白血病・被爆労災初の認定 (風の行方№32)
厚生労働省は、東京電力福島第一原発事故後の作業に従事し、
白血病になった元作業員に、労災を認定した。
原発事故に従事する作業員の「被爆と疾病」に一定の因果関係があるとして、
労災が認められたのは初めて。
認定された作業員の男性は「他の作業員が労災認定を受けられるきっかけになればうれしい」と語っているが、
現実にはなかなか難しい。
白血病の場合、放射線業務従事者の労災認定基準では、
年5ミリシーベルト以上の累積被曝量があったことが前提だ。
東電によると事故後に作業に当たった4万5千人のうち、
5ミリシーベルトを超えた人は8月末で2万人以上いるという。
原発事故の作業が続けば、この人数はさらに増えていくだろう。
しかも、被爆労災認定の基礎資料となる線量管理は現場任せであり、
作業環境は極めて厳しく、業者によっては杜撰(ずさん)である。
報道等によれば、作業員の9割は関連・協力企業(下請け・孫請け・ひ孫請け)にやとわれ、
雇い主が何度も変わる人も珍しくない。
「放射線管理手帳」は作業員個々人の被曝線量を記録するものだが、
会社が預かり被曝量を記録することになっているが、
業者によっては、杜撰な管理をしているところもある。
正確に記載すれば、作業員の防御基準である年50ミリシーベルトを超える作業員が増え、
元請け会社の要求を満たす作業員が確保できないという恐ろしい現実もある。
退職時に手帳を返してもらえない、
返してもらったが作業実績が少なく記録されていたなど問題は多い。
「労災が受けられるのを知らなかったり、あきらめたりしている」作業員も多いと関係者は言う。
厚労省では「労災の仕組みを記したチラシ」等で労災申請の啓蒙を計るが、
会社が握りつぶし、作業員に配布されていない例もある。
労災申請には「企業や労組等の協力や支援がないと難しい」が、
現在の原発作業員の雇用システムの孫請け、ひ孫請け的な状況を改善しなければ、
被爆労災の申請制度を血の通った制度にすることはできない。
(2015.10.29記)