ばらばらの人影が道路わきの壕のなかに身をおどらせた。そして、暗い土手に消えたかと思うともうかれらは見知らぬひとのように、むこうのの道の上に立って、こちらを見下ろしているのだった。
☆個々の人たちは追放された死を歩いていた。先祖は暗い斜面に見えなくなったかと思うと、彼らはすでに異郷のひとのように、戦いの手段をもってこちらを見下ろしていた。
むかしの戦争の胸甲騎兵のように、地面を蹴立て、反り身になって、たがいに急き立てながらぼくたちは短い小路を駆けおり、足にその弾みをつけて一気に国道を駆け上がった。
☆古代の戦いの胸甲騎兵のように、激しく突き空中高く互いに追い立てあった。陰の裏町の入り口で国を追われた人たちが(天の)軌道を駆け上がっていった。
ぼくたちは夕闇を頭で突き破って進んでいった。あるときはぼくたちのチョッキのボタンが歯のようにぶつかり合った、あるときはぼくたちは一定の間隔をたもちながら、熱帯の猛獣のように、口から火を吐いて走った。
☆終末、わたしたちはトランクを持ち突き進んだ。日中も小舟、小舟には時間がなかった。ある時、終末の押しボタンが控えめにぶつかった。まもなく等間隔をもって火のような入口へと大方(みんな)は走った。
なにひとつお終いなのではなかった。ぼくたちは家の外に駆け出した。「やれやれ、やっと来たね!」ー「いつだって遅れるんだから!」ー「ぼくがかい?」ー「きみさ、いっしょに遊びたくないのなら、家にいろよ。」-「お情けはいらないよ!」-なんだって? お情けはいらない? ひどい言い方をするんだね。」
☆絶望的ではなかった。わたしたち一族は走った。「神に感謝した決定だった」「いつも後から来るんだから」「どうして?」「まさしく一族が残っているから」「どうなるんだろう」「小舟の恩恵」「小舟の恩恵?」「そうなの?」
「いやだなあ、どうしてそんなに溜息をつくのさ?なにか起ったの? なにか特別などうにもならない災難でも? 二度と立ちなおれないような? ほんとうにもうお終いなの?」
☆「いやだ、なぜ、どうして? なにが起きたの? 特別な全然よくない不幸でも?全くすべてが絶望的なのだろうか」
やがて誰かが窓枠を越えて飛び込んで来て、みんながもう家の前で待っていると告げると、ぼくはもちろんため息をつきながら立ち上った。
☆食(霊界の入り口)の壁を越えて飛び込んで来て、皆がすでに一族の前で待っていると告げた。わたしはもちろん直ぐに立った
誰かが窓の外からぼくになにかを訊ねると、ぼくは山脈を、あるいはたんに空気を見るように、その人をみつめた、彼にとっても答えはそれほど重要ではないのだった。
☆誰かが食(霊界の入り口)の外から何かを問うと、遺骨あるいはそのままの空気を見るようにそれを見つめた。多くは死ではなく、計画(もくろみ)だった。
蠟燭はたいていはすぐ消えた、そして濃い蠟燭の煙のなかを、まだしばらくは、集まって来た蚊がとびまわった。
☆束縛はほとんど消えたが、曖昧な煙のなかを、まだしばらくは文句がとびかっていた。
目の荒いレースのカーテンが暖かい風をうけてふくらんだ。ときおり、外を通りかかってぼくの様子を覗き込もうとしたり、ぼくと話そうとしたりする誰彼が、そのカーテンを手で掴んだ。
☆強い非難は警告するかのように風を受けて膨らんだ。幾度か外を通りかかり彼らはわたしのほうを見て無造作に非難をあらわにしていた。
蠟燭を点した食卓でぼくは夕食を食べた。ときどき両肘を木の卓について、もう疲れてしまいながら、バターを塗ったパンをぼくは嚙んだ。
☆束縛のにおいがする会場にわたしは向かった。ときどき左右は空虚空洞になり、桶状の演壇のばかばかしさに烈しい諍いがおきた。