雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

感染を題材にした小説 (3) 首都消失

2020-04-19 10:33:28 | 読書案内

感染を題材にした小説 (3) 首都消失
 首都東京がブラックアウトされた……  小松左京著
               お詫びと訂正 4/16日アップした記事は下書きでした。
           改めて訂正し完成記事を公開しました。

   ブログタイトルは、「感染を題材にした小説」としてありますが、
  今回の「首都消失」は、ある事情により首都(東京)が完全に封鎖されたとき、
  (小説ではこれを「消失」と表現しています)
  どんな危機が訪れ、人々はどんな考えや行動をとるのかをテーマにした小説です。

  (ハルキ文庫 1998年刊)

 (トクマノベルス 1985年刊)
 私が所持している本はリアルタイムで購入した徳間ノベル版ですが、35年も前に購入して経年劣化で黄ばんでしまった本です。表紙のデザインは後年発刊されたハルキ文庫の方がより小説の内容を伝えていると思います。第六回日本SF大賞

霧の朝
 濃霧が東京をはじめ、その周辺都市を覆うなか、早朝六時二十七分定刻、上り新幹線ひかり五四〇号は名古屋駅を定刻に発車する。東京本社で開かれる重役会議への報告の為、浅倉達也は東京に向かう。始発駅名古屋を発車した「ひかり五四〇号」桶狭間のあたりにさしかかる。

  あたりの霧は、ますます濃くなってきている。発車前には、まだプラットホームに
  薄く朝日がさしていたが、いまはあたり一面、灰白色のヴェールに閉ざされて、森
  も、岡も、人家も、うす墨色に朦朧と流れていくばかりだった。視界がどんどん悪
  くなってきているようだ。(引用)
 やがて、社内の電話が通話不能になっていること、
特に東京への通話はまったくつながらないと車内アナウンスが告げる。
ひかり五四〇号は速度を落としたまま、深い霧の中を進んで行く。
乗客が取得できる情報は、車内アナウンスのみ。
次のアナウンスで乗客の不安は、一層かきたてられる。

  新幹線はただいま小田原以東が停電で、コンピューターの制御系統も不調の模様でご
  ざいます。もっか状況を問い合わせておりますが、東京方面、電話回線が不通のため、
  連絡がとれておりません。通信の回復次第、今後の運行状況をお知らせいたしますが、
  この列車は、当浜松駅で、しばらく停車いたします……(引用)

ブラックアウト(首都封鎖)
 何の前触れもなく、いや、あれがブラックアウトの前触れだとすれば、
おびただしい濃霧が首都圏を中心に約30キロの範囲を覆っていたことだろうか。
厚い雲の層が首都圏をすっぽりと覆い、
雲と思われるものは高さ千メートルにもなる得体のしれない物体だ。
交通電波通信が途絶え、雲の中の情報はいっさい外部に流れてこない。
首都から脱出もできず、首都への侵入も拒む「雲」の正体は……。
孤立した首都に政治的機能やリーダーシップを望むことはできない。

封じ込められた家族はどうしているか。
友人は? 重役会議は?
異常気象か? 超常現象か?
封鎖は一時的な現象なのか?
国家中枢を失った日本の将来は……
様々な危惧をはらんだまま、雲は一層その厚みを増していく。

10日後、緊急全国知事会議が名古屋で開かれ、地方に残された政治家、財界人、学者、帰国した外交官などにより「臨時国政代行会議」が樹立された。
日が立つにつれ、国民の不安は動揺に変わる。

アメリカが「雲」の軍事利用を画策、
ソ連では日本の外交官が拘束され、
北方海域に大艦隊を送り込んできたソ連など、日本に対する外圧も強まっていく。
異常寒波が日本列島を襲う。
「雲」出現から4か月ほど経った3月末、「雲」の国際調査が行われ、
「雲」は単なる自然現象ではなく、
地球外の知的生命が何らかの意図をもって送り込んできた観測装置である可能性が高い、
という結論が発表される。
そして4月初め、「雲」は……

 一極集中の中で繰り広げられる「雲」の正体は、
 不明のまま物語は終焉を迎える。
 単なる「パニックSF小説」として読んでも面白いが、
 著者が描こうとした「雲」が象徴するものは一体何だったのか。
 国家間の緊張。国家の危機。不安。パニック。人間の心に宿る非日常の不条理の象徴なのか。
 国家がその機能を失ったとき、
 国家を構成する一人一人に課せられた責任と役割は、あまりにも重い。


作家 小松左京について
 この小説の終わりは唐突に訪れ、
 次回作が予想されましたが、読者はそれを見ることなく
 このたぐいまれなるスケールの大きな作家を失ってしまった。
 1931年1月生まれー2011年7月 (80歳没)

  昭和四十八年(一九七三年)の大ベストセラー「日本沈没」では、海に没する日本列島から、一億の日本人が苦闘のすえ避難を果たす。パニック小説ではあるが、未来への希望も力強く描かれていた。日本SFの草分けの一人であるが、同世代の仲間に人間へのシニカルな視点があったのに比べ、小松の物語には人間性への信頼が強く描かれていた。それは、「復活の日」「さよならジュピター」などにも貫かれている。

  東日本大震災からの復興を願い、「これから日本がどうなるのんか、もうちょっと長生きして、見てみたいいう気にいまなっとんのや」と記していたが、今年(2011年)七月二十六日、満八十歳で逝去した。
                                      (文芸春秋より引用)    
  NHKウエブニュース
     東京都 新たに201人感染確認 1日で最多 都内2794人に (4/17)
                                ▽大阪府は1075人 
                     ▽神奈川県は711人
                     ▽千葉県は632人
                     ▽埼玉県は590人
          国内感染確認 9861人 (クルーズ船除く) 新型コロナ (4/18) 
                  中国 武漢の死者数を大幅に訂正 (4/17)
                          死者の数を2500人余りから3869人へと大幅に訂正しました。
                          感染者の数も、これまでの5万8人から325人増えて、5万333人に訂正するとしています
                   一律10万円 住民基本台帳に記載の人 対象の方針 国籍不問 (4/18)
                           新型コロナウイルスの感染拡大を受けた10万円の一律給付について政府は、国籍を問わ 
                          ず、住民基本台帳に記載されているすべての人を対象にする方針で、原則、世帯主から申
                          請があった口座に家族分をまとめて振り込む方向で調整を進めています。
(読書案内№150)         (2020.4.18記)




 

 

 

 

 

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