続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

🈞マグリット『レディ・メイドの花束』③

2019-04-26 06:47:12 | 美術ノート

 切ない作品である。
 レディ・メイドの花束、花束というものは愛する人に燃えるような想いを告げるためのものである。
 それは生死を問わず、対象は恋人であったり墓前への追慕であったりする。

 男の視線は林に向けられているらしいが鑑賞者はそれを断定できない、隠されているからである。
『複製禁止』という作品があったが、男が見つめる鏡には男の後ろ姿が映っている、過去ばかり見つめる自分への戒めであり、自分への警告でもある。
 男の沈黙、決して語ることのない秘密の感情を悟られることなく吐露している。

『レディ・メイドの花束』、心からの愛の表現、しかし男は任意の女性に背を向けている。永遠の美の女神である女も男に背を向けているが、男の想念を隠し庇護しているともいえる。
《何故?》何故母は死んだのか、問いに向かって沈思黙考を繰り返しているに違いないが、男の顔(表情)は永遠に伏せられたままである。

 男と林を隔てている遮断のブロック、越えようとすれば超えられない高さではないが、不帰の一線である。彼はその接線である最前線へ進み出て林(冥府)を見つめるしか術を持たない。

『レディ・メイドの花束』常に心の中に用意されている花束である。


(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)


『城』3175.

2019-04-25 07:22:40 | カフカ覚書

むろん、非常にまれな、もっと正しく言えば、ほとんど起こりっこない可能性ですがね。それは、請願者が夜中に予告もなしに押しかけていくということにほかなりません。


☆もちろん滅多にないことですが、全く傷痕がないという可能性です。それは予告のない死の最中にありえます。


🈞マグリット『レディ・メイドの花束』②

2019-04-25 06:40:20 | 美術ノート

 レディ・メイドの花束はどこに?
 男のうしろ姿を見るかぎり両手は下ろしている。
 ブロックから見る遠近法では焦点はどうやら男の胸(胸中)にある。
 つまり焦点は男の胸中にあり、男の心象風景に他ならない。

 花束は装飾用の花瓶に入った花ではない、誰か対象者に捧げるためのものである。
 しかし、男の後ろ姿からは花束を持った様子はなく、しかも男が捧げる相手であろうとする女は背後にいて、やはり男には背を向けている。
 
 男の視線の先にあるのは樹の生い茂った林であるが、遠く光が射すかの明るさが見える。(男の心理にある期待/もう一つの世界)
 しかし、ブロック(石造りの境界)が男と林を隔てている。超えようとすれば可能な高さではあるが、越えたが最後こちらへは戻ってこれない異世界との仕切りではないか。つまり、距離は近くて遠い、あちらは冥府ではないか。

 男は冥府を見ている、母恋いである。それを優しく隠蔽する任意の女性・・・この構図の切ない不条理、レディ・メイドの花束は、思慕の念と感謝の念との双方に捧げられるものかもしれない。


(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)


『セロ弾きのゴーシュ』9.

2019-04-25 06:25:44 | 宮沢賢治

「セロっ、糸が合はない。困るなあ。ぼくはきみにドレミファを教へてまでゐるひまはないんだがなあ。」
 みんなは気の毒さうにしてわざとじぶんの譜をのぞき込んだりじぶんの楽器をはじいて見たりしてゐます。ゴーシュはあわてて糸を直しました。これはじつはゴーシュもわるいのですがセロもずゐぶん悪いのでした。


☆詞(言葉)を合わせ混ぜて共(一緒にする)。
 記を読むと普く拠(よりどころ)は絡(つなぐこと)が基である。
 兼ねた詞(言葉)は自記を和(調合)して、握(手に収める)。


『城』3174。

2019-04-24 06:37:52 | カフカ覚書

記憶のなかから実例をさがしだそうとしても見つからないといったふうに、もの思わしげな顔を天井にむけた。「それでもですな、あらゆる予防策にもかかわらず、請願者にとっては、この秘書たちの夜の弱みー それが弱みだと仮定してのことですがー を自分のために利用する可能性はあるのです。


☆記憶の中から例をさがし、小舟を見つけるというテーマを被せて考え込んでいるのです。あらゆる(危険に対する)予防措置にもかかわらず相手方にとっては、小舟という弱点、それが弱点だという前提においてですが・・・利用されているのではないかと。


🈞マグリット『レディ・メイドの花束』

2019-04-24 06:04:48 | 美術ノート

   『レディ・メイドの花束』

 男の背後に描かれた任意の女人像(ここでは花の女神フローラ)、男は林(森)を見ている。林と男との間には仕切りとなる石造りのブロックがある。

 任意の女人に背を向け、彼にとっては手前の林を見ている。林へは仕切りのブロックがあるが超えられない高さではない。(しかし超えたら二度と戻れない世界の遮蔽ではないか)

 男は後ろ向きである、すでに在る美しい女性に背を向けている(関心がない)。男は誰にもその秘密を知られることのない世界の方を向いている。深淵…心の闇、見ることも触れることもできない存在の彼方。女はその深淵を隠している、庇護していると言い換えてもいいかもしれない。

 マグリットが決して明かすことをしない、そして他人が立ち入ることを断じて許さない領域への眺望である。

『レディ・メイドの花束』、あなたに心よりの花束を贈りたい!この切なる願い、平凡だけれど、ありきたりだけれど・・・。


(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)


『セロ弾きのゴーシュ』8.

2019-04-24 05:51:51 | 宮沢賢治

ほっと安心しながら、つゞけて弾いてゐますと楽長がまた手をぱっと拍ちました。

 安心はアン・シンと読んで、案、新。
 弾いてはダンと読んで、談。
 楽長はラク・チョウと読んで、絡、調。
 手はシュと読んで、主。
 拍ちましたはハクと読んで、迫。


☆案(考え)の新しい談(話)である。
 絡(すじ道)を調え、主(中心となる事柄)に迫る。


🈞マグリット『王様の美術館』②

2019-04-23 06:59:27 | 美術ノート

 国家を統治する者の存在は何時からどのような形で現れたのだろう。単純に王と称されるその分野での成功者もあるが、一国の王としての崇拝に至る経由は連綿と続くその国の歴史に秘められている。

 起源、根拠は謎に包まれている。しかし決定に抗う術もなく、口承による伝承あるいは文献による伝達でまことしやかに王という国の頂点は祀り上げられている。民族の結集に生じた揺るぎない構成におけるトップの存在である。

 その秘められた歴史、長い時間の中に眠る真実は王様のなかに在るが、王様自身でさえもそれを検証することが困難な深淵に潜んでいる。

 類人猿から人類へと進化されたとする30万年前には〈王様の存在〉は無かったに違いない。では、いつ?
 疑問は尽きないが、霊能力や経済力等の突出した者がその地域の支配を握り、中央思考としての〈王〉という存在に形作られていったのではないか。

『王様の美術館』、目・鼻・口は監視あるいは静観であり、シルエットの中は某エリア(領域)におけるMuseum(古代からの歴史)である。
 バックの漆黒は、混沌からの誕生を、背後の鈴は口承・伝達を暗示するものだと考えられる。


(写真は国立新美術館『マグリット』展/図録より)