本書で紹介されているいくつもの戦闘の解説の中から、(一貫性はないのですが、)気になった部分をご紹介します。
まずは、技術レベルの戦略に関して、バトル・オブ・ブリテンの勝敗を決する要素のひとつとなった当時の最新技術「レーダー」についてです。
(p139より引用) レーダーの技術開発に従事した科学者の間では、完璧さを追求しないことがモットーとされた。すなわち、最良の完璧なものは、けっして実現できない。次善のものは、実現できるが、使うべきときまでには実現が間に合わない。したがって、三番目によいものを採用して、できるだけ早くその実現を図るべきである。・・・レーダーの開発、実用化は、こうしたプラグマティズムの産物でもあったのである。
差し迫った窮状に対するための極めて現実的な対応です。
このあたりは、トラブルが起った場合の「暫定対処」「本格対処」の考え方に似ています。ともかく、まずはともかく可能な方法で止血をして、並行して根本対策を講じるやり方です。
次のご紹介は、「機会損失の責任」について。
材料は、朝鮮戦争時のトルーマンとマッカーサーとの関係です。
1951年4月11日、マッカーサー元帥はトルーマン大統領より国連軍総司令官・極東軍総司令官の解任を通知されます。この背景には、両者の意思疎通の悪さとそれによる認識の齟齬がありました。
(p275より引用) 軍事合理性の限界という観点から見るとき、ここには、ポリティックス(政治)と軍事、中央と現場との間に横たわるより本質的な問題の所在を確認することができる。すなわち、何かをなすことによって生じた失敗と、何もしないことによって生じた失敗をどのように識別するかということである。何かをなして失敗した場合は検証されるが、何かをさせなかった場合の結果はどのように検証されるのであろうか。実行されなかったことの誤りを実証するのは難しい。成功したかもしれないことをやらせなかった場合の機会損失は、誰が責めを負うべきなのだろうか。
最後は、ベトナム戦争を主導したマクナマラ国防長官の言葉です。
(p377より引用) 「われわれは正しいことをしようと努めたのですが、そして正しいことをしていると信じていたのですが、われわれが間違っていたことは歴史が証明している」
判定者を「歴史」に求めなくてはならないような判断だったのか、結果論かもしれませんが、そこには疑問があります。
むなしい言葉だと思います。
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