本書では、しばしばトヨタの「カイゼン」活動が具体例として紹介されています。
有名な「大野耐一」さんも登場します。例の問題発生時の工員による「ライン停止」の話です。
(p153より引用) 小さな問題をその場で解決することが、のちのち、はるかに大きな問題が発生するのを防ぐ。
また、トヨタのカイゼン活動に代表されるいわゆる「提案制度」の日米の差異についても言及しています。
提案制度への参加率、提案の採用率ともに日本の方が圧倒的に高い数値を示しているそうです。
その違いの原因として、著者は、提案活動に対する「報酬」についての日米の考え方の違いを指摘しています。日本では、過度な報酬は逆効果になりがちのようです。
(p182より引用) 企業が多額の報奨金を出すというのは、「従業員は、自分が儲かると思えば脇目もふらずに働く歯車だ」というメッセージを出していることになりかねない。
また、大きな報奨はそれ自体が目標になってしまい、仕事そのものに刺激と創造性を見いだしたいという社員の自然な欲求を奪いかねないのだ。
日本の報奨金の平均は約400円。対するアメリカは約5万円です。
(p183より引用) 小さな報奨は、社員一人ひとりの内側からのやる気を後押しする。・・・小さな報奨は、向上したい、貢献したいという社員の内なる欲求を、企業や上司が高く評価したという合図になるのである。
日本は、直接的な「おカネ」という形のインセンティブよりも、社員への「内発的動機付け」を重視しているのです。
さて、本書において、著者は「小さな行動」の実践を勧めています。
しかし、そういう悠長なやり方でいいのかしらとの思いもあるでしょう。
こういった「小さな改善」では、現在企業がおかれている急激な環境変化には対応できないのではないか、今はドラスティックな変化・変革が求められているのではないか、との疑念です。
こういった疑念に対して、著者はこう答えています。
(p169より引用) 「小さな一歩を実践する習慣」と革新の大きなジャンプは相容れないものではない。
二つを併用すれば、深刻かつ複雑で、解決不可能に思われる問題にさえ対抗できる、強力な武器になる。
だが、これまで解決できなかったトラブルに直面している人は、まず小さな一歩からはじめよう。
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