「ぶっく1026」さんの書評Blogで紹介されていたので手にとってみました。
建築関係の本は、以前も安藤忠雄氏の「連戦連敗」や古市徹雄氏の「世界遺産の建築を見よう」を読んだりしています。
今回の本は、建築家中村好文氏の記憶に深く残った内外の建築を紹介したものです。上巻に登場した建築は12。豊富な写真と中村氏の軽妙な語り口が楽しい本です。
本書を読んで印象に残ったフレーズをいくつか書き留めておきます。
まずは、日生劇場の設計や赤坂迎賓館の改修で有名な建築家村野藤吾氏が設計した「旧千代田本社ビル」の紹介のくだりです。
(p18より引用) しかし私は、そうした見せ場をたっぷり味わいながら、同時にごく些細な部分、特に足元のデザインに目と心を奪われてきました。
建物本体はもちろんですが、石の舗装と芝生、池に崩れこんでいく石組み、石垣の端部・・・こういったところに建築家としてのこだわりや執念が感じられるのだと言います。
もうひとつ、アメリカ現代建築の第一人者ロバート・ヴェンチューリの著作「独自の建築研究の成果」からの引用です。
(p52より引用) 私は意味の明晰さより意味の豊かさに、外にあらわれる機能より内にかくれた機能に味方する。私は「二者択一」より「両者共存」が、黒か白かというよりは黒も白も、時には灰色が好きなのだ。
ヴェンチューリ氏の作品として紹介されているのは彼の母の家ですが、写真で見ても確かに興味深いものです。「途中で急に狭くなる階段」や「行き先なしの階段」・・・
しかしながら、奇を衒ったという感じはしません。むしろ、住み心地のよさそうな親近感を感じます。
この「母の家」に限らず、いくつもの建築を見ていくと「建物」を中心に、内には、間取り・ 内装・調度品・・・、外には、庭・通り・街並み・・・といった感じで、多層的に視点が移ります。
このあたりが、素晴らしい建築に触れる楽しみのように感じ始めました。
ところで、本書でも紹介されている京都の「俵屋旅館」。
いいですね。こういう宿に一度は泊まってみたい気がしたのですが・・・。やはり一泊5万円は下らないようです・・・。絶対無理です・・・
意中の建築 上巻 価格:¥ 2,940(税込) 発売日:2005-09-21 |
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