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観照的な知 (アリストテレスの言葉―経営の天啓(古我知史・日高幹生))

2011-08-19 09:08:10 | 本と雑誌

Platon  アリストテレスは、師のプラトンに比較して実践を重んじる哲学者とされていました。しかし、この点は短絡的に考えてはいけないようです。

(p119より引用) 「経験家より技術家(理論家)のほうがいっそう多く知恵あるものだとわれわれは判断している。すなわち経験家のほうは、物事のそうあるということ(事実)を知ってはいるが、それが何ゆえであるかについては知っていない。しかるに他方(理論家)は、この何ゆえかを、すなわちそれの原因を認知している」と語っている。・・・経験を単なる経験としてしかとらえない行動に対しては批判的であるということである。

 このアリストテレスの姿勢は、とても参考になります。この点を捉えて、著者はこう指摘しています。

(p119より引用) 顧客の声を聞け、イノベーションは現場から、という掛け声は確かに多くの企業の共感を呼ぶ。それは、経営者にとっても時に心地よい響きである。しかしそれがいま、「思考停止」的スローガンの性格を持ち、経営上の大きなリスクファクターとなってはいないだろうか。

 若いうちに現場を経験させる、CRMの仕掛けで現場からの情報を吸い上げる・・・、そこまでで、何かパラダイムシフトした気になっていないかというのです。

(p121より引用) これからの日本企業にとって、現場の知を扱うことの意味は極めて大きい。・・・コミュニケーションがとれているから、あるいは報告はあがってきているから、というレベルの問題ではない。確かにことの始まりは現場に現れる。しかし、そのことが何を意味するのか、どんなリスクや可能性が内包されているのか、このことを突き止める仕組みを本当に持っているのか。実はこれが、いま厳しく問われている。

 かつて、日本企業の現場は強かった、商社もメーカーもです。しかしながら、昨今の日本企業の衰退、それに代わる韓国をはじめとするアジア諸国の台頭を鑑みるに、「現場は強いが戦略構築力あるいは大きな構想力で劣る」という日本企業に対する評価が、今、定着しつつあります。
 新たな「知的生産の方法」を作り上げるべく、まさに「観照知」の出番です。

 さて、最後に、アリストテレスからは離れますが、私の興味を惹いた孟子に関わるくだりも書き止めておきます。

(p27より引用) 仁斎は、有徳の人間になるために孟子の「四端拡充」の考え方を参考にした。「四端」とは、「惻隠(あわれみの心)」、「羞悪(自分の欠点を恥じ、他人の悪を憎む心)」、「辞譲(譲る心)」、「是非(善悪を判断する心)」という四つ、すなわち生来の善の心の在り様だ。人間の多様な個性はこれらの善の心から徳に至る拡充の道がそれぞれに異なることから生じると考えた。善のおおもとは普遍的だが、善の志向とその道のりは個性的だという意味である。

 普遍的なものと多様化を是認するものとの関係性の整理が明確です。


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