠陥を生じてさせてしまったもののように思われます。
以下に、本書で紹介されている危険予知・リスク管理等の観点がら日頃よく言われる指摘を参考までに列挙します。
まずは、「危険とコストの非合理的な天秤」について。
(p156より引用) 一般に人間とは、「想定される重大な危険」よりも「現実のわずかなコスト」に気を取られてしまう生き物である。・・・
初動措置に失敗する事情も、基本的にはこれと大同小異である。短期的なコスト計算に注意を奪われ、長期的な利害損得を計算する視点が欠落してしまうのだ。
この実例としては、六本木ヒルズ回転扉事件や松下電器石油ファンヒーター事件での各企業の対応のまずさをあげています。このあたりは「長期・短期のバランスをとる経営の基本」と軌を一にする指摘です。
次に、「認知されない情報」について。
どんな情報も、それが「重要なもの」と気づかれなければ全く意味をなしません。
(p162より引用) どのような情報でも、その価値を最終的に判断するのは人間である。・・・
誰しも自分が強い関心を持つ分野については、かなり正確に情報を評価することが可能である。それとは逆に、関心がない分野では、知識量や理解力の不足も加味されて、その情報の価値を過小評価する傾向が一般に認められる。
たとえば、9.11事件以前からもアル・カーイダ等によるテロ事件は続発していましたし、スペースシャトル・コロンビア号の断熱材の剥落も打ち上げ直後から認識されていました。しかしながら、それらの情報は、関係者の中で「重要なもの」として認識されなかったのです。
最後は、「危機判断における究極の歪曲」です。
(p164より引用) この「関心」と並んで情報を認知する上での障害となる要素が、情報を求める側の「懐具合」である。本来であれば、まず情報をきちんと評価した上で、その対策をどうするかを考えるという順序になる。しかし実際には、その対策のために当該組織が費やせる人員や経費はどの程度かを概算した上で、その範囲内に収まるように情報の評価が逆算されることがある。
こうなると「危機管理」の崩壊です。
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