従妹の隣家の主人は20歳になる連れ子の娘さんがいる中国人と再婚した。
ある日チャイムが鳴るので玄関に出て見ると、隣家の主人が「お宅の前を娘が通ったとき、奥さん(従妹)が怒っていたと言うんですがね」と話を切り出された。
《わたしが怒っていた?》身に覚えのない従妹は愕然としたという。
「私の顔は怒っているように見えるかねぇ」とわたしに聞いた。もちろんそんなことはない、断じて。小さい頃から優しくて揉め事一つ起したことのない従妹。長年隣家に住んでいてその辺の事は分かっているだろうに、再婚してついてきた義理の娘を庇ってそんなことをわざわざ言いに来るなんて、従妹は思い当たる節もなくただ呆然。
圧して堪えて「すみません、こんな顔なもんで」と笑って応えたらしい。
「中国の人だから言葉がよく分からなくて、『怒っていたみたい』なのを『怒っていた』と言ったのかしらねぇ』と、従妹はいう。
それにしても百歳に近い老母の世話に明け暮れる夫不在の主婦の弱みに付け込んで、言いたい放題は暴言である。隣家同士、事情を知っていればこその労わりはあっても、文句を言ってくるなんて!!(わたしは心の中でそっと涙したよ)
小さな亀裂、されど、深く刻まれた傷を従妹の無念さに垣間見て淋しく肯くしかなかった。
ある日チャイムが鳴るので玄関に出て見ると、隣家の主人が「お宅の前を娘が通ったとき、奥さん(従妹)が怒っていたと言うんですがね」と話を切り出された。
《わたしが怒っていた?》身に覚えのない従妹は愕然としたという。
「私の顔は怒っているように見えるかねぇ」とわたしに聞いた。もちろんそんなことはない、断じて。小さい頃から優しくて揉め事一つ起したことのない従妹。長年隣家に住んでいてその辺の事は分かっているだろうに、再婚してついてきた義理の娘を庇ってそんなことをわざわざ言いに来るなんて、従妹は思い当たる節もなくただ呆然。
圧して堪えて「すみません、こんな顔なもんで」と笑って応えたらしい。
「中国の人だから言葉がよく分からなくて、『怒っていたみたい』なのを『怒っていた』と言ったのかしらねぇ』と、従妹はいう。
それにしても百歳に近い老母の世話に明け暮れる夫不在の主婦の弱みに付け込んで、言いたい放題は暴言である。隣家同士、事情を知っていればこその労わりはあっても、文句を言ってくるなんて!!(わたしは心の中でそっと涙したよ)
小さな亀裂、されど、深く刻まれた傷を従妹の無念さに垣間見て淋しく肯くしかなかった。