一見平穏を保っているが、この形態の持続はあり得ない。
空洞(トンネル)の強度はシールド工法により、全体円形に掘削されるものである。従って上部のアーチは当然のことながら、下部に至っても円形(つぼまっていること)が絶対条件ではないかと思う。
圧迫による力を分散させることは強度を保つための必須条件である。
つまり作品はこの脆弱さを暗黙のうちに訴えているわけである。
社会全体が等しく規格化されることを案じている。
この崩落の予感には震撼とさせる心的振動がある。
一時的な静寂、しかし、後の現象を作家は憂いている。
写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館
「そうかな。吉蔵もうお寝よ、朝早く起きてお復習否。お婆さん早く被中炉を入れておやんな」
「今すぐ入れてやりますよ」
☆奇知(発想)を造(こしらえる)。
審(正しいかどうかを明らかにし)調べる。
双(二つ)の記は複(かさなっている)。
就(なしとげる)場は総(すべて)秘(人に見せないように隠している)。
注(書き記す)路(道筋)は新しい、混ぜることは新しい。
もしかしたら、まだ眠っているのだろうか。もちろん、こんな騒々しさのなかで眠っているのは、よほど健康な眠りというものだろう。それにしても、どうしてビュルゲルは書類をもらわなかったのだろう。
☆ひょっとしたら、まだ眠って(永眠)だろうか。もちろん騒音の中での健全な眠りは重要である。しかし、なぜ彼は小舟という結果になったのだろう。
1-4-7 Untitled
部分的に立方体の集合で全体を収めている。自然に立方体はないから人為的、人の造成した世界(社会)であることが分かる。
問題は大きく開いた空洞であり、何時崩壊してもおかしくない状態にあることである。むしろ当然落下は免れない、あるいは本来不可な状態を仮想しているにすぎないのかもしれない。
(空洞/トンネルの上部は強度の関係でアーチ型でなくてはならない)
ゆえにこの作品は社会の脆弱からくる危機感、不安という心的振動を体感させる物ではないか。
崩壊を招くであろう社会の構造への警鐘、恐れとしての心的振動である。
写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館
主人の声の方が眠むそうである。厨房の方で、
「吉蔵は此処で本を復習っていますじゃないかね」
お婆さんの声らしかった。
☆趣(ねらい)の図りごとは照(あまねく光が当たる=平等)の法(神仏の教え)である。
民(人々)の純(混じりけのない)眸(ひとみ)は封(閉じられている)。
既知(すでに知られている所=冥府)の死の所では翻(形を移され/作り変えられている)。
終(死)の場は照(あまねく光が当たる=平等)である。
Kは、こうした騒ぎのなかにいて、ビュルゲルの部屋のドアがずっとしまったままであることをいぶかしくおもった。従僕たちは、廊下のこのあたりはとっくに通りすぎていたのに、ビュルゲルには書類が配達されていない。
☆この落ち着きのない状態の中で、ビュルゲルの計画はすべての場合で人目を引いた。従僕たちのところはすでに通り過ぎていたのに、ビュルゲルには書類の割り当てがなかった。
1-4-4〔無題〕
無題…名付け難いもの。
青(ブルー)一色、これは何を暗示しているのだろう。空、海あるいは地球全体(地球は青かったという言葉から)を示唆しているのだろうか。
地表より浮いているエリアには何かが収められていた、あるいはこれから納めるべき空白(掘削)があり、それは明確に何かを想起させるものであるに違いない。予感と換言してもいいかもしれない。ここに収められるべきものが設置された場合、この盤(地平)は均衡を欠く。事件は起こった後か前かをこの作品は告げていない。
わきにスイッチらしき差し込みがある。どこにつながるものかは不明であり、どのような作用に至るものかも判別不能である。この差し込み(スイッチ)が世界を変換させる鍵である。
まだ起動されず、まだ然るべき装置は完成していない。
未来への予感…しかし、この差し込みだけは少々彩色に濁りがあるということは、すでに使用された痕跡を持つ差し込みである。
現在の静寂、過去の汚点、未来への不安。この動揺ある衝撃の予感。現代いだく心的光景、心象風景の集約である。
写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館
「お婆さん、吉蔵が眠むそうにしているじゃあないか、早く被中炉を入れてやってお寝かしな、可愛そうに」
☆場は既知(すでに知っている所/冥府)に造(至る)民(人たち)が、総てである。
秘(人に見せないように隠す)を注(書き記す)路(筋道)也。
辛い禍(不幸・災難)に衷(心を痛めている)
周囲の人たちは、みなこの事件に大きな関心をいだいている。いたるところでひそひそ話がかわされ、静かなドアは、ほとんどひとつもない。おかしなことに布でほとんどすっぽりと覆面をした顔が、壁の上の切れ目からなりゆきを一部始終見まもっている。おまけに、これらに顔は、ひとときとしておなじ場所にじっとしていないのである。
☆周りはこの事件に非常に大きな関心をいだいていた。至る所で先祖の計画は静かにささやかれ、奇妙な方法の束縛で迫害されていたが、ほとんど完璧に見せかけだけの顔に追われていたにもかかわらず、すべての先例であるこの小舟は長く静かにその場所に留まっていた。。
直方体、棒状のものが規則正しく積み重ねられている。
直線、直方体の左右上下(下は見えないが)に空けられた円(空洞)・・・すべて人為的なもので決して自然ではない。
人為、叡智、研究、歴史の集成が、上部に乗っている巻物状のものに暗喩されているのではないか。そのものが、下部の不明を抑えている。
人智が何か(世界)の破壊崩壊を抑止している。
規則正しくあけられた穴(空洞)は何を示唆しているのだろう。当然入るのは空気(風)である。風の振動・・・触発・・・常に危機を孕んでいるということだろうか。
人知を超えたと思われるような脅威・・・重力に反発するもの、超自然以外の何物でもなく、この物が浮上しているという有り得ないエネルギーの含有を恐れずにはいられない。
世界を震撼とさせる元凶としてのオブジェである。
写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館