雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

悪いものは悪い… 共感と受容

2019-12-06 06:00:00 | つれづれに……

 悪いものは悪い…… 共感と受容
  
 会津藩に、「什の掟」という六歳から九歳までの藩士の子どもたちに向けた教えがあります。

    一、年長者の言ふことに背いてはなりませぬ
   一、年長者にはお辞儀をしなければなりませぬ
   一、嘘言を言ふことはなりませぬ
   一、卑怯な振舞をしてはなりませぬ
   一、弱い者をいぢめてはなりませぬ
   一、戸外で物を食べてはなりませぬ
   一、戸外で婦人と言葉を交へてはなりませぬ
      ならぬことはならぬものです
 
  現代ではそぐわない教えもありますが、

  会津武士として成長していく子どもが守らなければならない「什の掟」です。
  「什」とは、地区ごとに集まる10人前後の子供たちの集まりという意味だそうです。
  「什」によって内容は少し違っていたようです。

  各教えは「なりませぬ」で統一され、最後は「ならぬことはならぬものです」と締めくくられています。

  「会津の武士の子どもはこうあるべきだ」というこの教えは、問答無用なのです。
  「ならぬものはならぬのです」と、掟の教えの絶対性を強調しているのでしょう。

  現実社会においては、
  「悪いものは悪い」という常識的一般論があります。
  法を犯すものに対しては、厳しい法による制裁が加えられます。
  大人の社会で通用する論理です。
  時によっては、問答無用で切り捨てなければならない事例もあります。
  この考え方の根底には、自己責任、
  つまり自分でしたことは自分で責任を取るという社会の責任があるからです。

  しかし、社会福祉の世界や、精神の発達途上ある児童に対しては、
  自己責任という意識が十分に発達していない段階にあるわけですから、
  一般論を押し付けても、自己満足に陥ってしまう場合が多いのです。

  常識的一般論で誰にでもできることです。
  対象とする事例を「一緒に解決しよう」という姿勢がなければ、閉ざされた心はなかなか開いてくれません。
  「相手の話をよく聞く」という「傾聴」という姿勢が必要となります。
  その上で、相手のあるがままの姿を認めることが必要になります。
  これを、「受容」といいます。
  社会福祉やカウンセラーに携わるひとに要求される基本姿勢です。

  私たちは人が好ましくない行動や行為をしたときに、その行動や行為を否定するところから
  相手へのコミュニケーションを試みようとしますが、
  否定するということは相手を否定することにつながってしまう場合もあります。
  
  心の問題を解決するとき、「なぜ」「とうして」という観点から相手の気持ちに沿うようにして、
  解決の糸口を一緒になって見つけられるよう進めなければなりません。
  ここに、「共感」という姿勢が生まれます。
  相手の痛みを自分の痛みとして感じ取れるような感性が必要になります。
  この感性の乏しい人は、社会福祉やカウンセリングが必要となる職業に
  就くことは望ましくありません。

  「共感」とは相手と同一視線に立つということです。
  上から目線や常識的一般論が通用し難い社会であることを忘れないでほしいと思います。
  
  今日一日元気で過ごすことができたなら、
  明日も元気に過ごせるという小さな希望が育つ社会であってほしいと思う。
  
    (2019.12.5記)  (つれづれに……心もよう№97)

 


 


コメント (9)    この記事についてブログを書く
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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
難しい (グランマ)
2019-12-06 06:53:41
雨あがりのペイブメントさん

おはようございます
教えはよくわかりますがそれを実践しているかは疑問です
難しい世の中
子供たちを叱るのも昔のようにはいきません
見て見ぬふり 何事も誰でもがそうなってしまったんですね
何事も自己責任・・・・・

もしかして愛されて育った子供たちが少なくなっているのかもしれません
本当の意味の愛し方 難しいですね

コメントがなんだか変な方に行ってしまいました
返信する
難しい… (雨あがりのペイブメント)
2019-12-06 11:59:41
 コメントありがとうございます。
「教え」と「実践」の乖離ということですが、
まったくその通りです。
 
 社会福祉や人の心の奥深くまで介入するカウンセリングに携わる人たちには必要な基本姿勢です。しかし、現実にはなかなか難しい。
時間がかかるし、人手不足の施設等では実践するのがむずしいと思います。

 「愛されて育つ」ということと「くそっかわいがり」にわがままに育てることとは本質的にはことなるのですが、若いお母さんの中には、「わが子だけは」と囲い込んでしまう人が多いように思います。
 
 子どもとのかかわりの中で一番大切なのは、
真剣に向き合う姿勢です。子どもの考え方は「忖度」とか「気遣い」という感情がまだ未発達ですから、ストレートです。こちらの姿勢を敏感に感じ取ります。
言葉ではなく、心で接することが肝要かと思います。


 
返信する
いかにも・いかにも。 (yo-サン)
2019-12-07 21:26:41
むべなるかな・むべなるかな。
カウンセリング実践(敢えて臨床とは言わない)40年、カウンセリングスーパーバイザーとして、
受容・共感・自己一致を提唱してきました。先日も県内最大手の社会福祉法人さんの職員研修
で話してきたところです。四半世紀に亘り新採用職員研修をさせて頂いております。

