続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『大家族』

2017-03-10 06:44:36 | 美術ノート

 『大家族』

 水平線ギリギリに羽を広げ飛ぶ鳥(尾ひれは水面についているようだけど、足は着いていない)。
 そのシルエットには雲の散在する青空が描かれている。背景はちょっと見たことのないような不気味な空を呈している。
 静かな水平線、夜明けの感じもあるが、波は相当に高い振幅がある。
 この光景を『大家族』と称している。

 ノアはまた地のおもてから、水がひいたかどうかを見ようと、彼の所から、はとを放ったが、はとは足の裏をとどめるところがみつからなかったので、箱舟のノアのもとに帰ってきた。水がまだ全地のおもてにあったからである。彼は手を伸べて、これを捕え、箱舟の中の彼のもとに引き入れた。それから七日待って、再び鳩を箱舟から放った。はとは夕方になって彼のもとに帰ってきた。見ると、そのくちばしには、オリブの若葉があった。ノアは地から水がひいたのを知った。(略)この時、神はノアに言われた、「あなたは、共にいる肉なるすべての生き物、すなわち鳥と家畜と、地のすべての這うものを連れて出て、これらのものが地に群がり、地の上にふえ広がるようにしなさい」。(創世記・第八章より)

 これはその《はと》ではないか。
 はとの足が地に着き、オリブの葉をくわえ帰ったときから、地上に生き物が増え拡がったとされるこの伝説をイメージしたものだと思う。

 鳥は、淀みある空に羽を広げていおり、シルエットは《空》である。鳥は、ただありのままの空を孕みつつ飛んでいるだけであるが、その鳥に被せたイメージはとてつもなく重い『大家族』の始まりという虚構だったのかもしれない。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (卯の花)
2020-02-08 00:35:05
この絵を部屋に飾っています。
ノアの方舟のハトだったのか・・と、こちらのブログを読ませていただいて、わくわくしました。何年も画家の名前も絵のタイトルも知らないままでしたのに、他のマグリットの絵もこちらで教えていただきました。ありがとうございました。
節子さんの素晴らしい感性、憧れます。どうぞお元気でいらしてください。
返信する
ありがとうございます。 (節子)
2020-02-09 08:44:17
 嬉しいです!
毎日思ったこと呟いているだけですが、楽しく書いています。
返信する
お元気ですか (卯の花)
2020-04-27 13:27:12
前回投稿の時には、コロナウイルスで世界がこのような事態になるとは、露程も思っておりませんでした。
部屋のマグリットの『大家族』を見つめて思うのです。
私たちは、この荒波を乗り越えるだけの連帯感を持ち合わせているのかと。

節子さんに是非、聞いて頂きたいなって思いました。私は元気が湧いてきたので。
「民衆の歌」(レ・ミゼラブルより)
https://www.youtube.com/watch?v=0Eax4cw6QFA&feature=emb_logo

節子さん、私たちに今必要なものってなんだと思いますか?
返信する
がんばりましょうね。 (節子)
2020-04-30 07:08:36
一刻も早くこの状況から抜け出したいですね。岡江久美子さんのファンでしたから残念でたまりません。不安と焦り・・・静かに待ちたいと思います。医療現場の方々のご苦労を思うと身が引き締まります。

 お互い元気でいたいものですね。
返信する
唐突の..  (卯の花)
2020-04-30 17:06:04
コメント投稿で大変失礼しました。
お返事いただけて嬉しいです。
節子さんもどうぞご自愛くださいますように。

『コロナに負けないで。赤穂市から全国の皆さんへのエールです❗』だそうです。
よろしければ、お時間ある時ご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=Kby1HgbYG3I&feature=youtu.be
返信する
感動です! (節子)
2020-05-01 16:53:56
赤穂市からのメッセージ、胸に響きました。
one for all,all for one.
明けない夜はない、そう思います。鶏でしょうか、手袋の鳥、可愛かったですね。
返信する

コメントを投稿