雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

読書紹介「蜩ノ記」(1) 葉室 麟著

2012-02-22 22:50:12 | 読書案内

読書紹介「蜩ノ記」(1)葉室 麟著 祥伝社 2011年刊

  10年後の切腹を受け入れ、粛々(しゅくしゅく)と生きる

 10年前、羽根(うね)藩士・戸田秋谷(しゅうこく)は、

江戸表の中老格用人の職を解かれ、向山村に幽閉の身となる。

原因は秋谷が江戸屋敷でご側室お由(よし)の方と密通し、

「本来なら家録没収のうえ切腹だ。ところがそうはならなかった」。

 側室と家臣の不義密通などお家の恥になることだけに、

極秘のうちに処理されたのだろう、と推測される。

 

 その頃、秋谷は、御家の家譜編纂に取り組んでおり、

藩主はこの家譜編纂の完成を待って秋谷に切腹を命じた。

 

 10年後の八月八日、つまり秋谷が刃傷事件を起こした日をもって切腹を命じられた。

 

 蜩、日暮らし、来る日一日を真摯に、そして、穏やかに生きる秋谷。

 

 それから、7年が過ぎ、

家譜編纂の補佐という名目で、秋谷を監視するように命じられた檀野庄三郎は、

秋谷の生きざまを監視することになる。

 秋谷と過ごす3年の月日が、庄三郎の何かを変え、

秋谷の罪が事実無根であり、事件に関わる深い闇を知ることになる。

 

 自分に恥じることのない真っすぐな人生を歩むことができれば、

自らの死を目前にして、なお動揺せず、

穏やかに死を受け入れることができるのか。

                          (つづく)

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