しかしながら、まことにしかしながら、知的に理解できる人は多くても、日々の暮らしの中で、実践
出来る人は如何ほどもないものです。拙著(この地の隠れたベストセラーでした・w)でも、
その大切さを、自身の体験の内に記していますが。

失礼を承知で、敢えてお尋ね致します。
ペイプメントさん。貴方は顧みて如何でしょうか?勿論OKならこの上なき喜びです。
不躾でした。どうぞご寛容に。
返信する
誰が実践につなげるのか (雨あがりのペイブメント)
2019-12-08 20:38:59
 コメントありがとうございます。
返信が遅れ、申し訳ありません。

 援助技術のスキルアップは、講演や講義ではなかなかアップすることが難しいと思います。
福祉の現場で、推進役を担う人がいないと、聞いても、研修に参加してもなかなか実践につながらないことはご存じと思います。
 幸い、小生は職場の運営に携わる職種にいましたので、率先してスキルアップを推進しました。
 ① 援助技術スキルアップ委員会の結成
 ② 月二回のスキルアップ会議
 ③ 会議の報告は月一度の全体会議で報告
 ④ 報告に基づいた討論会
 ⑤ 討論会の決議事項は厳守のこと等々

  細かい仕組みを作ることで実践につなげることができたと思います。
 
返信する
こんにちわ...。 (kitazume)
2019-12-10 14:05:34
いいですね・・・・。

最近。私は世の中の事が嫌です。
情報化社会になって仕舞って、物の価値も
無くなりつつあるし・・・。

自分が歳を取って今の時代に着いて行けないの
でしょうけど・・・・。

子供の漫画週刊誌を見れば、露質オーバーな、
水着の女の子の写真だらけ・・・・。

音楽番組で、まるでストリッパーの如く踊る歌手たち。

物が無くなりつつある、、
音楽はスマホでストリーミングを聴く時代。
確かに便利ですが....。

私は物にこだわるので、カセットテープやら
中古レコードをコレクションして居ますよ。

まあ、時代が開けて行くのは解るけど。
私には1990年代ぐらいが丁度良かった様だと
思います。

昔の良かった風習。音楽。映画が無くなって仕舞った。
今の時代は過激ならばそれでいいと言う時代。

私は歳の割に長髪にして居るし、ロック。ブルース、ジャズの楽器演奏もしますが・・・。

私は最近流行のヒップホップなどは聴きません。
音楽からメロディーが消えて仕舞った。

世界的に、そう言う状態です。
ネットは確かに便利だけども、、危険なサイトが、
結構あります。子供や、女の子が被害を受けて居る。

親は子を殺し。子は親を殺す.....

何でもアメリカの言う通り....。
こんな事では、日本が日本では無く成って仕舞う。

今の世には道徳と言う文字は無い....。

日本は、勝手、武士の国でした。
ご先祖様が泣きますよ....。


何か、書き込みたく成りました。
失礼しました...。

また来ます。。。
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すみません〜〜。 (kiyasume)
2019-12-10 14:08:24
名前が違って居ます。(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾
kiyasumeです。

失礼しました。m(_ _)m
返信する
kiyasumeさん (雨あがりのペイブメント)
2019-12-11 12:57:09
 コメントありがとうございます。
 いつもご訪問ありがとうございます。

 kiyasumeさんが危惧しているように、
 世の中がだんだん無味乾燥になって、
 人の優しさや情の部分がだんだん
 希薄になっていくような気がします。
 弱者が生きづらい社会になっています。
 今の子どもたちが大人になったときに、「生きづらい  社会」だったらそれは今を生きる私たちの責任だと思 います。

 ところで、最近のkiyasumeさんのブログを拝見すると
 いらいらしている様子がうかがわれます。
 どうか健康に留意しご自愛ください。

 コメントが遅れてすみませんでした。

返信する
信義を重んじる会津魂 (原村)
2019-12-12 21:33:02
こんばんは。
モーゼの十戒ではありませんが、信義を旨とする会津藩の精神性が脈打っているのを感じます。
短く分かりやすく、会津の地の心を感じます。
維新後、会津藩士は警察官になった方が多いと聞いた事があります。
今の警察官には分からないかもしれませんが。
時代に合うかは別にして一つ賢くなりました。
ありがとうございます。
返信する
原村さん (雨あがりのペイブメント)
2019-12-13 15:33:44
 コメントありがとうございました。
信州が好きです。同じくらいに会津も好きです。
信州には自然の素晴らしさがあり、会津には歴史に埋もれた「会津士魂」の雰囲気が漂っています。
 京都守護職を務めていたにも関わらず、朝敵にされてしまった会津にはたくさんの悲劇があります。戊辰戦争で敗れ、辺境・不毛の地斗南藩転封となりその悲劇は廃藩置県に至るまで続いたようです。
 私たちは先の戦争といえば太平洋戦争を思い浮かべますが、会津では戊辰戦争を指すようです。
 会津・戊辰戦争の悲劇はたくさんありますが、白虎隊のそれは涙を誘います。多くの婦女子が自刃したことも悲劇の最たるものですね。

 「ならぬものはならぬのです」
一本筋の通った会津の気風が好きです。
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