なかなか刺激的なタイトルに惹かれて手に取った本です。
著者のカレン・フェラン氏は、デロイト・ハスキンズ&セルズ、ジェミニ・コンサルティングなど大手コンサルティング会社で経営コンサルタントとしてキャリアを積んだ方ですから、その内容のリアリティには、大いに期待して読んでみました。
著者のジェミニ・コンサルティング時代。
(p91より引用) 私が入社したころのジェミニが素晴らしかったのは、方法論は人びとが連携して働くようにするための道具にすぎなかったことだ。それなのに、いつのまにか人びとが連携して働くことより、方法論のほうが重要視されるようになってしまったのだ。
プロセスリエンジニアリングを得意とするジェミニは、当初においては、そのプロセスを実際に動かしている「人」が改善のKeyであることに気付いていたわけです。
しかしながら、組織が大きくなると手法の標準化を求める動きが強まり、結果、画一的な標準ツール化が進んでしまうのです。「ツール」に当てはめることが目的化し、個々の現場のディテールが捨象されてしまうと、真の問題点の解消は不可能になります。
(p100より引用) 人間は道具を使うのが好きだ。だからこそ文明を築くことができた。危険なのは、ツールそのものを解決策と勘ちがいし、ツールさえあれば関係者が連携しなくてもうまくいくと思ってしまうことだ。
ツールは、問題点の探求や整理には役立つものですが、それから演繹的に解決策が導かれるものではありません。ましてや、解決に向けたアクションは、ツールとは別世界のものです。
(p100より引用) 運がよければ、コンサルタントの分析も当たるかもしれない。けれども、そんなことに骨を折るくらいなら、現場の関係者の話を聞き、みんなで協力してクリエイティブな方法で問題を解決することができるはずだ。・・・
関係者全員で取り組みもせずに、ビジネスの問題を解決できると約束するようなツールや方法論やプログラムや取り組みは、ことごとく失敗する。・・・業務オペレーションを改善するには、関係者全員を巻き込んで一緒に取り組むしかない。それさえできれば、どんなツールや方法論を用いるかは、たいした問題ではない。人間こそ問題の原因であり、解決の手立てなのだ。
まさに、そのとおりです。
もうひとつ、コンサルタントがクライアントにアドバイスする事項としてよく見かける「マネジメント手法」を取り上げたくだりです。
多くビジネス書は、一様に「企業・組織運営におけるマネジメントの重要性」を論じています。それこそ多種多様・微に入り細を穿った「マネジメントモデル」が氾濫していますが、著者はこれらのアンチテーゼとして、自らの実体験に基づくマネジメントの要諦をシンプルに4つ挙げています。
(p191より引用)
①気にかけていることを態度で示す
②伝わるように伝える
③臨機応変に、柔軟に、すばやく対応する
④先手をうつ
これだけです。これらの説明の中で、私が特に興味深く感じたのが「先手を打つための具体的方法」でした。
(p193より引用) 何をいつまでにやるべきかをしっかりときめ、その情報をチーム全員で共有する
このこと自体は極く当たり前のことですが、ただ、これが「先手を打つために不可欠」という視点には気づいていませんでした。
普段からの「情報の共有化」により、チームメンバは何か課題に直面した際に後手を踏むことなく、自らの判断でチームとして目指す方向性を意識したアクションがとれるというわけです。
さて、本書を読み通しての感想ですが、本書は決してコンサルティング業界の裏側をスキャンダラスに描いたものではありません。コンサルティング会社の実態を理解したうえで、有益なコンサルティング会社との付き合い方をアドバイスしてくれているです。
たとえば、M.ハマーの「リエンジニアリング革命」で説いている内容を紹介しているくだりでは、著者はこう語っています。
(p92より引用) 対処方法や手順を示すことと、失敗例や問題点を示すことのちがいは、前者は読者の考え方を狭めるのに対し、後者は考え方を広げる点にある。
コンサルティング会社のステレオタイプの方法論を鵜呑みにするのではなく、彼らからの外部情報をインプットとして、直面している課題に対する対処法や解決策を「自らの頭で考えること」、その重要性を、著者は繰り返し指摘しているのです。
申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 | |
神崎 朗子 | |
大和書房 |
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