頌 春
戦争で解決するものなんて何もない
年頭に思うこと
ノーベル文学賞作家のアレクシェービッチはウクライナ侵攻が始まったとき
「人間から獣がはい出している」と言いました。
弱者への殺害、拷問、性的暴行が繰り返し行われたことを「獣」と表現しました。
かつて第二次大戦でドイツ軍がベラルーシに攻めてきたとき、
彼女は「ボタン穴から見た戦争」という本で次のように書いています。
空爆が始まり、皆が走って逃げていきます。爆弾が飛んで空中でヒューとなったり、
頭上で爆弾が破裂したりします。
地面に臥せた10歳になる少女は頭からオーバーをかぶり、
小さなボタン穴から、爆弾の降って来る外の世界を恐る恐る眺めます。
学校が燃えている。窓という窓が炎に包まれている。
空襲が終わって少女が地面から起き上がっても、隣に倒れている人は起き上がりませんでした。
「この子たちを連れていってください。私たちは街を守ります」通る車に向かって母は叫びました。
戦争で解決するものなんて、何もない。
例え平和が訪れても、私たちはあまりにも大きな犠牲を払ったことを後悔する。
大切なものを奪われ悲しみや憎しみだけが残ります。
勝者も敗者も何ひとつとして得るものはない。
私たちの社会は平安のなかに安らぎを求め、
その上に愛情や慈しみという自分以外への関心を注ぐことができるようになった。
情愛を注ぐという人間独特の感情が、
文明を生み文化を育ててきた。
戦争は次世代への遺産をことごとく破壊してしまう。
そして、最大の犠牲者はいつも弱者だ。
ウクライナ侵攻で展開されていることは、
人間性への破壊と、
人間同士の信頼関係を破壊することだ。
現実的には、第二次大戦後の世界で構築してきた安全保障の信頼性を揺さぶり、
世界の秩序を分断する愚かな行為だ。
だが、
人間には困難を乗り越え、
より良い方向へ進んで行く「英知」がある。
「こころ」が育んできた「英知」を私は信じたい。
(つれづれに……№133) (2023.01.03記)
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