続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

『国道の子供たち』27。

2021-07-20 06:19:53 | カフカ覚書

 ぼくたちは前よりもくっつき合って駆け出した、手を握り合っている子もいた。くだり坂になっていたので、ぼくたちはできるだけ顔を反らせなければならなかった。誰かがインディアンの鬨の声をあげた、ぼくたちの足にはかつてないほどギャロップの弾みがつき、跳躍すると風がぼくたちの腰をもちあげた。


☆わたしたちは一緒にくっついて走った。大勢は互いに訴訟(事件)に及んだが、十分高い位置ではなかったので理解できなかった。飛び上がると、空虚な風も跳ねるように舞い上がった。


『国道の子供たち』25。

2021-07-19 06:18:09 | カフカ覚書

 月はもうかなり高くのぼっていた、郵便馬車が明りを点して通り過ぎて行った。微かな風が吹き渡って、壕のなかでもそれが感じられた、そして近くの森がざわめきはじめた。するともう独りぼっちになることがそれほど大事ではなくなった。


☆月はすでに高いところにあった。光の通信が通り過ぎて行った。微かに空虚が(風)が上昇してゆき、墓(死)のなかでもそれが感じられた。そして近くの森の植え込みがざわざわし、横たわっていることは(死)それだけではないのだった。


『国道の子供たち』26。

2021-07-16 06:17:55 | カフカ覚書

「みんな、どこにいるの?」ー「こっちへ来いよ!」-「全員集合!」ー「なんで隠れるんだい、ばかな真似はよせよ!」ー「もう郵便馬車が通ったの知ってる?」ー「そうさ、きみが眠っているあいだに通っちゃったよ!」ー「ぼくが眠ってたって?嘘だよ、そんなの!」ー「だって、きみの顔にそう書いてあるもの。」ー「ぼくの顔に?」ー「さあ、行こう!」


☆「みんな、どこにいるの?」「こっちに来いよ」「みんな一緒に!」「なんで隠すんだい? 無意味だよ」「もう通信はすでに過ぎてしまった、知らないのか?」「まさか、もう過ぎ去ってしまったの?」「当り前さ、きみが眠っている間に行ったのさ」「わたしが眠っていたって? いやあ、そんなはずはない」「でも、見てごらんよ!」「では、頼むよ」「さあ、行こう!」


『国道の子供たち』24。

2021-07-15 06:12:51 | カフカ覚書

そして少年たちのひとりが両肘を両脇につけて、黒い足裏でぼくたちを跨いで、土手から道路に飛び出して行くと、ぼくたちはみな瞬きした。


☆そして先祖の傷痕を持つ若者のひとりが後ろへ下がることを検討すると、見えない足裏でわたしたちの上を追われて跳んで行くのを見たのは瞬きする間だった。


『国道の子供たち』』23。

2021-07-14 06:16:47 | カフカ覚書

 壕のいちばん深いところで、身体を、とりわけ膝を思いきり伸ばして眠ったら、とはまだ誰も考えずに、泣きたいような気がしながら、病気になったように仰向けに転がっていた。


☆まさしく墓穴を掘り、膝を大きく伸ばして永眠したらと、泣くこともなく、悩みながら空想に興奮していた。


『国道の子供たち』22。

2021-07-13 06:12:31 | カフカ覚書

たしかに誰かがもういちど顎を突き出して跳ね起きたが、それもじつはもっと深いところへ落ちたくてのことだった。するとみんなは、両腕を斜め前にのばし膝を折り曲げて空中に飛び込み、つぎつぎに壕の深いところへ深いところへと落ちて行った。そして誰もやめようとしなかった。


☆なるほど誰かが水平線を高く上げるために全力を尽くした。先祖の傷痕をさらに深いところへ落とすためだった。すると、みんなは司法(正義)の力で悪意を非難し、再び死を深くに落とした、そして誰もそれを絶対に終わらせようとしなかった。


『国道の子供たち』21。

2021-07-12 06:17:32 | カフカ覚書

ぼくたちにも壕にも一様な熱気があった、ぼくたちは草のなかに温かさも冷たさも感じなかった、ただ、疲れてしまった。
 右脇を下にして、手を頬の下に置くと、そのまま眠り込んでしまいたくなった。


☆みんな同じように熱心だった。わたしたちは温かさも冷たさも感じなかった、ただ、疲れていた。無造作に寝入ること(死)を喜び、寝入ること(死)を望んだ。


D『ローズ・セラヴィよ、なぜ何故くしゃみをしない?』6。

2021-07-08 06:38:54 | カフカ覚書

 11.4×22×16㎝、鳥かごというにはあまりに小さい。手のひらサイズのカゴ、これは虫かごに相当する。しかし、あえて鳥かごいう真意は見る者のの観念/常識を揺さぶるものである。
 常識は通用しない、まず先入観を捨てよ!というメッセージは大前提である。

 角砂糖型の大理石の無造作な、しかし人工的な細工をほどこした物の集合、突き刺さるイカの甲、こちらは自然、あるがままである。イカの甲に比しての角砂糖型の大理石は貧相なほどに小粒であるが数の力がある。温度計は人為の叡智であるが、用途をもたない場に置かれている。

 つまりは総て無用の長物の集合にすぎないこの物への偏見、嘲笑は人の感想を待つまでもなく歴然としている。
 世界は需要と供給で成り立っている。不要なものの居場所はなく、除外・廃棄は決定的である。
「これを差し上げよう」
「・・・要らない」
 答えは最初から明白であったのだ、その通り!《これがわたくしデュシャンであります》排除の態、「ローズ・セラヴィはわたし」、「何故くしゃみをしない?」は、なぜ、本当のわたしでありえないのかという自問であり、周囲への自己説明であったのかもしれない。


 写真は『DUCHAMP』 www.taschen.comより


『国道の子供たち』19。

2021-07-08 06:20:44 | カフカ覚書

「降りて来い要!」ー「その前に上って来な!」ー「そしたら突き落そうというのだろう、いやなこった、そんなばかじゃないよ!」ー「ほんとうは、そんなに憶病だっていうことだろう。さあ、来いよ」ー「こいつら!ほんとに? ほんとに突き落せるつもり? あとで泣きっ面かいても知らないぜ!」


☆「下へ来いよ!」「最初に上っておいで」「それで私たちを投げ下ろすのか?」「わたしたちは落ちやしない」「ちゃんと分かっているんだよ」「意気地がないと言いたいんだろう」「ほんとうに投げ落とすつもり?」「見なけりゃいけないのか?」