三島が心酔したという「葉隠」にあるフレーズです。
(p58より引用) 風体の修業は、不断鏡を見て直したるがよし。・・・うやうやしく、にがみありて、調子静かなるがよし。
(p76より引用) 写し紅粉を懐中したるがよし。自然の時に、酔覚か寝起などの顔の色悪しき事なり。斯様の時、紅粉を出し、引きたるがよきなりと。
「葉隠」は、極めて実際的な教訓を語っていますが、これらもそのひとつです。
当時の武士道は、武士としての体裁・外聞・面目を重んじるものでした。内面もそうですが、「外見」にも相当きめ細かな気遣いをが求められていたようです。
ひとかどの侍が、日々鏡とにらめっこしたり、今で言えばファンデーションを持ち歩いたりしている姿は想像し難いのですが、真面目にここまでの緊張感が必要だったということかもしれません。
三島由紀夫のある断面のイメージに重なるような気がします。